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もしもトランプ候補が選ばれたら、TPPもNAFTAも帳消しになる?

2016年10月18日 14時36分44秒 | 日記
 米国大統領選の期日が迫る中、クリントン、トランプ両候補のTV討論会での中傷合戦で、果たして誰が大統領にふさわしく勝ち残るのか、いまだに予断を許さない。

 何度もこのブログで書いているように、トランプ氏が劣勢だという、大手メディアの報道が日本に伝わるため、クリントン氏が確実視されているように見えるが、米国内の有権者の意見は、そう簡単に決められる段階ではなさそうだ。

 クリントン、トランプどちらが当選するにしても、米国が保主義の方向に向かっていくのは避けられないようだ。

 ここ十数年来に発生した経済バブルの破たんの結果、世界経済が完全に伸び悩み、過剰生産設備を持っている状況では、米国の白人労働者達が自分たちの職を奪ったのは、自由貿易協定のせいで、生産工場が海外に移転したことや、安い海外製品が流入し、自分たちの賃金や雇用環境を奪っているとみているからだ。
 
 トランプの支持者には、このような白人層が多い。 クリントンも立場上、自由貿易の推進を引っ込めざるを得ないのだろう。

 もしもトランプ氏が大統領に選ばれたら、トランプ氏は、北米自由貿易協定(NAFTA)をはじめ、あらゆる貿易協定に反対している。 その後の米国の交渉はテンヤワンヤになろう。

 日本の国会では、TPPの批准に向け与党は力を入れているが、果たして日本が批准したのち、米国に積極的に働きかけるという考えを、そんなに簡単に米国側が飲む訳がないと筆者は思うのだ。 


(ダイヤモンド・オンラインより貼り付け)

可能性ゼロではない「トランプ大統領」がもたらす大混乱
真壁昭夫 [信州大学教授]
2016年10月18日

◉トランプ氏当選の可能性は
完全に排除できない

 11月8日、米国大統領選挙の投票日を控え、トランプ、クリントン両候補の討論会などが注目されている。 討論会は政策に関する議論よりも両者の中傷合戦になっており、有権者の評判はかなり悪いようだ。
 一つ言えることは、どちらの候補者が勝っても保護主義的な通商政策が進む可能性が高く、世界経済にとってマイナスになることが懸念される。 特に、トランプ氏が大統領になった暁には、かなり明確な米国中心主義になると見られる。

 IMFやWTOが世界の貿易量が減少傾向にあると指摘する中、各国の主要企業の業績も低迷気味だ。 世界的に供給能力が需要を上回る状況が続いており、多くの国が自国産業の保護などを重視する傾向になっている。その極端な例が自由貿易協定などを真っ向から批判するトランプ候補だ。

 金融市場では、トランプ候補が勝利すれば、世界の貿易協定の枠組みが毀損され、経済活動に混乱が生じるとの懸念が強い。 第1回の討論会後、カナダドルやメキシコペソが急騰したのは、トランプ氏の劣勢を受けて過度な保護主義への懸念が低下したからだ。

 ただ、選挙には想定外の結果がつきものであり、トランプ氏当選の可能性を完全に排除することはできない。 同氏の度重なる暴言、スキャンダル、そして共和党首脳部からの決別宣言がなされた中でも、トランプ候補は一定の支持を得ている。 そこには、政治家は経済の低迷による社会の閉塞感を打破できないという民衆の不満がある。

 経済のグローバル化が進み、企業が生産拠点を海外に移すにつれ、先進国内の雇用は増えづらい。 その結果、民主主義を支える基盤である中流階級は遠心分離器にかけられたかのように、下層に向かう大多数と、一握りの上層階級に分かれる。 経済格差が広がり、多くの民衆は既成政治に不満を向け始め、「自国第一」の世論が高まる。

 世界的に保護主義的な傾向が強まると、多くの資源を輸入に頼るわが国は厳しい状況に直面する。 かつての1920~30年代の世界恐慌の時にも、自国優先の保護主義的な通商政策が世界に広まった。 米国の大統領選挙を境に、徐々にそうした状況が進む可能性が懸念される。

◉世界的な保護主義が台頭する背景
新しい景気拡大の原動力が見当たらない

 世界各国で保護主義が台頭しているのは、各国の潜在成長率が低下気味になり、自国の産業育成・保護が重視されやすくなっているからだ。 米国の大統領選挙でも、トランプ、クリントン両候補が米国第一の考えを重視している。

 その背景には、世界が大きなバブルを経験し、新しい景気拡大の原動力が見当たらないことがある。 1990年代中盤以降、世界経済は3つのバブルを乗り継いできた。 まず、1990年代中盤にはIT技術の進歩を背景に“ITバブル(株式バブル)”が米国で発生した。

 2000年代初頭、米国ではITバブル崩壊を受けた利下げやブッシュ減税から、住宅市場に資金が流入し価格が高騰した。 これが世界の不動産市況にも伝播し、“不動産バブル”が発生した。

 さらに、リーマンショック後、2008年11月に中国が打ち出した4兆元の景気刺激策が世界の資源開発を加速させ、原油、鉄鉱石などの価格が高騰する“コモディティ(資源)バブル”が発生した。 2014年年央以降、原油価格が急落したことを受けてコモディティバブルは崩壊に向かったと考えられる。

