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「プライマリーバランス」法令から丸ごと落とす、特例公債法の5年間延長法案(204閣法4号)を政府が国会に提出

2021年01月19日 08時26分23秒 | 第204通常国会令和3年2021年

[写真]麻生財務相、きょねん2020年9月2日、衆議院第一議員会館で、宮崎信行撮影。

 「プライマリーバランス」という言葉が日本の法律から削除されることになりました。

 政府は、きのう18日、「特例公債法を改正して5年延長する法案」(204閣法4号)を衆議院に提出しました。正式名称は「財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案 」です。

 現行法は財政法4条の特例として「平成28年度から平成32年度まで」特例公債を発行できるとしています。これを「令和3年度から令和7年度まで」と5年間延長する法案。第204回国会の最優先順位の法律案です。

 改正の内容は期限だけでなく、現行法第2条の「定義」の第2号にあった「国及び地方公共団体のプライマリーバランスの黒字化」をバッサリ削除し、第4条の「特例公債の発行額の抑制」の「プライマリーバランスの黒字化に向けて経済・財政一体改革を総合的にかつ計画的に推進する」を改正して、令和7年度「までの間、財政の健全化に向けて経済・財政一体改革を総合的にかつ計画的に推進する」と改める内容。

 原案通り成立すれば、日本国法令から「プライマリーバランス」という言葉は消えます。

 現行法はこちらをクリック。

 改正法案はこちらをクリック。

 当ニュースサイトは先月21日の記事で、現行法の「各年度において発行額の抑制に努めることとする」とする条文が残った場合、コロナ対策の予算案と矛盾するのではないかと指摘しましたが、この条文はそのまま残る法案となりました。同日、筆者が枝野幸男立憲民主党代表の定例会見で聞きました。

 これについて、枝野さんは次のように語りました「今の経済状況にあって、ましてやコロナがあって、当面本格的な(経済の)回復状況になるとは残念ながら、とても思えない。財政規律ばかりに重きを置いた財政運営は不可能だと明確に認識している」「だからといって、目標そのものまで消してしまうと、積極財政でない放漫財政になりかねないリスクを(政治は)常にかかえている。放漫財政に歯止めをかける」「かなりていねいな検討と議論が必要だ」ーー。

 しかし、日本の経済を優先した場合、国及び地方政府の「財布」が単年度で収支の帳尻が合う必要はまったくありません。そもそも「プライマリーバランス」でなく「プライマリーバランスの黒字化」というは会計学として変な言葉です。また、現行、それをするためには、増税しかありません。このため、財務省としても言葉と目標を削除しつつ、それでいて「発行の抑制に努める」だけは残したという、正直「虫の良い」改正法案だと考えます。

 家計の金融資産はさらに増えて史上最多の1900兆円のお金が死蔵されています。今日における論点はむしろ逆で、政府の特例公債の発行を抑制するのではなく、積極的に発行して、国の歳出として民間事業者に持続化のための現金給付を追加することでしょう。

 なお政府はきのう令和3年2021年1月18日(月)に次の4法案も提出しました。

 正式名称は、議案番号「204閣法 号」で検索してもらえれば分かると思います。

 「令和2年度第3次補正予算案に係る地方交付税法改正案」(204閣法1号)
 「国立研究開発法人情報通信研究機構法改正案」(204閣法2号)
 「令和元年度決算剰余金の繰り入れの財政法14条の特例法案」(204閣法3号)
 「国立研究開発法人科学技術振興機構法改正案」(204閣法5号)。

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