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消費者物価下落の恩恵を受け止め、その結果の実質賃金の上昇を消費者は喜ぼう。

2016年09月01日 11時28分07秒 | 日記
 妻の入院でしばらくこのブログの書き込みを、お休みしていました。 幸い、妻の病気の経過も快方に向かい、ここ数日で退院できそうで、ホッとしています。

 時間の余裕が取れる限り、ブログも再開したいと思います。

 さて看病の際に、いつものネットサイトサーフィンもしておりましたが、書いておきたい情報も多く、今日は日ごろから統計数字を、的確に見ておられる野口悠紀雄氏のコラムを取り上げたくなりました。

 筆者は、日銀・黒田総裁のインフレターゲット2%達成に、あの手この手を打つという発言に、大いに疑問がありました。

 インフレにしたくても、円高の進行で、輸入物価が安くなり、当然数か月後には消費者物価が下がるという、消費者にとってはありがたい結果になるのですが、こういう外的要因が強く影響するのに、あれやこれやと金融政策をひねくり回しても、あまり効果がないと思っていました。

 最近の実質賃金上昇も、まさに消費者物価の下落の恩恵であると、野口悠紀雄氏は各種の統計数値から、喝破されています。

 実質的な名目賃金は、言われるほどの上昇はしておらず、消費者物価が下がって、実質賃金上昇効果を出しているというのです。 筆者もその通りだと思います。

 野口悠紀雄氏は、コラムの最後に「日銀は状況を認識して、インフレ目標を撤廃すべき」と締めくくっておられます。

 なんだか安倍政権の経済政策がピンと来ないのは、もともとの考え方に誤りがあると思われるのです。
 ちなみに、このコラムを読んだ読者のアンケート数字が出ていますが、なんと86%以上の人が、野口氏の意見に賛同されています。


(ダイヤモンド・オンラインより貼り付け)

経済成長は実質賃金上昇で行ない、インフレ目標は放棄すべきだ
野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
2016年9月1日

 6月の実質賃金はかなり高い伸び率を示した。

 厚生労働省は名目賃金が上がったためとしているが、そうではなく、物価が下がったからである。資源価格下落や円高の影響が、ようやく実質賃金に影響し始めているのだ。

 インフレ目標を放棄して実質賃金の上昇をさらに確実なものとし、それによって成長する戦略に転換することが必要だ。

◉実質賃金は上昇傾向に転じた
今年2月以来5ヵ月連続でプラス

 厚生労働省が発表した6月の毎月勤労統計(確報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除く実質賃金は、前年同月比2.0%の上昇となった。増加率の大きさは、2010年7月以来5年11ヵ月ぶりだった。

 厚労省は「ボーナスの増加が賃金上昇の要因になった」と説明している。

 この説明自体は、誤りではない。しかし、6月の値がこのように高くなった原因は、昨年6月の実質賃金の対前年比が3%と落ち込んだことの反動である。この意味で、特殊要因によるものだ。

 むしろ重要なのは、実質賃金の対前年増加率が、今年の2月以来、5ヵ月連続でプラスとなっていることだ。

 実質賃金は、12年以降、ほぼ継続して減少してきた。これが実質消費を抑制し、経済成長率を抑制してきたのである。アベノミクスが、実体経済に影響与えることができなかった大きな原因は、この点に見出される。

 したがって、実質賃金が上昇し始めたことは、日本経済にとって大変大きな意味を持つ。

 以下では、なぜ実質賃金が上昇しているのかを分析し、それを今後の経済成長につなげるためには何が必要かを論じることとする。

◉実質賃金の上昇は、名目賃金上昇でなく
物価上昇率低下による

 実質賃金の上昇は、名目賃金の上昇によってもたらされたという説明がなされることがある。この説明は正しいだろうか?

 名目賃金の対前年比の推移を見ると、図表1(表示できないため以下の図表も省略します 筆者)のとおりだ。

 確かに2016年6月の対前年比が1.4%と高くなったのは事実だ。しかし、これは、15年6月の対前年比がマイナス2.5%と大きく落ち込んだことの反動にすぎない。

 図に示された期間において、いくつかの特異点(15年6月、16年3月、6月)を除けば、名目賃金の対前年比は0%から0.5%程度であり、傾向的な変化は見られない。したがって、名目賃金の伸び率の上昇が実質賃金の伸び率のプラス転換の原因ということはできない。

