産婆の気持ち

助産師として活動している中で感じること、日々の生活の中での出来事や思うことを書き綴っていこうと思います。

赤ちゃん専用の洗濯

2008-06-26 23:57:01 | 育児
「赤ちゃんは抵抗力が弱い」という理由で、赤ちゃんに使うものは消毒をしたり、大人の使うものとは区別されることが多いものです。
洗濯も大人のものとは別にしているということをよく聞きます。
赤ちゃん専用の洗濯洗剤が商品として店に並んでいるため、そういう商品を目にすることで「大人のものとは別に洗濯するものなんだ」と思っているお母さんも多いのだろうなと思います。

赤ちゃんが身につける衣類は、きれいに汚れが落ちていて、十分に洗剤もすすがれていて、しっかり乾かされていれば、特別な洗濯は必要ないと思います。
大人の衣類の洗濯だってこのことは同じです。
大人と赤ちゃんのものを別々に洗濯することは、水も洗剤も時間も余分にかかって不経済だし、環境のことを考えてもいいことではありません。

洗濯洗剤に限らず、赤ちゃん専用のものを準備したり、特別な扱いをするよりも、赤ちゃんが生まれたことをきっかけに自分たちの生活習慣を見つめなおしていくことの方が大事だと思います。

お母さんの心

2008-06-17 20:45:59 | おっぱい
妊娠中・産後はホルモンの変化が関係して、涙もろくなったり気分が落ち込んだりしやすいものです。
産後は慣れない忙しい子育てが始まり、精神的にも肉体的にも疲労が溜まりやすいこともあり、なおさら気持ちの不安定さが現れやすい時期です。
出産後に母乳が思うように出なかったり、赤ちゃんに思うようにおっぱいを飲ませることができなかったりすることが、産後のこの時期のお母さんの気持ちをさらに圧迫してしまうことも十分にあり得ることです。

赤ちゃんがおっぱいを吸うことでしだいに母乳が出始めるというメカニズムがあるということを知らず、また知らされずにいるお母さんは、母乳が出るようになるためのメカニズムからはずれてしまうようなことをしてしまっていたり、頻繁におっぱいを吸ってくれる赤ちゃんを見て「自分の母乳が出ないから、赤ちゃんがお腹をすかして満足しないのだ」と大きな勘違いをして自分を責め、自信を失くしてしまっているお母さんもいます。
また、赤ちゃんがおっぱいを欲しがるだけ吸わせていれば大丈夫と分かっていてそうしているお母さんに対して、「無理をさせられて、赤ちゃんがかわいそう」と、とても心無いことを言われてしまうこともあります。
赤ちゃんのために母乳を飲ませたい・・・という母親の愛情の気持ちが基にあるのに、「赤ちゃんがかわいそう」という言葉は、その母親の気持ちをずたずたに打ち砕いてしまうと思います。

周りの何気ないひと言ひと言を敏感に感じ取って、いつも以上に傷ついたり崩れたりしやすいこの時期のお母さんたちの心です。
お母さんや赤ちゃんを取り巻く周りが、もっと「母乳で育てること・母乳で育つこと」をよく知って、お母さんが壊れてしまわないように、母親としての自分を肯定して子育てしていけるように、やさしさを持って対応しなければいけないと思います。

授乳の仕方を教わる

2008-06-14 23:11:41 | おっぱい
初めて赤ちゃんを産んだお母さんは、赤ちゃんを抱っこするのもぎこちなく、赤ちゃんの口におっぱいを含ませるのはもっと難しく、最初はうまくいかないことが多いものです。
「赤ちゃんが飲むものは、まず母乳」と考えている産院などでは、初めての育児でぎこちないお母さんに抱っこや授乳の仕方などを丁寧に教えてくれると思いますが、そうでない産院で出産したお母さんたちからは「授乳の仕方を教えてもらえず苦労した」という話をよく聞きます。

人間は哺乳動物です。
生まれてすぐの赤ちゃんは、お母さんのおなかや胸の上にうつぶせにしていると、しばらくしてむずむずしながらおっぱいの方へ進みだし、乳首を捜し出して吸い付くこともあります。
お母さんだって、本当なら教わらなくても本能で赤ちゃんにおっぱいを含ませることができるはずだと思います。

人間は知能が優れていることで豊かさや便利さを手に入れた代わりに、生きていくための本能を手離してしまっていると思います。
授乳することも本能のひとつだと思いますが、それが教わらなくてはならなくなってしまっていることは残念なことだと思います。

