黒田日銀総裁が打ち出した、超金融緩和によるインフレ目標2%の達成は、すでに2年以上経過するが、殆んどそれらしいインフレの傾向は発生していない。
日銀側の言い逃れとして、原油価格の想定外ともいえる50%以上の大幅値下がりの結果、インフレを抑えていると言われており、世間もそのように思いこんでいる面がある。 筆者も実はそのように考えていた。
しかし、 池尾和人・慶応大学教授はリフレ派の理論そのものが間違っていると指摘する。
まず、原油価格の値下がりがあっても、その余裕で使えるようになったお金で、他の商品の消費に向かう筈であり、インフレのブレーキにはならないと指摘している。
確かにそうであろう。筆者もクルマのガソリン代が最近安くなったと感じているが、その余裕を貯蓄に回そうなどとの発想にはならない。その他の商品の消費に使ってしまっている。
そのように我々消費者の行動は、モノの値段が上がりそうだから、急いで色々買いだめしようなどとする動きは、全く見られない。
従来以上に、安い商品を探し、必要なモノだけを買っているのではなかろうか?
販売業者の方も、今まで以上に値上げには慎重だ。 消費者の財布の紐は決して緩んでいないからだ。
結局金融緩和で、カネの発行数量が増えても、だぶついたカネは株式投資などに向かいはするが、経済成長につながる活性化には働いていない。
経済の活性化には、基本となる人口増や新技術の開発、規制緩和の拡大など、本来の地道な経済発展を
追求するしか方法はないのではなかろうか。
(ロイターより貼り付け)
池尾和人教授、「リフレ派理論は実現せず」
日銀は自縄自縛になりかねない
2015年04月24日
[東京 24日 ロイター] - 池尾和人・慶応大学教授はロイターのインタビューで、日銀の量的・質的金融緩和(QQE)の理論では、一般物価は貨幣量で決まるため原油安には左右されないはずと指摘。足元で物価上昇率が鈍化しているのは理論が当てはまっていないためであり、日銀はロジックを総括すべきだと語った。
追加緩和をしてもその限界的効果は薄れており、インフレ期待に働きかけるコミュニケーション戦略も、市場に過度な期待を持たせることで自縄自縛になりかねないとみている。
インタビューは23日に行った。
●リフレ派理論は実現せず、日銀は総括必要
QQE導入から2年が経過、現状をみると、消費税率引き上げの影響を除いた物価上昇率は再びゼロ%程度で低迷している。池尾氏は「QQEの理論が現実には当てはまっていないことが明らかだ」と指摘。実現していない理論が2つあるとみている。
まず、「岩田規久男副総裁が提唱していたロジックでは、原油安というのはあくまで相対価格であり、一般物価水準は貨幣数量で決まるという主張だったはず。現在、物価上昇が鈍化している背景について原油安を言い出すのであれば、総括が必要だ」と指摘する。
いわゆるリフレ派の理論は、原油価格が下落すればその分余裕のできた支出を他のモノやサービスに回すことで、全体の物価水準は下がらないとされる。この物価水準を規定するのはあくまでマネーの量だとする。岩田副総裁が就任前に主張していたのは、ベースマネーの供給量を80兆円程度に増やすことで、物価上昇が可能になるというものだった。
もうひとつは、「消費税率引き上げによる景気低迷も、追加緩和によりキャンセルできると言っていたはずだが、これも打ち消せたとは言えない」という点。「論理を一貫させるのであれば、緩和が足りないということになる」と指摘する。
池尾氏は以前から「ゼロ金利制約のもとでは、量的緩和の追加的な効果は乏しい」と主張してきた。「日銀は、QQEは有効だと主張してきたが、実際には反証されたということ。貨幣供給量を増やせば物価を動かすことは容易だという理論が誤っていたのなら、変更するべき。株価が上がったからそれでいいという話も理解できなくはないが、それで済まされないのではないか。そこは論理を再点検してほしい」と語る。
黒田東彦総裁は期待インフレ率に働きかけることで2%の物価目標を達成しようとしているが、池尾氏はその手法にも疑問を呈する。
「(物価目標達成への)強いコミットメントと、それを裏付けるためのベースマネーの大量供給の2つにより期待インフレ率を引き上げ、実質金利を低下させるというのが、日銀の理論だ。しかしゼロ金利で貨幣乗数メカニズムが働かない状況下で、ベースマネーを増やすとなぜ期待インフレ率が上がるのか、コミットさえすれば期待インフレ率が上がるのか、その論理は私には理解できない」という。
その期待インフレ率自体についても「19日のミネソタでの講演で黒田総裁はインフレ予想自体、その測定や形成について明確な知見がないと認めている。にもかかわらず、中央銀行が物価目標に強いコミットをすれば、人々の期待はそれに沿って形成されていくというような、とても断定的な言い方をしている」と指摘。
●日銀にジレンマ
ただ、期待インフレ率自体のロジックが崩れると、QQE全体が成り立たなくなってしまうため、池尾氏は黒田総裁が2%の物価目標に自信たっぷりに振る舞うことには理解を示す。しかし「それが中央銀行に対する過度な期待を持たせることになるなら、このコミュニケーション戦略はかえって日銀を自縄自縛に陥らせることになりかねず、ジレンマがある」とみている。
さらにQQE継続の副作用として「市場機能の劣化がはっきりと出てきている」とし、財政政策への影響も大きいと指摘。黒田総裁自らが「デフレを脱却した際には金利も上がる」と警告しているように、「公的債務が余りに巨額なために、わずかな金利上昇でも債務残高GDP比率に与える影響は非常に大きくなる」という。
「長期金利が上昇した際に、抑制ないし安定させることができるのかどうか。出口戦略は重要になるのだが、そこは曖昧なままになっている」と懸念している。
(中川泉 編集:石田仁志)
(貼り付け終わり)
日銀側の言い逃れとして、原油価格の想定外ともいえる50%以上の大幅値下がりの結果、インフレを抑えていると言われており、世間もそのように思いこんでいる面がある。 筆者も実はそのように考えていた。
しかし、 池尾和人・慶応大学教授はリフレ派の理論そのものが間違っていると指摘する。
まず、原油価格の値下がりがあっても、その余裕で使えるようになったお金で、他の商品の消費に向かう筈であり、インフレのブレーキにはならないと指摘している。
確かにそうであろう。筆者もクルマのガソリン代が最近安くなったと感じているが、その余裕を貯蓄に回そうなどとの発想にはならない。その他の商品の消費に使ってしまっている。
そのように我々消費者の行動は、モノの値段が上がりそうだから、急いで色々買いだめしようなどとする動きは、全く見られない。
従来以上に、安い商品を探し、必要なモノだけを買っているのではなかろうか?
