九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

82.イスパニョーラ島の生物

2015-09-04 12:10:52 | 日記

どのようにしてイスパニョーラ島に動物が渡来したのか?
 それでは人と違って船など渡航手段を持たない動物たちがどのようにしてイスパニョーラ島に渡来できたのだろうか。一度も大陸と陸続きになったことがない海洋島の定義として、両生類がほとんどいないことが挙げられるほど両生類の渡海は難しい。しかし、イスパニョーラ島の両生類や爬虫類のほとんどが固有種であるから、日本列島のように比較的最近まで大陸とつながっていたのではなく、イスパニョーラ島が大陸との連絡路が切れてから非常に長い時間が経過し、この島で独自の種分化を遂げるために必要な時間が十分あったと考えられる。しかし一方では陸橋があったと考えられる時代以後に大陸から入ったと思われるものもあるので、イスパニョーラ島の陸上動物の先祖の一部は、何らかの別の方法で海を渡って来た可能性も否定できない。またそのような種は南アメリカと関係が深い種が多い点も注意しなければならない。つまり地理的に近い北アメリカからではなく、南アメリカから海上を通って渡来するチャンスがあったらしいということだ。
私がこの連載をはじめたのは、ダーゥインの「種の起源」には出て来ない、陸上動物が海を渡り広がる可能性を探求する新しい学説の途方もない面白さに魅せられたからだ。ダーウィンと言うとガラパゴス諸島だが、進化の問題を探求する場所としてもっと面白い場所はイスパニョーラ島だと思う。おそらく固有種の多さでも世界一だと思う。マダカスカルも面白いと思うが、イスパニョーラ島の場合、陸橋がない時代にこの島に渡来した陸上動物がいる。どのようにして渡来したのか。その説明は奇想天外である。ただ奇想天外な話も若干の予備知識や前置きの説明が必要である。もうしばらくおつきあいをお願いしたい。
 上の2枚の図は西インド諸島のうち、主な大きな島の両生類と爬虫類の種類数を示すグラフである。両生類の大部分はコヤスガエル属なので、この属と他の両生類を分けて示してある。爬虫類の場合はアノーリスとその他の爬虫類に分けて示してある。これを見る西インド諸島の大きな島で、しかも大陸から一番遠いイスパニョーラ島の両生類や爬虫類の種の豊富さがよくわかる。一体彼らはどのようにしてこの島にやってきたのか様々の学説がある。その一つはもちろんかつて大陸との間に陸橋があって、そこを通って渡来した動物の子孫が西インド諸島のそれぞれの島で種分化したという常識的な説である。
 それに対して仮に古い時代に陸橋があったとしても、陸橋がすでになかった新生代になってからも、大陸で分化した新系統が西インド諸島に入っており、その伝搬を説明するには陸橋説以外の新しい奇想天外な学説が必要だった。

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