元気な高齢者こそ使いたい電子機器

80歳を過ぎても、日々の生活を楽しく豊かにする電子機器を使いこなそう

北朝鮮問題の正確な認識は、田中 宇氏のコラムを読んでからにしよう。

2017年04月17日 21時15分51秒 | 日記
 北朝鮮と米国の緊迫状態に見える対立に関して、筆者は昨日のブログでも、慌てふためく必要はないと書いたが、田中 宇氏の北朝鮮解説コラムが、的確に状況説明をしてくれている。

 少々長いコラムではあるが、正確な国際政治の分析であると筆者は評価しています。

 トランプ大統領の政権内には、米国第一主義派と軍産複合体を中心とした米単独覇権主義派の対立があり、トランプ氏がバランスをとっている。
 
 トランプ大統領は強硬派の芝居もしながら、北朝鮮のコントロールを中国の習近平主席に依頼していると、田中氏は観察している。

 筆者が数日前にこのブログで書いた内容に、酷似していると思う。

 今回は中国も本気で、北に対して核実験の停止を強硬に要求していると思える。そうでなければ4月15日に核実験を行ってもおかしくなかったのだ。

 米中が本気で連携して、北の政権に働きかけを行っているのだ。 北の政権への中国の干渉は、今後いよいよ本気度が増すだろう。

 米中の連携が実現すると、安倍政権が北朝鮮の脅威を異常なくらい過大に述べ、国内メディアがそれを無批判に垂れ流すのを見ると、日本のアジア戦略に大きな過誤が発生するように思えてならないのだ。

 田中 宇氏のコラムを以下に転載させていただきいます。


( 田中 宇の国際ニュース解説より貼り付け)

トランプの見事な米中協調の北朝鮮抑止策
2017年4月16日  

 この記事は「中国に北朝鮮核を抑止させるトランプの好戦策」(有料記事)の続きです。
 北朝鮮が6回目の核実験をやると予測されていた、金日成生誕105周年記念日の4月15日が、ほとんど何事もなく終わった。北はこの日、誕生日の祝賀にミサイル発射実験をしたが失敗した。米国と中国は、北が核実験をしたら軍事制裁も辞さずとの姿勢を表明していた。北が挙行したのは、核実験よりもずっと世界から黙認されやすいミサイル試射だけだった。北は、事前に核実験をする準備を進めたが、最もやりそうな15日に実行しなかった。これから実行する可能性もあるが、このまま核実験をやらない場合、北は、前代未聞な米中協調による強い中止要請に従ったことになる。  

 北が15日の核実験を見送るのとほぼ同時に、米トランプ政権が「米国の目標は、北の政権転覆でない。目標は、北の最大の貿易相手国である中国の助けを借り、北に最大の圧力をかけることで、6か国協議に北が参加するように仕向け、核開発をやめさせることだ」と表明(リーク)した。米国の世界戦略を決める大統領配下のNSC(安保会議)が4月に入り、軍事攻撃や政権転覆から核保有国として容認までの、強硬策から融和策までのさまざまな対北戦略の実現性を検討した結果、政権転覆にこだわらず、圧力は最大限にかけるものの、北が核兵器開発をやめる気になった場合は、融和策をとることに決めたという。

 1月末のトランプ政権誕生以来、NSCでは、米国第一主義(反覇権主義)のスティーブ・バノンと、国際主義(米単独覇権主義、軍産複合体)のハーバート・マクマスターらが対立を深め、4月5日にバノンがNSCから外されて軍産が勝ったことになっている。軍産はイラク侵攻以来「軍事解決」を好み、北に対しても先制攻撃や政権転覆をやりたいはずだ。だが、実際に彼らがバノンを追い出した後に策定した対北戦略からは、先制攻撃や政権転覆が外されていた。

 米軍の上層部は「北が核実験やミサイル発射をしても、それに対する報復として軍事攻撃をやるつもりはない」と述べている。つい数日前まで、米政府は「北核問題の解決は、先制攻撃か政権転覆しかない」と言っていた。マスコミもここ数日、トランプが北の政権や核施設を軍事で潰すに違いないと喧伝した(日本の対米従属論者たちは、いよいよかと喜んだ)が、緊張が山場を越えたとたん、トランプ政権は、好戦性と正反対の融和的な戦略を発し始めた。これは、北に対する提案にもなっている。今後、北が再び強硬姿勢をとるなら、米国側も強硬姿勢に戻るが、米国が実際に北にミサイルを撃ち込んだり、キムジョンウンを暗殺するための米軍特殊部隊を北に潜入させることはなさそうだ。

