キム兄弟の冬の日・2

2019-02-18 | キム兄弟のお話

その日、ジョンデは友だちからの誘いも断って学校が終わると一目散に家に帰った。
まだ誰も居ない家の鍵を開け、急いで暖房をつける。
寒い中、ジュンミョンがジョンインとセフンを連れて帰ってきても家に着いたら暖かいように。
─そうだ、戸棚にスナック菓子があった、ジュースはリンゴがいいかな、イチゴミルクかな、バナナミルクかな。…あ!宿題!算数のドリルをやってしまおう!そうしないとあいつら帰ってきたらそれどころじゃなくなるし。今夜は泊まらせるって言ってたから!お風呂の準備もしておかなくちゃ!

ジョンインとセフンの幼稚園コンビと遊んでやるのは年子三兄弟の中で一番下のジョンデの役目だった。二人もジョンデに一番懐いていたし、何より二人から『お兄ちゃん』と呼ばれると、頼られているという感覚が少しくすぐったくもあり嬉しかったのだ。

冬の夕暮れは早い。窓の外が夜の景色に変わる頃、ジュンミョンたちが帰ってきた。いっぺんに家の中が賑やかになる。小さな足音と声が充満する部屋の中で、ジョンデも自然と笑顔になる。遊ぼう、遊ぼうとまとわりつく小さな弟たちに手を洗わせ「少しだけね」と釘を刺してお菓子をあげていると母さんが、やや遅れてミンソク、最後に父さんが、帰ってきた。
夕飯の前に3人でお風呂に入ってしまって、との母さんの言い付けに従う。
セフンの髪の毛を洗ってやっているジョンデの背中をジョンインがゴシゴシ洗ってくれる。流しますよーという声にセフンはギュッと目を瞑る。耳の裏も洗ってやって、はい次ジョンイン!洗い終わったら肩まで温まって十数えて出ると、脱衣場で父さんがタオルを広げて待っていてくれた。

夕飯後、兄たちは勉強、3人は寝る時間まで子ども部屋で遊ぶことにした。最初はオモチャなんか引っ張り出してきて遊んでいたのだが、ジョンデがトイレに行って戻るとなんだか様子がおかしい。
セフンが部屋の隅の壁に向かってうつむいて立っている。ジョンインはというと、反対側で同じような態勢でいる。
ジョンデは咄嗟に二人が泣いていると察知したのだが、わざと「どうしたのー?」と、明るい声を出して部屋に入っていった。
「ぼくがいない間にケンカでもしちゃった?」
そんな問いかけにも返事がないどころか、すすり泣き声が少し大きくなってしまった。
別々に距離を取って二人が立っているものだから、どちらに先に駆けつけてやったらいいかジョンデは迷った。最年少のセフンか、身内のジョンインか…その一瞬の迷いの間に泣き声は大きく激しくなる。
ジョンデは、その時、(ヤバい、ほくが泣かしたと思われて怒られる!)と思った。
そこで、泣き声に掻き消されないような大きな声で「泣いていたらわからない!ちゃんと説明しろよ!」と叫んでしまった。
その声に驚いてか、一瞬こちらを振り返り泣き止む二人。だが、すぐにまた今まで以上に大きな声で泣き出した。
と、ドアが開いて兄二人が駆け込んできた。泣かせたままのことを怒られる、弁解しなくちゃ、と内心慌てるジョンデの横をすり抜け、それぞれが小さな弟たちを抱きしめた。
「そっか、そっか、家に帰りたくなっちゃったよな…」
ミンソクがそう言うと嘘みたいに二人の泣き声は小さくなって、しゃくりあげる声だけが辺りに漂う。
その兄たちの背中を見ながらジョンデも泣きたくなってきた。
「よしよし、わかったから、でも今夜はうちで寝ような?ジュンミョナが絵本読んでくれるってさ」
え?って顔でミンソクを見やったジュンミョンだが、すぐに「うん、何を読む?向こうに行って決めよう」と話を合わせ二人を連れて部屋を出ていった。

後に残されたジョンデは口をへの字に結んでミンソクを見上げた。
ミンソクはジョンデの前髪に優しく触れると「ありがとな」と言った。
そこでジョンデは兄に抱きつくと泣き出した。
そんな弟の背中を撫でてやりながらミンソクは、「なんでお前まで泣くんだよぉ」と少しおどけたような声を出す。
それから囁くように「ジュンミョナも言ってたぜ、帰ったら部屋が暖かくて風呂も沸いてて最高だった、って。…それから、いつもチビたちと遊んでやってくれてありがとな」と言った。
するとジョンデのざわついていた心も穏やかになっていく。
─ああ、ぼくもいつかこんな兄たちのように、なんでもわかるようになりたいなぁ。
「ぼく、怒鳴ってしまった、泣いてる二人を。」
「大丈夫、明日になったら忘れてるよ。」
「ほんとは、兄さんたちがしたみたいに抱きしめてやりたかったのに。」
「物理的に無理があったから仕方ないな。」
「ぼく、あいつらがなんで泣いてるのか全くわからなかった…」
「ああ、わからないって、怖いよな。」
─そっか、わからなかったから怖くて、怖いからぼくは怒ってしまったのか。
「ごめんなさい、もう怒らない。」
あはは、とミンソクは笑うと「お前が怒るとオレはなんだか安心するよ。」と、弟を抱きしめた。
ジョンデもつられて、あはは、と笑ってしまった。
なんだか今日は楽しかったり怖かったり泣いたり笑ったり忙しい一日だった。
でも、久しぶりにミンソク兄さんに甘えることができて、良い一日だったなとジョンデは思った。


2 コメント

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Unknown (myk929)
2019-02-23 09:57:55
KOKOさん
お久しぶりですぅ!
ツイッターのお話読ませてもらおうと思ってチャレンジするのですが、ケータイ音痴の私には読ませてもらえないようです笑笑
で、久しぶりにこのブログにお話上がったので、ほっこり読ませていただきました。絵本になってたら可愛いだろうなぁと思いながら、優しい気持ちになりました。
ありがとうございます。
今はEXOのライブ待ちながら、SHINeeの残り少なくなった活動を追い、可愛いNCTをおばあちゃん感覚で愛でながら過ごしています。
まだまだ寒い日も続きますので、風邪引かないように。
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Unknown (KOKO)
2019-02-25 08:39:55
myさん、お久しぶりです!😊💕
お話読んでくださってありがとうございます✨
今回は絵本みたいなイメージで書いたのでそう言っていただけて嬉しいです🎵
このシリーズでまた書けたらいいな☺️
あぁ、SHINeeちゃんたちは続々入隊ですね…;;仕方ないことだけど胸が痛くなります。
EXOの長兄たちだってそろそろですよね…;;どうかその前にコンサートがありますように(´;人;`)
NCTもみんな可愛くて素敵ですよね!(^^)
ずいぶんと春らしいくなってきましたが、どうぞmyさんもお体ご自愛くださいね。
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