 こうして世界の需要が低迷し、潜在成長率が低下する中、世界経済は過剰な生産能力の解消に迫られている。 本来なら構造改革が必要だが、失業の増加などが社会の不満につながるため改革は遅れ気味だ。 そして、各国政府、政治家は賃金が伸びづらい経済への不満を抑えることを優先しつつある。 それが保護主義の温床だ。 米大統領選挙で両候補がTPPに反対しているのは、その一例である。

 TPPは経済連携の強化、ルール統一を通して環太平洋地域の連携を目指す取り組みだ。 それは、米国を中心に環太平洋地域の国が協力し、対中包囲網を築くことでもある。 米国がTPPに反対することは、世界経済の不安定化につながる危険な動きだ。 わが国のように資源や農産物を輸入に依存する国にとって、厳しい状況が到来することも想定される。

◉もしトランプ大統領が実現したら?
世界情勢は大きく不安定化する可能性

 トランプ候補が、大統領に当選すれば世界経済にはどういう影響があるだろう。 恐らく、今よりもはるかに自国優先の保護主義的な政策運営が中心になるだろう。

 トランプ候補は、「米国第一、米国は自国民の利益のみを考えればよい」と主張してきた。 トランプ大統領が誕生すると、米国が保護主義的な通商政策をとることは間違いない。 米国経済と関係の強いメキシコ、カナダを筆頭に、世界経済にマイナスの影響が出るはずだ。

 具体的にトランプ候補の政策を見ると、通商面では北米自由貿易協定(NAFTA)をはじめ、あらゆる貿易協定に反対している。 トランプ氏はNAFTAの再交渉が実現しない場合、脱退すると明言し、貿易相手国には高い関税をかけると主張してきた。

 これが実現すると、メキシコなどは米国を提訴し、国際的な通商摩擦が起きるかもしれない。 米国の消費者からみても、欲しいものを安く手に入れることが難しくなるだろう。 GDPの7割程度を個人消費が占める消費大国の米国が、そうした状況に耐えられるかは疑問の余地がある。

 米国財政への懸念も高まる。 トランプ氏はこれまでに4回の破産申請を行っているが、その発想は、返せないなら破産すればいいというものに近かった。 トランプ氏は大規模減税、インフラ投資などを重視し、それが実行されると財政悪化は避けられない。

 もし議会が債務上限の引き上げに協力しない場合、米国債価格が暴落し、各国の外貨準備資産の価値が目減りする恐れもある。

 世界の安全保障に関しても、トランプ候補は北大西洋条約機構加盟国(NATO)が攻撃されても助けないなど、極端な考えを示した。 当選した際にはNATO加盟国との溝が深まり、米国を中心とする国際安全保障に亀裂が生じる恐れがある。 そうなると、クリミア半島や中東地域へのロシアの関与が強まる、南シナ海での中国の進出が加速するなど、世界情勢は大きく不安定化する可能性は高い。

◉今後の展開とわが国が取るべき政策
外交下手を返上し大人の交渉術を発揮せよ

 ヒラリー、トランプ両候補がTPPに反対しているように、どちらの候補が勝っても米国は保護主義的な通商政策を進める可能性が高い。そして、世界的にも保護主義への傾倒が進みつつある。

 10月2日、英国のメイ首相は、2017年3月末までにEU離脱の意思を通告すると表明した。 メイ首相はEU単一市場へのアクセスを最大限確保すると述べはしたが、本心では移民や難民の流入制限を優先しているようだ。

 独仏などEUの有力国が、一切の妥協を排して離脱交渉を進める姿勢を示していることを踏まえると、英国が単一市場へのアクセスを喪失しEuから離脱する“ハードブレグジット”のリスクがある。

 ハードブレグジットの実現は、EU各国にとって移民流入への批判が強いことを再確認する機会になるだろう。 それは、各国の右派政党への支持拡大につながり、EU加盟国間の結束、単一市場の機能低下につながるだろう。 その結果、欧州でも保護主義的な通商政策への要請が高まり、自由貿易や経済連携の強化にブレーキがかかりやすくなる。

 その中で、わが国は不利な状況に陥らないよう立ち振る舞わなければならない。 これまでわが国は、米国からの市場開放などに対して正直一辺倒に対応してきた。 徐々に、時にしたたかに、自国の利益を確保すべく強硬な路線を選ぶなど大人の振る舞いが必要だ。

 TPPに関しては米国以外の参加国との協議を進め、環太平洋地域の連携強化のイニシアチブをとるべきだろう。 言い換えれば、結果的に米国も無視できない経済連携の枠組みを、わが国が中心になって整備するのである。

 TPP交渉で、わが国は過去に例をみないほど確たるメリットを確保したといわれている。 それは米国以外の参加国との利害調整を図り、それを米国に提示した成果だ。 従来わが国は外交下手といわれてきたが、徐々に、他国との連携などを含めた"数の論理"を使い、自国の利益確保を真剣に考えることが必要になる。

 わが国はこれまでの外交下手を返上し、世界の主要国と膝をつき合わせて大人の交渉術を発揮することが求められる。 それが容易でないことは理解するが、そろそろそうしたテクニックを身に着ける段階に来ている。

(貼り付け終わり)