真っ黒で、悪魔みたい。
初めて会ったとき、そう思ったよ。
そう言って、ルハニヒョンは笑った。
「なんだよ、それ。それはタオだろ~」
と言うと、
「どうして?タオは、会って話したらすぐ、悪魔じゃなくて赤ちゃんだ、って、わかるじゃん。
でも、お前は、しばらく印象変わんなかったもん。」
…悪魔のまんまかよ。
「髪も肌も黒くてさ、初めまして、って言っても、ニコリともしないでさ。」
そうだったかな。
「ねぇ?カイは?カイは、どう思った?オレに初めて会ったとき。」
そう言いながら顔を覗き込んでくるヒョンの瞳は、びっくりするくらいキラキラしてる。
「…さぁ、ね。覚えてないな。全然、印象なかったから」
「えー?ひっでー!オレ、そんな印象薄かった?!」
俺の肩をバンバン叩きながら声を出して笑うヒョンは子どもみたいだ。
ばぁか…印象ないわけ、ないじゃん。
まるで、ブグローの描く天使みたい。
初めて会ったとき、そう思ったよ。
でも、そんなこと、照れくさくて言えないじゃないか。
するとヒョンは、急に顔を近づけ、俺の耳元に囁くようにこう言った。
「すげぇ、真っ黒で悪魔みたい。
悪魔みたいに、きれい。 そう思ったよ。」
…それ、反則じゃん。
ふふ、と笑うヒョンは、やっぱり天使みたいだ。
でも。
言わない。
言わないけど、ヒョンの瞳が、まるで
「わかっているよ。」
と、言っているようだ。