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黒田日銀総裁の追加金融緩和は、本来の目的と畑違いに使われたのか?

2014年11月19日 08時38分46秒 | 日記
今回発表になった7‐9月GDP速報値が、市場関係者の予想より大幅に悪化しており、日経平均株価も517円も下げたが、昨日は円安が116.60円と進行している関係もあり、買い戻しも入ったせいであろうが、370円値上がりして取引を終わっている。

 安倍首相が消費税10%引き上げ1年半延期表明と、衆議院解散、総選挙を行うと昨夕に発表した。

 それにしても日銀黒田総裁は複雑な心境であろう。今回のサプライズ金融緩和発表は、あくまで消費税10%を後押しするために行ったと、黒田総裁自身が記者会見で表明しいていたからだ。

 しかし皮肉な事に、その1週間後から、消費税引き上げ先延ばしと衆議院解散・総選挙が、安倍首相の口からではなく、御用大手メディアから発信された。

 それではこの金融緩和が引き起こした円安は、どこらあたりで止まるのであろうか?

 120円は当然の帰結で、130円、140円になる可能性も否定できなくなったと筆者は思う。

 明らかにこの異常な円安は、当面の株高には貢献するだろうが、日本経済に悪影響を与える事になる。貼り付けた山田 徹也氏(週刊東洋経済 副編集長) のコラムの締めくくりはこうなっている。

 『皮肉なことに、「クロダからのギフト」は、消費再増税を後押しするという送り手の意図通りに使われず、株価を上げ、総選挙における与党の勝利を後押しするために「いいとこ取り」されようとしている。このツケを将来払うのはわれわれ国民だけに、その罪は一層深い。』

(東洋経済オンラインより貼り付け)

日銀バブルが国民に押し付けるツケ
狂い始めた追加緩和の前提

山田 徹也 :週刊東洋経済 副編集長
2014年11月16日

 それにしても、黒田東彦総裁にとっては高い授業料となるに違いない。他でもない、市場をあっと驚かせた日本銀行の追加緩和のことだ。

 日銀が10月31日に決めた緩和策の内容は、マネタリーベース(日銀券と日銀当座預金の合計)の増加額を年間約80兆円に拡大し、長期国債の買い入れ額を増やすとともに、ETF(上場投資信託)やJ-REIT(上場不動産投資信託)などの買い入れ規模も増額するもの。

 それまで「戦力の逐次投入はしない」「量的・質的緩和は所期の効果を発揮しつつある」と明言していただけに、誰もがこのタイミングでの追加緩和に驚いた。「事前に市場の期待値を下げておいて、最終的に世界中の金融市場に大きなサプライズを与えたことは、見事の一言に尽きる」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)。そんな賞賛の声も飛び出すほどだ。

 実際、電撃緩和に驚いた株式市場(日経平均株価)は、10月31日の終値で前日比755円高の1万6413円をつけ、11月14日の取引を終えた時点で1万7490円まで駆け上がった。「日銀バブル」ともいえる状況だ。ドル円相場は一気に1㌦=110円台に乗せ、その後、1㌦=115円前後まで円安が進んでいる。

●追加緩和の前提が狂う

 だが、短期的、株式市場的に「成功」したかにみえた追加緩和の狙いは、その翌週からにわかに危うくなる。追加緩和から1週間ほどのうちに、10%の消費増税先送りを前提とした年内解散・総選挙の流れがあっという間にできてしまったからだ。解散権者である安倍晋三首相が国内にいないのに、年内の衆院解散総選挙が既定事実であるかのように報道されている。

 黒田総裁は11月12日、衆議院財政金融委員会に参考人として呼ばれ、「消費税率10%への引き上げを前提に追加緩和を実施した」旨の説明をしている。また、9月の記者会見では、「政府が決定した中期財政計画に従って、財政の健全化が進んでいくことを期待している」と、消費再増税と財政再建の重要性について、政府側にボールを投げ返していた。

 ヘッジファンドなどの海外投資家が「クロダからのギフト」と喜んだ追加緩和は、あくまで消費再増税とセットのはずだったが、黒田総裁が想定していた追加緩和の前提はあっさり狂いつつある。 あれよあれよという間の成り行きに、黒田総裁自身驚き、あきれているのではなかろうか。

 アベノミクス批判派が繰り返し言及しているように、そもそも追加緩和自体、副作用やどこまで効果があるかについて疑問が残る。

 毎月発行される国債をほぼ買い占める日銀によって、短期国債市場はすでに悲鳴を上げ始めている。10月以降、マイナス金利が恒常化し、日銀の購入額に応札額が届かない「札割れ」も発生している。マイナス金利は、投資家が金利を払ってでも国債を買いたがる異常事態だ。

 国債と違って市場規模の小さいETFやJ-REITの買い入れ増額も、将来のリスクの芽をはらんでいる。出口の困難さも想像するに余りある。日銀が出口を模索するときは、物価上昇率2%の目標が実現するときだが、それは長期金利が上昇するタイミングと重なる。そこで国債を売却すれば、ますます金利が上がる。GDP(国内総生産)比の債務残高が200%を超え、先進国中で突出して多い日本にとって、金利上昇は致命的だ。

●問われているのは構造改革

 年金基金などの長期投資家は、今回の追加緩和によってアベノミクスの見直しに入った。「楽観論とは言えないが、アベノミクスの悲観論が見直され、来年以降も日本株が相対的に買われやすい状況が続く」(経済アナリストの豊島逸夫氏)とみられているが、豊島氏が指摘するように、問われているのは、安倍政権が国民に痛みを伴う構造改革に踏み込むかどうかだ。

 安倍政権は第一の矢(金融緩和)と第二の矢(財政出動)による株高円安に浮かれ、この2年近く、財政再建や国民に痛みを伴う構造改革に十分踏み込んでこなかった。選挙で増税を支持する国民はいないだろう。「消費税先送り」という一見心地良い争点を掲げる解散・総選挙によって、本当に大事な政策論議も先送りにされることが一番怖い。

 皮肉なことに、「クロダからのギフト」は、消費再増税を後押しするという送り手の意図通りに使われず、株価を上げ、総選挙における与党の勝利を後押しするために「いいとこ取り」されようとしている。このツケを将来払うのはわれわれ国民だけに、その罪は一層深い。

(貼り付け終わり)