▼史上初めて米中協調で北朝鮮に圧力をかけた

 トランプの新たな対北戦略のもうひとつの特長は、初の「米中協調」になっていることだ。北核問題に対する米国戦略は、90年代のビルクリントン時代が、米日韓で北を融和する(北が核兵器開発をやめたら日韓が軽水炉を作ってやる)策で、911後に大転換し、01年以降は「米国は北を軍事威嚇するだけ。北核問題の外交的な解決は中国にやらせる」という戦略をとり続けてきた。中国は、この戦略に乗って失敗すると北とぐるとみなされ米国に敵視されかねないので消極的だった。

 今回初めて米国は、中国を誘い、米中協調で北に最大の圧力をかけ、北に言うことを聞かせようとする策をとった。4月4日にフロリダで行われた米中首脳会談の意味は、トランプがその策を一緒にやろうと習近平を説得することだった。トランプは、晩餐会で習近平と一緒に夕食をとっている最中に、米軍に命じてシリアにミサイルを撃ち込ませ、中国が協力しないなら米国だけで北を攻撃する策に転じるぞと示唆した。習近平はトランプの誘いに乗り、史上初めての、米中が協調して北に圧力をかける作戦が展開され、その結果、北は4月15日の核実験を見送った。

 4月7日には、中国共産党機関紙人民日報の傘下にある環球時報のウェブサイトが「北朝鮮が核実験するつもりなら、中国軍が米国より先に、北の核施設を先制攻撃することがありうる。北と米国が戦争すると、中国北部が一線を越えて不安定になる。中国はそれを容認できない。北の核兵器は、米中と渡り合うためのカードであり、中国が北の核施設を先制攻撃で破壊すると、北はカードを失い、反撃すらしてこないだろう。北は、核施設の破壊を自国民に知られたくないので、破壊されたこと自体を隠すかもしれない(だから、中国による北核施設の先制攻撃は、見た目より簡単に成功する。やっちまえ)」という趣旨の論文を掲載した。この論文は数時間後に削除されたが、中国政府筋が北核施設の先制攻撃を過激に提唱したのは、これがほとんど初めてだった。

 これまで中国は、米朝戦争の再発や北の国家崩壊、難民流出、北政権の暴走を恐れ、北との関係を悪化させる軍事強硬策や経済制裁の発動を避けてきた。だが、そうした中国の自制は最近、急速に薄れている。中国は、北への経済制裁を少しずつ強めている。その一方で中国は、北が核兵器開発を中止し、米韓が合同軍事演習(北敵視)をやめる交換条件で和解策を提案し続けている。

 トランプ政権が最近策定した前出の対北融和策も、実現するなら中国提案と矛盾しないものになる。トランプと習近平は、北が核開発をやめない場合の強硬姿勢と、やめた場合の融和策の両面で協調している。これに加えて5月9日の韓国大統領選挙でムンジェインが勝つと、米中韓の対北戦略が初めて共振(シンクロ)していきそうだ。あとは北が共振してくるかどうかになる。

▼トランプの過激にやって軍産を振り落とす策に協力する中国

 トランプが北核問題を融和的に解決するには、今回のようにいったん思い切り強硬姿勢をとらず、単に「北が核開発をやめたら、米韓が軍事演習をやめる」という中国の提案に乗ればいいだけだった。北も中国提案に対して乗り気だった。トランプが中国提案に乗らなかったのは、米政権を911以来ずっと牛耳ってきた軍産が、在韓米軍の撤退・アジアでの米覇権低下につながる北との和解に猛反対してきたからだ。軍産は北朝鮮に対してだけでなく、ロシアやシリアやイランに対しても和解策を全力で阻止してきた(だからオバマは平和主義者なのに好戦策をやらされた)。

