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与党の勝利の後に控える、困難な道筋。

2014年12月20日 14時08分54秒 | 日記
 英国フィナンシャル・タイムズ紙に、日本の総選挙に対する論評が載った。

 さすがに日本の保守系メディアのような「自民圧勝」などといった、上っ面な書き出しはしていない。

 安倍政権の自民党そのものが、当選した議員数をわずかばかり減らした事や、共産党、公明党の議員数が大幅に増えた事で、安倍首相の本当に行いたかった憲法改正や安全保障政策の推進は、困難になるだろうと書いている。筆者もこの見方は正しいと思う。

 ただ経済政策面では、大幅な円安の進展で、少しは海外工場から国内工場に回帰する動きが出たり、労働人口の減少から完全雇用の状態になり、非正規社員の賃金の上昇も始まり、おまけに原油価格の大幅下落が幸運な事にコストプッシュを抑え、徐々に需要主導のインフレに道を譲るかもしれない、との可能性も示竣している。

 筆者には国際的な経済変動が激しい最近の状況を見ると、そう簡単に楽観的にはなれないが、安倍首相はもっと経済再生に真剣に取り組む必要がある事は同意できる。

(JB Pressより貼り付け)

安倍首相の「地滑り的勝利」に隠れた真実

2014.12.19(金) Financial Times
(2014年12月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 先週の日本の選挙では誰が勝つのか――。これは文法的におかしいのは言うまでもなく、馬鹿げた質問に思えるかもしれない。

 解散総選挙に踏み切った安倍晋三首相の賭けは見事に功を奏した。野党は不意を突かれ、景気後退の最中であらゆる予想を覆し、連立与党が衆議院で3分の2の「圧倒的多数」を維持した。

 そのうえ、首相は、女性5人が任命された内閣改造で自分が選ばれなかったことに腹を立てている自党内の政治家からの反乱の萌芽を撃退し、誰がボスかということを知らしめた。

 安倍氏は来年の自民党総裁選挙を楽々乗り切るだろう。そうなると、2018年暮れまで首相続投を妨げるものは何もなく、安倍氏の首相在任期間は過去半世紀で最も長くなる。この計算では、安倍氏は大いなる勝者だ。

 だが、日本の多くのことがそうであるように、少し深く掘り下げてみると、すべてが見かけ通りなわけではない。

●衆院選の結果、安倍首相の野望に障害

 まず、安倍氏の自民党は実際、わずか4議席とはいえ、議席を減らした。52%という投票率は戦後最低だった。家から出なかった人の多くは、安倍氏に反対する票を投じていただろう――投票する相手が誰かいたとすれば。

 野党・民主党は混迷を極めており、複数の選挙区で候補者を擁立することができなかった。民主党は欠点を抱えているにもかかわらず、それでも11議席増やすことができた。

 大勝を収めたのは、自民党の連立相手である平和主義の公明党と、議席を2倍以上伸ばして21議席とした共産党だった。共産党はこれで、単独で法案を国会に提出できるようになる。その大半は恐らく保守派の安倍氏の好みに合わないだろう。ひょっとして、国会の議場での「社会主義の革命歌 インターナショナル」の強制斉唱とか? 

 安倍氏の心の中で最も大事な安全保障政策の点では、強力な仏教団体の支持基盤を持つ公明党の議席増加も同じくらい気がかりだ。ブッダが日本の平和憲法の改正を支持したという記録は残されていない。

 安倍氏は今、ほぼ確実にその野望を断念しなければならないだろう。公明党が連立政権内でより大きな影響力を持つだけではない。安全保障に関してより強硬な立場を支持する小さな右派政党が全滅した。

 長年政治を観察してきたマイケル・チュチェック氏は自身のブログで、首相の右派の政策課題はこの場で止められ、安倍氏は修正主義の政策課題にリップサービスをすることしかできなくなると論じた。

 説得力のあるこの投稿記事は「安倍首相はいかにして日曜日に負けたか」という挑発的なタイトルがついている。

●日本経済は見た目より有望?

 それは少々やりすぎかもしれない。安倍氏の運命は、外交政策の問題以上に経済にかかっている。この点では、上記の議論の反対が当てはまるかもしれない。事態は見た目よりもいいかもしれないのだ。

 表面上は、日本経済は決して絶好調ではない。経済は4月の消費税引き上げによって打撃を受けた。これが2四半期連続の経済縮小につながり、最近の統計を信じるのであれば、その後もごくごく緩やかな回復にとどまっている。

 これはすでに旧聞かもしれない。今後1年半、日本経済は力強い成長を迎える可能性がある。

 消費税再引き上げの脅威は、少なくとも2017年までは消えた。円の対ドルレートを2年間で約45%引き下げてきた量的緩和の新ラウンドのおかげで、円は極めて競争的になっている。

 企業が何年も海外工場に投資してきた後、国内回帰が起きる真の可能性がある。古河電工と工業大手の東レとダイキン工業は皆、国内に工場を建設している。噂では、次はトヨタ自動車だと言われている。

 雇用を国内に戻さない企業も、少なくとも、弱くなった円建てでの利益が増える。昨年、労働組合は1%の賃上げを要求し、0.8%の賃上げを獲得した。JPモルガン証券のイェスパー・コール氏によると、労組は今年、2%の賃上げを要求し、恐らく成功するという。

 労働力のうち非正規化された大きな部分では、賃金がすでに年間6%上昇している。労働市場はタイトで、求人数が応募者数を上回っている。

 毎年12月には、郵便局が1兆枚を超す年賀状に対処するために臨時の仕事を提供する。2年前は提示された時給が970円だった。それが昨年は1080円に上昇した。今年の時給は1450円だ。

●コストプッシュインフレが需要主導のインフレになるか

 物価は反対方向に振れている。それは主に、原油価格が急落しているため、輸入原油価格の上昇から生じた「コストプッシュ」型インフレが消えつつあるからだ。賃金が実際に上昇すれば、人々は豊かになったと感じ、支出を増やし始めるだろう。

 だとすれば、コストプッシュインフレが徐々に需要主導のインフレに道を譲るかもしれない。これはまさに安倍氏が望んでいることだ。

 もちろん、これは少しばかりおとぎ話のようなシナリオだ。だが、ここに真実がごくわずかでも含まれていたら、安倍氏は結局、日曜日の選挙の勝者になるだろう。

By David Pilling 

(貼り付け終わり)