◆図表1:名目賃金の対前年同月比
(注)現金給与額、5人以上、調査産業計
(資料)毎月勤労統計調査

 重要なのは、消費者物価上昇率が、図表2に示すように、顕著に低下したことである。

 このため、実質賃金の増加率が図表3に示すように上昇してきたのである。

 実質賃金の対前年比は、15年7月以降、プラスに転換している。15年6月、11月、12月を除けば、現在に至るまで、継続的にプラスの伸び率だ。

◆図表2 消費者物価の対前年同月比
(注)生鮮食品を除く総合
(資料)総務省、消費者物価

◆図表3:実質賃金の対前年同月比
(注)現金給与額、5人以上、調査産業計
(資料)毎月勤労統計調査

◉輸入物価が下落しているのに
消費者物価は十分下落していない

 日本の場合の消費者物価の動向は、経済の需給関係で決まるのではなく、ほぼ輸入物価の動向によって決まる。

 このことは、本連載の第46回「資源価格下落は日本への未曾有のボーナス」の図表3「消費者物価指数と輸入価格物価指数の関係」で示した。

 そこで示したように、輸入物価の対前年比の10分の1が、半年後の消費者物価の対前年比とほぼ等しくなる。

 したがって、いま消費者物価が下落しているのは、輸入物価が下落したからだ。

 問題は十分に下落しているといえるかどうかだ。

 これは、GDPデフレーターを見ることによって、判断できる。

 2015年までのデフレーターの推移は、本連載の第47回「資源価格下落の利益が企業の内部留保に吸収されている」で示した。

 その後の時点も含めて最近までの状況を示すと、図表4、5に示すとおりだ。

◆図表4:輸入デフレーター
(資料)内閣府

◆図表5:GDPデフレーターと消費デフレーター
(資料)内閣府

 まず、輸入デフレーターが15年以降、顕著に低下している。

 これに伴って、民間最終消費支出のデフレーターも、緩やかな下落傾向を示している。しかし、輸入デフレーターの下落に追いついていないことが、はっきりわかる。図には示していないが、他の国内需要のデフレーターも、同様の傾向だ。

 このため、GDPデフレーターが上昇しているのである。

 つまり、輸入物価の下落がまだ十分に国内物価に反映されていないわけだ。

 ここで、輸入物価が上昇した2013~14年頃と比較してみよう。このときには、消費税の影響を抜きにしても、民間最終消費支出のデフレーターは上昇した。

 しかし、輸入物価が下がるときは、上で述べたように、消費者物価の低下は限定的なのである。これは、寡占的価格形成によって物価の下方硬直性があることを示唆している。

 このため、最近は実質賃金が上昇しているといっても、中期的に見ると、現在の水準はまだ低い。16年6月の水準130.6は、12年6月の137.1に比べると4.7%低く、10年6月の138.3に比べると5.6%も低いのである。

◉実質賃金増の影響は
まだ消費には現れていない

 実質賃金の上昇は、実質消費を増やしているだろうか?

 GDP統計で見ると、家計最終消費支出の年率伸び率(実質季節調整系列)は、2016年4~6月期において、0.6%と伸び悩んでいる。1~3月期は2.8%の伸びだったが、これはその前の期(マイナス3.4%)の反動なので、実質的にはほとんど伸びていない。

 総務省が7月29日に発表した6月の家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は1世帯あたり26万1452円で、実質では前年同月に比べて2.2%減少した。減少は4ヵ月連続だ。

 2015年後半以降の実質消費支出の対前年同月比は、図表6に示すとおりだ。16年2月を除いては、対前年同月比がマイナスの月が続いている。

 このように、実質賃金増の影響は、まだ消費には現れていない。

 その第1の理由は、上で見たように、消費者物価指数の下落率が十分でないからだ。仮に半年前の輸入物価指数の対前年比の10分の1が消費者物価の対前年比になるとすれば、現時点の消費者物価の対前年比は、マイナス2%程度になるはずだ。

 したがって、名目賃金の上昇率が0.5%程度であっても、実質賃金の伸び率は2.5%程度となり、実質消費を大きく増加させることになるだろう。

 物価が下落しない原因は、市場の寡占構造にあると考えられる。政府は、携帯電話料金について、その引き下げを指導したことがある。寡占による物価の下方硬直性は、携帯電話料金に限った問題ではない。競争条件を整備することによって、輸入物価の下落を消費者物価の下落につなげることが急務だ。

 消費が増えない第2の原因は、消費支出は短期的な所得だけでなく、長期的な恒常所得に影響される面が大きいことだ。これに関しては、社会保障のための財源手当てを確実にし、将来の見通しを確実にする必要がある。

◆図表6:家計調査における実質消費支出の対前年同月比
(資料)家計調査

◉日銀は状況を認識して
インフレ目標を撤廃すべき

 日銀は9月に総括的検証を行なう。

 そこで最も重要なことの1つは、以上で見たような状況を認識することだ。すなわち、輸入物価の下落に対応して国内物価が十分に低下していないこと、それが実質賃金を十分に引き上げておらず、実質消費を抑えていることを認めるべきだ。

 総括検証においては、インフレ目標の達成時期をさらに伸ばすか、あるいは期限を撤廃することが考えられる。しかし、必要なのは、そのような微調整ではなく、上記の認識を前提として、インフレ目標そのものを撤廃することである。

(貼り付け終わり)