恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

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秘密

2014-11-05 09:03:59 | ハル君ルートで茶倉譲二

ハルルートの譲二さんの話の続編
『それぞれの道』~その6~その10でヒロインと別れた後、七年経ってクロフネに帰って来た譲二さんの話。
☆☆☆☆☆

秘密~その1
〈譲二〉
 突然美緒が、一人でクロフネにやって来た。

美緒「こんばんは…」

 ハル以外のメンバーが集まっているときだったから、みんな口々に心配する。

竜蔵「おっ、美緒じゃねーか!珍しいな!」

理人「あれ?ハル君は?」

美緒「それが…」

剛史「ケンカか?」

一護「ケンカだな」

美緒「なんでわかるの?」

理人「だっていっつも2人一組って感じでしょ」

一護「ハルの奴が、この時間にお前を1人で歩かせるわけねーし」

美緒「うん…家にいるのが気まずくて、出てきちゃって」

譲二「じゃあ、今日どうするの?」

美緒「まだ何も考えてないです。ついここに来ちゃったから」

理人「それなら、僕のうちに泊っちゃえば」

 りっちゃんが明るく言う。

竜蔵「なにいってんだよ。だめに決まってんだろ!」

剛史「ばあちゃんが喜ぶ」

 ポツリと呟いたタケの言葉に一護が噛み付く。

一護「なんでお前ンチに泊まる流れになってんだよ。
うちは俺以外に誰もいねーし、気遣う必要ねーから、うちに来いよ」

理人「いっちゃん、やらしー。絶対何かしようとしてるでしょ」

一護「してねーよ!」

美緒「みんなありがとう。でもそんな迷惑かけるわけには」

 みんなが口々に自分の家に泊まれといっているので、俺も思い切って言ってみた。

譲二「美緒ちゃんの部屋、まだそのままにしてあるよ。
今日はここに泊まったら?」

美緒「えっ、いいんですか?」

譲二「美緒ちゃんなら、いつでも大歓迎だよ。」

美緒「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」

(やったー!)

 素直に嬉しい。

 顔がニヤケそうになるのを必死で誤魔化す。

理人「マスターって、いつも大人の余裕で、そうやって美緒ちゃんをさらっていくよね」

譲二「コラ、変なこと言わないの。」

一護「で、なんでケンカしたんだよ」

美緒「それが…」

 美緒はみんなに聞かれて、ハルと喧嘩してしまった経緯を話した。

 最近相談を受けるようになったクライアントの女性がハルを気に入って、つきまとっているということだった。

 依頼内容は離婚の調停なのだが、その女性は精神的にも不安定な状態で、何かというとハルに電話をかけてくるという。

 ひどい時には夜中の1時や2時にかけて来て、40分から1時間も話し続ける。

 嫉妬からだけでなく、美緒はハルの体を心配して色々言ったのが、口論になってしまったそうだ。
 その上、美緒の留守にその女性がとうとう家にまで押し掛けて来て、応対していたハルに抱きついてしまったらしい。

 その場面を偶然見た美緒はとうとうヒステリー状態になった。

 しかし、ハルはクライアントを優先して、その女性を家族に引き渡しに行ってしまったそうだ。

 それで、美緒は発作的に家を飛び出して来たらしい。

竜蔵「ハルらしいな」

一護「あいつ、くそ真面目だからな」

剛史「でも、それで救われた奴がいるのも事実」

理人「今のハル君は仕事を完璧にこなそうと一生懸命になりすぎているんじゃない?」

一護「真面目すぎんだよ。そこまで、クライアントのことを引き受ける必要なんてねーのに」

美緒「私、どうすればいいのかな」

竜蔵「美緒が言ったことは間違いじゃないぞ」

理人「美緒ちゃんはハル君のことを信じて待っていればいいんじゃない?」

剛史「お前は間違ってない。春樹も間違ってない」

美緒「実は今回のことだけじゃないんだ…。
2週間前にイギリスから私の両親が一時帰国した時に、ハル君も挨拶がてら食事をすることになっていたんだけど…。
両親に会う直前にクライアントから電話がかかって来て、どうしてもその日に話を聞いて欲しいということで、ハル君はでかけたの。
直ぐ帰るということだったのに、戻って来ないし、電話も通じないし、お父さんたちは会えないまま出国してしまったんだけど…。
その時のクライアントというのも今回の女性で、ハル君は話を切り上げようとしても話すのをやめてくれなかったらしいんだ。
午後の3時くらいから夜の9時近くまで。」

