EVER BLACK ねお

誰も知らない秘密の毒箱

久本朋子にブルースを(第51回)

2009-03-04 13:28:16 | Weblog
昨日「誰もしらない泣ける歌」ありましたね。
ちょっとテレビつけたら久本朋子 そう、久本雅美の妹が歌ってました。
見てたら嫁に
「トラ吉(長男)が宿題やっとるんじゃけぇテレビなんかつけんな、このダメオヤジ!」
と言われたので、慌てて消しました。

さて、1週間ちょっとか前、その久本妹がオーディション番組「歌スタ!!」に出てました。
数ヶ月前に一般参加者に混じって参加し、見事「よろしく」の札を貰って、
このたびレコーディングしでメジャーデビューへの道が開けたとかなんとかいう内容だったかと。
「よろしく」札を貰った時点で、視聴者から

「久本の妹だから合格しただけだ」
「出来レース」
「くだんねぇ茶番」


という反応が多かったようで、それの否定に躍起になってるような内容でした。
私もね、そういう風に感じた一人です。
久本姉とともに某宗教団体の熱烈な信者だから厚遇されてるなどネット上いたるところで眼にしますが、
まぁそれはね、真偽のほどもわかんないんでここでは無いものとして考えますけど。
やっぱ久本雅美の芸能界・テレビ局における顔の広さというのはハンパ無いと思いますので、
そう思われるのは当たり前じゃなかろうかと。
歌唱力についてもね、う~ん、まぁ決して上手い歌声ではないですしね。
バラード系なので心に訴えかける表現力が大事なのでしょうけど、テレビだとそれも伝わりにくいし、
また前述のように私自身が「うがった目線」で見てますのでね、伝わってこない。
というか、演技のような「わざとらしさ」とまで感じてしまってました。

そして今回の「泣け歌」出演。
番組自体ほとんど見てない(30秒くらい歌ってるのを見ただけ)のでどういった番組構成だったのかは判りませんが、

「なんだよ泣け歌も出来レースに加担かよ、こんな番組やめちまえ」

と思いました。


が、
その後風呂に入って考えました。


ちょっと待て、おい石井、と。
バラードは、いやバラードに限らず歌ってのは全て魂で歌うものと違うんかい?
ロバートジョンソンは歌うまいか?ただのしわがれ声のじじぃじゃねえか?
ジェームスブラウンの歌は上手いから心に響いてくるんか?
お前の大好きだったパンクロッカーに歌うまいやつって一人でもいるか?
歌詞やソウルの部分に心を揺さぶられて大好きになったんと違うんかい?
要は、その人間の抱えてるバックボーンや悲しみ・苦しみ・喜びを感じられる歌がいい歌なんと違うんかい?
と。

久本妹、お姉ちゃんという芸能界において確固たる地位を築いている者という
「足かせ」
がつけられています。
バラエティタレントとして活動してましたが、その場所じゃあどうやっても姉あっての妹。
かといってもう普通の職業に就いたり、普通に結婚し主婦になることも難しい。
それじゃあ姉の関係ない歌でがんばろうと努力して歌っても、

「歌手オーディション番組『歌スタ!!』の2008年7月放送分に一般参加枠から出演にも関わらず
久本雅美を後ろ盾に合格をプレゼントされた。
2009年2月放送の最終プレゼンでNAYUTAWAVE RECORDSからのメジャーデビューを
プレゼントされた。」
                                             (~wikipediaより抜粋)


とまで書かれてしまう始末。プレゼントて・・・
自分の力で何かしようとしても全て「姉のおこぼれ」という目で見られる。
いや、事実その通りなのかもしれないけれども、自分が何をしたって自分なんてものは誰にも見てもらえない。
こんな苦しみって、そうそうあるもんじゃないですよ。
こういう表現がいいのかどうか判らないですけど、差別ですよこれって。
問題っていうのは、いわれの無い差別によって正当に評価されないことが最大の問題なんですからね。
そう「正当に評価されない」っつうのは、本人にとっては

「お前は何をやっても無駄」

って言われてるのと同じですからね。
もっとぶっちゃけちゃうと

「死ね」

って言われてる気分になると思うんですよ。
だってそうでしょ?、誰も自分を自分として見てくれないんだったら、自分が生きてる意味なんてないですもん。
まぁ、世の中に「オンリーワン」の人なんかほとんどいませんし、ほとんど全員「ワンオフゼム」ですけど、明確に
「お前なんか何をやっても無駄」
なんて突きつけられたらキツイですよ。
自分だったら、もしかしたら耐えられないかもしれない。

そりゃね

「姉のおかげで自分の地位を築けてるんであればいいじぇねえか」
「普通の人間は努力してもそこまで行けないんだから甘ったれたこと言うな」


とか思うのは当然だと思いますよ。
特に、本当に努力して歌もすごくて、本気で歌手になりたいのになれない歌手志望の人だって腐るほどいますよ。
そういう人たちから見ると山頂にパラシュートで降り立つかのようなメジャーデビューは腹立たしいのでしょう。
けどね、その人たちにはまだ希望や満足感があるんです。
茨の道、泥道のなかを必死にもがいて目的地に進もうとしているけど、もし目的地にたどり着くことができれば至福なんです。
運に恵まれず、ただのもがき損になったとしても、やりきった上での諦めであれば結構いい思い出になったりするもんです。
久本妹にはそれすら与えてもらえない。
たどり着いても批判の嵐。
泥道を歩いた努力すら、途中でヘリコプターに引き上げられてパラシュートつけて山頂に降ろされたせいで誰にも評価すらしてもらえない。
ただのマリオネット、ただのおサルの電車。「認められない」のではなく「認めてもらう権利すら与えてもらえない」
これは、人として生きるうえで、とんでもなく苦しく悲しいことだと思いますよ。
それでも歌くらいしか自分のすがるものが見つけられない。

ブルースだね、この悲しみは。

奴隷として差別された人間として自分を否定された黒人の悲しみであるブルース。
もうこれは、ブルースシンガーですよ。
きっといい歌手になる。
そういった悲しみの曲を歌えば、きっと心に突き刺さってくる人がいる。
売れはしないかもしれないけど、きっといい歌手になると思う。
心の中で、ちょっと応援してみようかと思った。





・・・いや、まてよ?
そういうコアなファン層を獲得しようという腹積もりなのか?
だったらすごい作戦だぞぉ、やるなぁ久本朋子!