少し昔の母乳を飲ませることが日常だった頃は、日常の生活の中に母乳を与えている女の人がたくさんいて、教わらなくても見よう見まねで自然に赤ちゃんにおっぱいを含ませることができていたのではないかと思います。
でも、母乳を飲む赤ちゃんの様子を日常の中でほとんど目にすることがなくなった今では、我が子に母乳をあげることが最初ということになってしまっていて、しかも粉ミルクが身近にあり、早くから粉ミルクを飲ませてしまうことで、なおさら授乳の仕方を教わらなければならない状況になっているのではないかと思います。

「赤ちゃんに母乳を飲ませることは、ごく日常的な生活の一場面」という世の中になって欲しいです。

母乳育児成功のための10か条

2008-06-07 20:41:45 | おっぱい
WHO(世界保健機構)とユニセフ(国連児童基金)によって始まった、母親が自分の子どもを母乳で育てることができることを目指した「赤ちゃんにやさしい病院運動 BFHI」という運動があります。
その中で「母乳育児成功のための10か条」が掲げられています。


<<母乳育児成功のための10か条>>
産科医療や新生児ケアにかかわるすべての施設は以下の条項をまもらなければなりません。
1. 母乳育児についての基本方針を文書にし、関係するすべての保健医療スタッフに周知徹底しましょう。
2. この方針を実践するのに必要な技能を、すべての関係する保健医療スタッフに訓練しましょう。
3. 妊娠した女性すべてに母乳育児の利点とその方法に関する情報を提供しましょう。
4. 産後、30分以内に母乳育児が開始できるよう、母親を援助しましょう。
5. 母親に母乳育児のやり方を教え、母と子が離れることが避けられない場合でも母乳分泌を維持できるような方法を教えましょう。
6. 医学的に必要でないかぎり、新生児には母乳以外の栄養や水分を与えないようにしましょう。
7. 母親と赤ちゃんがいっしょにいられるように、終日、母子同室を実施しましょう。
8. 赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけの授乳を勧めましょう。
9. 母乳で育てられている赤ちゃんに人工乳首やおしゃぶりを与えないようにしましょう。
10. 母乳育児を支援するグループづくりを後援し、産科施設の退院時に母親に紹介しましょう。


1991年にこの運動が始まり、その後、世界情勢も変化したためBFHIの見直しが行われ、今までの母乳育児成功のための10か条の内容に「お母さんにやさしい出産時のケア」と「HIV陽性の母親に対する支援」が加えられたそうです。

「お母さんにやさしい出産時のケア」
母乳育児は出産後だけのことではなく、妊娠・出産・産後、それぞれの時期を大事に大切に過ごすことができたかが大きく係わってくることは言うまでもありません。
医療者主体ではなく、産婦主体の出産。
陣痛が始まったからと言って飲食を制限してはいけない。
陣痛が始まって出産までの間、産婦の自由な姿勢を制限してはいけない。
産婦への付き添いを制限してはいけない。
必要もないのに、点滴をしたり、持続的に胎児心音モニターを装着したり、会陰切開をしてはいけない。
などなど

産科医療の厳しい状況を迎えていますが、でもだからこそ、医療側は赤ちゃんとお母さんにやさしい対応をし、産む側は自分の力で健康に出産することを目指し、自分で責任を持って妊娠中の体調管理をし出産に臨むことが大事だと思います。

黄疸

2008-06-02 22:50:12 | 赤ちゃん
赤ちゃんは、生まれて2~3日すると黄疸が出始めます。
これは自然に起こる生理的なことで、普通に元気に生まれた赤ちゃんなら治療の必要のないことがほとんどです。

以前は黄疸の毒性の方ばかりが問題にされていていましたが、最近では、黄疸の物質は細胞が酸化するのを防いでいるということがわかってきています。
黄疸にこんな作用があるということは、ある程度黄疸が出た方が良いということにもなると思います。
また、母乳は黄疸を長引かせる傾向があるということがわかっているため、昔は黄疸が引くまで母乳をやめることもあったようですが、今では母乳性黄疸は問題がないため母乳の重要性から考えても、母乳をやめる必要はないと言われています。
母乳を与えること・赤ちゃんに黄疸が出ること。どちらも赤ちゃんが生まれてからの自然なことです。母乳が黄疸を長引かせることにも、きっと何か意味があるはずだと思います。

もし、治療が必要な黄疸の場合は光線治療などを行います。この治療の間も以前は母乳を中止することもあったようですが、今では母乳を続けながら治療をすることがほとんどだと思います。

どんな病気でも、時代と共にその病気に対する見解が変わったり、診断基準や治療内容が変化していくことはあると思います。
病気に対する診断・考え方は、診断する側のそれぞれ個人で違うと思いますが、母乳の重要性が明らかになってきている今、黄疸の役割も明らかになりつつある今、適切な黄疸の診断をし、適切な治療をし、黄疸の治療で安易に母乳育児を妨げられる赤ちゃんとお母さんがいなくなるようにすることが、赤ちゃんが生まれた後にかかわる人間の務めだと思います。