【ニュースサイト】宮崎信行の国会傍聴記

キャリア女性1985年夏の敗戦 タイピスト、翻訳、通訳など労働者派遣法「専門26業種」廃止へ

 2013年8月6日付で書いた「自民党政府、労働者派遣法改正法案を第186通常国会に提出へ 「40条の2」再改正」は多くの方にお読みいただいているところですが、きのう(2013年8月20日火)、この法案の基となる「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」ができました。
 これに関する情報は、
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000015879.html
のホームページから取り出すことができます。

 1985年というと、竹下登先生が大蔵大臣としてプラザ合意を実現したバブル絶頂期。この第102通常国会では、男女雇用機会均等法(昭和60年法律第45号)」が昭和天皇によって6月1日に公布されました。

 そして、7月5日には「労働者派遣法が昭和60年法律88号として公布されました。

 これは自民党政権が男女雇用機会均等法とセットで、労働者派遣法により、女性大生にいわゆる総合職としてキャリアサラリーマンとして企業戦士の道を選ぶか、あるいは、通訳、翻訳、タイピスト、社長秘書として、派遣労働者になるかを迫るメニューの提示だったのでしょう。

 「育児休業・介護休業法」が公布されたのは、1991年5月15日法律76号として、今の天皇陛下によって公布されました。このころには、おそらく住友銀行は不動産融資から撤退しはじめ、バブル崩壊という言葉は世間にはありませんでしたが、後から指標を振り返ればバブルは崩壊しだしたころです。

 この1985年の男女雇用機会均等法とセットでつくるべき法律は、育児休業・介護休業法であったことは言うまでもなくこの6年間の遅れが日本社会を崩壊に追い込んだ、まさに「1985年夏の敗戦」としか言いようがありません。

 さて、報告書通りに、自民党が法律改正に成功すると、企業はある職種を人を変えれば、ずっと派遣労働者に任せ続けることができ、常用雇用の義務がなくなります。私は、来年の通常国会中に原発事故から3年が経つ東京電力が「原発廃炉業種」を派遣労働者にまかせっきりにするための法改正ではないかと考えます。

 専門26業種は実は法律ではありません。労働者派遣法施行令の第4条などに決まっています。「施行令」なので、事実上、厚労省官僚の一存で変えられるものです。

 専門26業種は次の通り。
(1)パソコンのシステム・プログラムの設計(SE)
(2)機械の設計・製図(CAD・CAM)
(3)放送番組の映像・音声機器の操作(カメラマン、サウンドマン)
(4)放送番組の制作における演出(ディレクター、アシスタントディレクター)
(5)事務用機器の操作
(6)通訳・翻訳・速記
(7)秘書
(8)ファイリング
(9)市場調査
(10)財務処理
(11)対外取引・国内取引の文書作成
(12)高度の専門知識が必要な機械の性能・操作方法の紹介・説明
(13)添乗員・旅行者送迎
(14)建築物の清掃
(15)建築設備の運転・点検・整備
(16)建築物・博覧会場の受付、案内(コンパニオン)
(17)科学に関する研究開発
(18)事業の実施体制の企画・立案
(19)書籍の制作編集
(20)商品・広告などのデザイン
(21)インテリアコーディネーター
(22)放送番組の原稿朗読・司会(アナウンサー、局アナ)
(23)OAインストラクション
(24)テレマーケッティング
(25)セールスエンジニアの営業
(26)放送番組における大道具・小道具などの制作・設置など。

  一見してわかるのが、テレビ局関係が多いということ。このため、派遣労働に関する報道は、新聞では熱心にされますが、テレビでは「現場の空気」から報道されない傾向があります。これはやむを得ないでしょう。この専門26業種で、けさの朝日新聞によると、現在64万人が働いているようです。

 もちろん労働組合法第7条などで、使用者(企業)は労働組合との団体交渉をしなければいけない義務がありますので、労働組合に入っている派遣労働者は、対等な関係で使用者と交渉できます。ただ、「人事に聞いても延長についてはっきり答えてもらえないので」という大手出版社の女性編集補助者が「雇用を延長してもらうために、今一生懸命、たくさんの新しい企画書を出している」と聞いて、その場にいた全員で沈黙してしまった経験もあります。やはり、労働組合に入るのが第一歩でしょう。

 まさに、労働者殺しの自民党。

 1985年法の施行直後から派遣労働をしている人を知っています。早稲田大学文学部卒の女性で、1990年代前半に私が学生時代に新進党衆議院総支部でアルバイト(兼)ボランティアをしていたころに働いておられました。私のイギリス議会史の先生が文学部でゼミを持っていたころのゼミ生だったそうで、初期のころから派遣労働をしており、学生時代の女性の友人と旅行したり、食事したりするのが楽しかったそうです。私の総支部はついに一度も当選できなかったのですが、平日に休みをとって、土曜日はだいたい出勤なのですが、土曜日だけ金ラメ入りのスーツを着て、先輩秘書から「あ、地が出てきましたね」とからかわれたり、事務所の運営の悪い面を、土曜日の帰宅の電車でこっそり教えてもらったりしました。その後、日本を代表する派遣事業者の設立にかかわり、現在は役員として活躍されているようです。その広告を見ると、日本を代表する御用会社と航空会社の共同出資子会社ということで、今も昔も変わらず、キャリア女性の心をくすぶる心理学が健在であることを感じます。

 高学歴の人は、学業熱心なら人ほど、政治家が敷いたレールにあっさり乗ってしまうので、時代の変化に対応できず、奴隷になっていきます。私も同年代のサラリーマンの奴隷ぶりには落胆しますが、同情はまったくしません。政治を変えてこそ、社会の一員です。当事者意識はいつでも持てるかもしれませんが、当事者能力は学生時代から当事者意識を持っていないと備わりません。「そなえよつねに」という国際的なボーイスカウト(ガールスカウト)運動で使われている考え方を支持したいところです。
 
 労働者派遣法は、民主党政権で「労働者派遣事業の適正な運営の確保および派遣労働者の保護にかんする法律」に名称が変わりましたが、実態は変わっていないようです。そして、自民党政権により経団連の要請をうけて、ふたたび労働者切り捨てが加速します。

 民主党がしっかりチェックしていかねばなりませんが、いかんせん、選挙に負けたしまったのでどうにもなりません。私は来週27日の連合の「職場から始めよう運動」のシンポジウムに行こうかと思って予約済みです。一人一人の労働者の駆け込み寺になれるような信頼と知識を一人一人の党員、一つ一つの総支部が身に着けなければ、3年後の政権復帰はありません。

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