譲二「それはかなり病的な人だな…」

竜蔵「そういうおかしいのが時々いるからな」

一護「ハルはそんなのにも真面目に応対しちまうから…」

剛史「夜中じゅう、その女に付き合わされたりして…」

美緒「…」

譲二「タケ、そんなこと言ったら美緒ちゃんがますます不安になるだろ?」

理人「ハル君は大丈夫だよ。美緒ちゃんに首ったけだからね」




 結局、美緒はクロフネに泊まることになった。

☆☆☆☆☆

秘密~その2
〈譲二〉
 結局、美緒はクロフネに泊まることになった。

 久しぶりに美緒がいる(例えドアを二つ挟んでいたとしても)というのは、純粋に嬉しかった。

 俺は美緒が快適に過ごせるよう、出来るだけのことをした。

譲二「美緒ちゃん、部屋に風を入れて、シーツと枕カバーも新しいのに替えておいたよ」

美緒「マスター、ありがとうございます。
急にお世話になることになって、ごめんなさい」

譲二「クロフネは美緒ちゃんの実家みたいなものだからね。
美緒ちゃんの部屋は好きに使ってくれていいんだよ。
俺も美緒ちゃんの部屋だけは掃除と風通し以外では入らないようにしてるから」

美緒「マスター…」

 辛そうな美緒の肩を抱き寄せて、頭をよしよしする。

 そう、あくまでも保護者として…。

譲二「ハルが美緒ちゃんを裏切るわけはないだろ?
そんなこと美緒ちゃんが一番よくわかっているはずじゃないか」

美緒「うん…。でも、あのクライアントの女の人がハル君に抱きついていた姿がどうしても目の前から消えないの」

 肩を抱く腕に力が入りそうなのを、必死でとどめた。

譲二「ハルに電話はしたの?」

美緒「何回もしたけど、つながらなくて…」

譲二「さあ、もう寝なさい。
明日になれば、きっとハルとも連絡がつくだろうし、ゆっくり休めばもっとポジティブに考えられるようになるよ」

 美緒はうんうんと黙って頷いた。

譲二「パジャマはあるの?」

美緒「最低限の着替えは鞄につめて持って来たから…」

譲二「そう。じゃあ、もう部屋に行って休んだら。
今日は疲れたでしょ?
そうだ、ホットミルクを作って部屋に持って行ってあげるよ。」

美緒「ありがとうございます。
でも、できたらラム酒入りのエッグノッグが飲みたいです。
それで…、あのペアのマグカップに入れてもらってもいいですか?
それとも、もう捨ててしまった?」