販売業者の方も、今まで以上に値上げには慎重だ。 消費者の財布の紐は決して緩んでいないからだ。
結局金融緩和で、カネの発行数量が増えても、だぶついたカネは株式投資などに向かいはするが、経済成長につながる活性化には働いていない。
経済の活性化には、基本となる人口増や新技術の開発、規制緩和の拡大など、本来の地道な経済発展を
追求するしか方法はないのではなかろうか。
(ロイターより貼り付け)
池尾和人教授、「リフレ派理論は実現せず」
日銀は自縄自縛になりかねない
2015年04月24日
[東京 24日 ロイター] - 池尾和人・慶応大学教授はロイターのインタビューで、日銀の量的・質的金融緩和(QQE)の理論では、一般物価は貨幣量で決まるため原油安には左右されないはずと指摘。足元で物価上昇率が鈍化しているのは理論が当てはまっていないためであり、日銀はロジックを総括すべきだと語った。
追加緩和をしてもその限界的効果は薄れており、インフレ期待に働きかけるコミュニケーション戦略も、市場に過度な期待を持たせることで自縄自縛になりかねないとみている。
インタビューは23日に行った。
●リフレ派理論は実現せず、日銀は総括必要
QQE導入から2年が経過、現状をみると、消費税率引き上げの影響を除いた物価上昇率は再びゼロ%程度で低迷している。池尾氏は「QQEの理論が現実には当てはまっていないことが明らかだ」と指摘。実現していない理論が2つあるとみている。
まず、「岩田規久男副総裁が提唱していたロジックでは、原油安というのはあくまで相対価格であり、一般物価水準は貨幣数量で決まるという主張だったはず。現在、物価上昇が鈍化している背景について原油安を言い出すのであれば、総括が必要だ」と指摘する。
いわゆるリフレ派の理論は、原油価格が下落すればその分余裕のできた支出を他のモノやサービスに回すことで、全体の物価水準は下がらないとされる。この物価水準を規定するのはあくまでマネーの量だとする。岩田副総裁が就任前に主張していたのは、ベースマネーの供給量を80兆円程度に増やすことで、物価上昇が可能になるというものだった。
もうひとつは、「消費税率引き上げによる景気低迷も、追加緩和によりキャンセルできると言っていたはずだが、これも打ち消せたとは言えない」という点。「論理を一貫させるのであれば、緩和が足りないということになる」と指摘する。
池尾氏は以前から「ゼロ金利制約のもとでは、量的緩和の追加的な効果は乏しい」と主張してきた。「日銀は、QQEは有効だと主張してきたが、実際には反証されたということ。貨幣供給量を増やせば物価を動かすことは容易だという理論が誤っていたのなら、変更するべき。株価が上がったからそれでいいという話も理解できなくはないが、それで済まされないのではないか。そこは論理を再点検してほしい」と語る。
黒田東彦総裁は期待インフレ率に働きかけることで2%の物価目標を達成しようとしているが、池尾氏はその手法にも疑問を呈する。
「(物価目標達成への)強いコミットメントと、それを裏付けるためのベースマネーの大量供給の2つにより期待インフレ率を引き上げ、実質金利を低下させるというのが、日銀の理論だ。しかしゼロ金利で貨幣乗数メカニズムが働かない状況下で、ベースマネーを増やすとなぜ期待インフレ率が上がるのか、コミットさえすれば期待インフレ率が上がるのか、その論理は私には理解できない」という。
その期待インフレ率自体についても「19日のミネソタでの講演で黒田総裁はインフレ予想自体、その測定や形成について明確な知見がないと認めている。にもかかわらず、中央銀行が物価目標に強いコミットをすれば、人々の期待はそれに沿って形成されていくというような、とても断定的な言い方をしている」と指摘。
●日銀にジレンマ
ただ、期待インフレ率自体のロジックが崩れると、QQE全体が成り立たなくなってしまうため、池尾氏は黒田総裁が2%の物価目標に自信たっぷりに振る舞うことには理解を示す。しかし「それが中央銀行に対する過度な期待を持たせることになるなら、このコミュニケーション戦略はかえって日銀を自縄自縛に陥らせることになりかねず、ジレンマがある」とみている。
さらにQQE継続の副作用として「市場機能の劣化がはっきりと出てきている」とし、財政政策への影響も大きいと指摘。黒田総裁自らが「デフレを脱却した際には金利も上がる」と警告しているように、「公的債務が余りに巨額なために、わずかな金利上昇でも債務残高GDP比率に与える影響は非常に大きくなる」という。
「長期金利が上昇した際に、抑制ないし安定させることができるのかどうか。出口戦略は重要になるのだが、そこは曖昧なままになっている」と懸念している。
(中川泉 編集:石田仁志)
(貼り付け終わり)
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