産婆の気持ち

助産師として活動している中で感じること、日々の生活の中での出来事や思うことを書き綴っていこうと思います。

へその緒

2008-08-11 17:12:42 | お産
赤ちゃんはへその緒でお母さんと繋がっています。
生まれた後、へその緒を切ることで初めてお母さんと離れることになります。
このへその緒を切ることを“臍帯切断(さいたいせつだん)”“臍帯結紮(さいたいけっさつ)”と言いますが、このお母さんと赤ちゃんとの切り離しをいつ行うかは分娩施設によって違うと思います。
病院などの分娩施設では、赤ちゃんが生まれたらすぐに臍帯を切り離しているところが多いのではないかと思います。
助産院などではへその緒の中の血管が閉じてから臍帯切断しているところが多いかもしれません。

へその緒は赤ちゃんが生まれた後もしばらくは血液が流れています。
生まれてからへその緒に触れると、赤ちゃんの心臓の動きに合わせてドクンドクンと拍動が感じられます。
そして生まれてしばらくすると、へその緒の血管が閉じてこの拍動が感じられなくなります。
赤ちゃんで多少違いはあるかもしれませんが、だいたい生まれて15分くらいではへその緒の拍動が感じられなくなるように思います。

どの時点でへその緒を切るのがいいのかはそれぞれの考え方があると思います。
生まれてすぐにへその緒を切った方がよいと考える理由に、生まれた後の赤ちゃんの黄疸が出にくいという考え方があります。
多血症と言って、赤ちゃんの血液量が多い状態だと黄疸が出やすいと言われます。
この多血症の原因のひとつに「臍帯結紮の遅れ」と教科書には書かれています。
私も出産に立ち会わせていただくときは、へその緒の拍動が感じられなくなってからへその緒を切っていますが、その後の赤ちゃんに治療が必要なほどの黄疸がみられたことはありません。
でも、病院の分娩台など、生まれた後の赤ちゃんがお母さんよりかなり低い場所に置かれて処置をされたりするような場合は、その落差でより多くの血液が赤ちゃんに流れてしまうことはあるかもしれないので、赤ちゃんとお母さんの高さは注意しなければならないと思います。

へその緒の切断が遅い方がよいと言われる時の理由としては、赤ちゃんが生まれた後に胎盤から受け取る血液によって、肺の働きが助けられ呼吸困難が起こりにくい、体に蓄えられる鉄が増えることなどで貧血の予防にもなると言われます。

人類がはるか昔から生きてきたことを考えた時に、生まれてすぐにへその緒を切っていたとは考えにくいと思います。
他の哺乳動物の母親も、赤ちゃんが生まれるとまず最初に全身が羊水で濡れた子どもの体をペロペロとなめて赤ちゃんの体が冷えないようにしています。赤ちゃんを包んでいた卵膜が鼻や口にかかっていればなめてそれを取り除きます。
そして、体全体の羊水がきれいになめ取られた頃にはへその緒の血管も閉じていて、母親が歯でへその緒を噛み切っても出血することはありません。

以前も書きましたが、ある程度の黄疸は赤ちゃんの体の細胞を守ってくれることや、生まれた後の胎盤からの血液で呼吸が楽になりやすかったり鉄の蓄えになることなどを思うと、早くにへその緒を切る必要はないと思います。
へその緒の血管が自然に閉じるまでの間、新しい命の誕生の喜びにゆっくりと浸れるといいと思います。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (寝太郎)
2008-08-16 14:25:41
出産は本来自然なもの。病的な異常がない限り、できるだけ余計な介入がない方が理想的ですね。
本当にそう思います。 (みぃちゃん)
2008-08-18 17:02:19
自然なもの生理的なものだとか、余計な介入がどういうことなのかが分からなくなってしまっているのが今の現状だと思います。

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