譲二「いや、ちゃんと置いてあるよ。でも、どうして?」

美緒「あのマグカップは大好きだから。
なんだかあれで飲みたくなって…。
ラム酒も少し多めでね。」

譲二「わかった。…俺も一緒に飲んでいい?」

美緒「ええ、…いいですよ。1人で飲むのは辛いから…」



 食器戸棚の奥から、ペアのマグカップを出して洗った。

 もう一度、このマグカップを使う日が来るとは…。

 エッグノッグを作り、ラム酒を大目に入れる。


 ノックして美緒の部屋に入った。

 驚いたことにもうパジャマに着替えてベッドに入っていた。

譲二「あ、ごめん。もう寝てたの?」

美緒「いいえ。ちょっと横になっていただけ。
ありがとうございます。」

 美緒がベッドから起き上がる。

 俺は美緒のマグカップを机の上に置いた。

譲二「美緒ちゃんのエッグノッグ、ここに置いとくね。」

美緒「譲二さんは?」

譲二「俺は…自分の部屋でエッグノッグを飲むよ。
パジャマ姿の女性と2人で過ごすわけにはいかないからね。」

 そのとたん、美緒の顔がくしゃくしゃに崩れた。

美緒「…いかないで…。1人にしないで…」

 もうダメだ。

 泣きじゃくる美緒を抱きしめて俺は覚悟を決めた。

 たとえ、どうなったとしても今夜の彼女を一人にはしない。

 できることなら彼女の気持ちを慰めたい。

 俺は深呼吸をして言った。

譲二「それじゃあ。一緒に飲もう。」

 美緒はベッドにちょこんと座っている。

 俺は机から椅子を引き出して座った。

美緒「ラム酒がかなり入ってるね」

譲二「少し入れすぎた? 俺にはちょうどいいくらいだから」

美緒「ううん。大丈夫」

譲二「お酒強くなったね」

美緒「そうかな?」

譲二「前はこんなに入れたら苦いって飲めなかったよ」

 言葉が途切れる。


 この7年間、ずっと求め続けて来た愛する人が直ぐ手の届くところにいる。

譲二「美緒…」

 俺は美緒の隣に座ると彼女を抱き寄せた。

 美緒は俺に抱き寄せられるままになっている。

 俺は意を決して美緒の唇にキスを落とした。

 軽いキスは繰り返すうちにだんだん激しいものになっていく…。


 ひとたび身体に火がつくと、以前身体の関係があったもの同士が一線を超えるのは、なんとハードルが低いのだろう。


 キスしながら、俺は自分が抑えられず、美緒の素肌に手を入れ愛撫した。

 美緒もなすがままになっている。

譲二「美緒…、俺の部屋に行こう?」

美緒「…うん」

 俺は美緒を抱き上げると自分の部屋に入り、ベッドの上に下ろした。

 頭の中では、「かなりまずいぞ」と思いながら、美緒の素肌を晒して行く。

 彼女は美しかった。

 俺の思い出の中よりもずっと…。

 俺は美緒の身体の隅々まで知っている。

 どこが一番感じるのか、どんな風に愛撫されるのが好きなのか…。

 そして、美緒もまた俺のことを良く知っていた。

 俺を悦ばせるように愛してくれた。

 俺は「美緒、愛してる」と繰り返し囁いた。

 そして、美緒は俺の名前を何度も呼んでくれた。

 もちろん、彼女を愛しながら、美緒が抱いて欲しいと思っているのは俺ではなくハルなのだと言うことは理解していた。

 2人で果てた後、美緒の顔を見るとやはり涙を流していた。

 彼女の涙にそっと口づける。

譲二「ごめん。どうしても抑えることができなくて…」

美緒「いいの…。譲二さんと再会してから、私の身体はあなたを求めていたみたいだから…。
こんなにハル君のことが好きなのに…。私って変」

 最後は小さく呟いた。

譲二「美緒が抱いて欲しいなら俺はいつでも抱いてあげるけど…って、シャレにならないな…」

譲二「俺たち…、身体の相性だけはいいみたいだね。」

美緒「身体の相性なんて、あるのかな…。
私にとっては譲二さんが初めての人だから」

譲二「そっか…そうだね。
俺は2度もハルから君を奪ってしまったんだね…。」

 本当はこのまま美緒を自分のものにしてしまいたかった。

 でも、美緒は?

 もしかして、この機会に俺を選んでくれるだろうか?


☆☆☆☆☆

秘密~その3
〈譲二〉
譲二「美緒はどうしたいの?
 ハルと別れるつもりなんかないんだろう?」

 俺とやり直してもいい…そんな言葉が彼女の口からこぼれたら…。

美緒「ハル君とは絶対別れたくない!
それなのに、私、なんてことをしてしまったんだろう」

 美緒の顔は青ざめている。

 俺は落胆を隠して、安心させるように美緒を抱きしめた。

譲二「大丈夫だよ。
いいかい、今夜のことは2人だけの秘密だ。
ハルに疑われても、絶対に告白してはいけない。
例えバレても、決して認めてはいけないよ。」

美緒「そんなこと、できるかな?」

譲二「できるかな、じゃなくて、やらなきゃダメだ。
男は強そうで脆いものだから、恋人が他の男に抱かれたなんて知ったら、心が折れてしまう…。
ハルをそんな目に合わせたくないだろ?」