 トランプは、選挙戦中から、NATO廃止や在日在韓米軍撤収など、軍産に楯突くことばかり言っていた。トランプの軍産敵視戦略を中心的に練ってきたのがバノンだった。大統領就任後、トランプは正攻法で軍産を潰そうとしたが、人類を洗脳するマスコミから、世界情勢把握のために必須な諜報機関、米国の軍部、米議会の上下院まで握っている軍産は非常に手強く、トランプ政権はロシアのスパイの濡れ衣を着せられ、次々と出す政策がマスコミに酷評中傷され、財政政策も議会を通過できず、四苦八苦させられている。

 そのためトランプは、4月に入って新たな大芝居を演じ始めた。有力な側近であるジャレット・クシュナー(シオニストのユダヤ人)を、米国第一主義のバノンと激しく対立する国際主義者としてでっち上げ、バノンとクシュナーの戦いが激化し、軍産がクシュナーに加勢してバノンがNSCから外されて無力化され、トランプもバノンの戦略を捨てて軍産の傀儡へと大転換したことにして、4月4日にミサイルをシリアに撃ち込み、プーチンと和解する試みも放棄してロシア敵視を加速し、北朝鮮に対しても先制攻撃や政権転覆に言及し、融和策を捨てたかのように振る舞い始めた。

 軍産の目標は、軍事を活用した覇権維持だ。ロシア中国イランといった非米反米諸国とのとろ火の恒久対立を希求する半面、勝敗を決してしまう本格的な世界大戦を望んでいない。トランプが突然やりだした過激策は、軍産のとろ火の戦争から一線を越えてしまうもので、トランプの過激策に対し、好戦策を扇動するマスコミはこぞってトランプを賞賛し始めた。しかし、軍産はむしろトランプを止めに入った。トランプが対北過激策へと動き出したのは、バノンがNSCから外される前の3月中ごろからだが、このころから米マスコミに、トランプは北に融和策をやった方がいいと主張する論文がよく載るようになった。

 トランプは、異様な好戦策をやり出し、軍産が止めに入ると、それではという感じで習近平を米国に呼び、米中協調で北を威嚇しつつ、北が核開発をやめたら融和してやる策を開始した。トランプは、米国の戦略をいったん好戦策の方に思い切り引っ張った後、当初やりたかった米中協調の融和策を実現しようとしている。

 同様のことは、シリアをめぐっても起きている。シリアに関しては、軍産の諜報機関がトランプに「北シリアのイドリブ近郊で、アサドの政府軍が化学兵器で村人を殺した」というウソの諜報を提示した(実際の犯人はアルカイダ)。トランプは、ウソと知りつつその諜報を信じる演技をやり、アサドには頭にきたと言って本気で怒るふりをして、ミサイルでシリアの基地を攻撃した。しかし、いずれ攻撃の根拠になったイドリブでの化学兵器攻撃の犯人がアサドの軍でなくアルカイダであることが露呈していく。軍産がウソの諜報を故意に流してトランプを信じこませたことがバレていき、軍産が無力化されていく・・・。

・・・と、このように展開するかどうか、まだわからないが、トランプが軍産の傀儡になったふりをして軍産を潰そうとしている可能性は高い。バノンを倒した軍産傀儡のシオニスト、のはずのクシュナーが最近、NSCの議論に口を挟みすぎて、NSCに巣食う本物の軍産傀儡から煙たがられている、という指摘が出てきている。クシュナーは軍産傀儡でなくトランプの代理人で、バノンとクシュナーの対立も演技である疑いが強くなっている。バノンはトランプ側近から外されておらず、今後も目立たないようにトランプの戦略を立案し続けると予測される。FTやWSJにも親バノン的な分析が出ている。

 私は最近「トランプ革命の始動」という本を出版した。これは3月中旬までの事態しか分析しておらず、その後に起きた最近の出来事に対する分析が載っていない。バノンがトランプのために作った、正攻法で軍産を潰そうとする戦略についての分析が中心になっている。その意味で、私の新刊本は、本屋に届いた時点ですでに古くさい内容になっている。だが昨今の「トランプ革命の第2段階」と呼ぶべき、シリアミサイル攻撃以来のトランプの劇的な転換の「演技」としての本質をとらえるには、まず「トランプ革命の始動」(もしくは、この本のもとになった私の有料無料の配信記事の数々)を読んで「これまでの筋書き」を踏まえておくことに意味がある。

(貼り付け終わり)