美緒「…私は…譲二さんをそういう辛い目に遭わせてしまったんだね…」

譲二「俺のことはどうでもいい!
どうでもいいんだ…。
美緒が幸せになることが一番大事なんだから…」

 俺は起き上がると脱ぎ散らかした美緒のパジャマと下着を集めた。

譲二「ほら、これを持ってシャワーを浴びて来なさい。
いつもの所にタオルとバスタオルは置いてある。
本当は一緒に浴びたいところだけど、それはハルの特権だからね。」

美緒「…」

譲二「今の、笑うところだったんだけど…。」

美緒「ごめんなさい」

譲二「謝られると調子が狂うなぁ…。
それで、シャワーが終わったら声だけかけてね。
それで美緒ちゃんは自分の部屋に入って眠りなさい」

美緒「1人で?」

譲二「もちろんだろ。
きっとぐっすり眠れる。
朝になったら、今夜のことはすべて忘れるんだ…。
分かったね」

 美緒の唇に軽いキスをして、階下へ追いやった。



 とうとう手を出してしまった。

 れっきとした他人の婚約者に…。

 でも、これは隠し通さなくてはならない。

 今夜はもう少し酒が飲みたい。


〈美緒〉
 朝目覚めると、ハル君からのメールと着信が何件もあった。

 私はそれに気づかないままぐっすりと眠っていたのだ。

 メールを確認していると、ハル君から電話がかかった。

春樹「もしもし美緒?」

美緒「ハル君! ごめんなさい。
勝手に出て来てしまって…」

春樹「俺も悪かった。
美緒を不安にさせるようなことばかりしてしまって…」

美緒「私、昨夜はクロフネで泊めてもらったの。」

春樹「ああ、知っているよ。
一護たちから教えてもらった。
それで、今クロフネの前にいるんだ。
迎えに行ってもいい?」

 私は窓を開けて見下ろした。

 ハル君が携帯を耳に手を振ってくれている。

美緒「すぐ着替えて降りるから、ハル君も入って来て」

春樹「わかった」



 私が慌てて着替えて降りて行くと、譲二さんは朝食をテーブルに並べているところだった。

譲二「おはよう。美緒ちゃん。よく眠れた?」

 昨夜のことなどまるでなかったように、にこやかに挨拶してくれる。

譲二「ハルが迎えに来てくれているよ」

春樹「美緒! ごめんな。一緒に帰ろう」

 2人で見つめ合う。

 大好きなハル君…。

 すぐにでも抱きしめたい…。

 軽い咳払いがする。

譲二「お2人さん、熱いのはいいけど、俺が席を外してからにしてくれる?」

美緒「あ、ごめんなさい」

春樹「すみません」

譲二「えっと…、ハルはもう食べて来てるの?」

春樹「いいえ、起きて直ぐに来たもので、何も食べてません。」

譲二「じゃあ、ちょうど2人分の用意ができてるから、美緒ちゃんと2人で食べて行って」

春樹「そんな、譲二さんに悪いよ。」

美緒「マスターの分は?」

譲二「俺は急がないから、2人が終わってから食べるよ。
それより、俺は自分の部屋に行くから2人でゆっくりここで食べて。
色々話したいこともあるだろ?」


 そう言って、譲二さんは二階に上がって行った。

春樹「美緒…。譲二さんに何もされなかった?」

 心臓がドキリと音をたてた。

美緒「どうして?」

春樹「だって、その…。
譲二さんとは昔、付き合っていたじゃない。
一護たちから美緒がクロフネに泊まるって聞いて、俺はろくろく眠れなかった…」

美緒「昔は昔だよ…。
譲二さんは、ハル君が私を裏切るわけはないから、安心してぐっすり眠りなさいって慰めてくれたよ。」

 私はハル君の目をまっすぐ見つめて言った。

 譲二さんに言われた通り、昨夜のことは隠し通すしかない。

春樹「そっか。それなら安心したよ。」



〈譲二〉
 俺は自分の部屋のベッドの上に転がっていた。

 ひどく惨めな気がした。

 ハルと美緒は朝食を摂りながら仲直りしていることだろう。

 これでいいんだ…。

 このベッドの上で…昨夜…。

 ああだめだ。

 どうしても美緒の姿を思い出してしまう。

 あれは一夜限りのことなんだ。

 しかし…美緒にはああ言ったものの、一度あったことは二度目も期待してしまう。



『秘密』おわり


続きは『祝婚』になります。