お花さんゴメンね

　　　※　折れてしまったストック
　我が家のスタジオのある外壁には、ビルを建てるときに、夫に頼んで
付けて貰った特製のフラワーボックスがあるが、それはわたしの自慢の
一つだ。いつも外壁にきれいなお花が咲かしたい、わたしの長年の夢
だったが、それがが実現したのである。
　スタッフがいたときには、水もやったこともなかったが、今ではわたし
がそのフラワーボックスに水をやったり、枯れた葉をとったりして手入れを
している。でもこれ程大変とは思わなかったので、気がついたときは何も
言わずに長年手入れしてくれたことを、改めて感謝した。
　ちょっと大変だが、でもそれも案外楽しいもので、ときどき「きれい
に咲いてね」と話しかけながら手入れをしている。
　今はピンク、紫、白のストックが植えてあるが、毎朝スタジオに行くと
窓を閉めてあるのに甘くやさしい香りが立ちこめている。
　四日ほど前のことだが、枯れた花をとっているとき、背の高い白い花が
ポキンと折れてしまった。「かわいそうに、ゴメンね」と、謝りながらわた
しは、その花を捨てるにしのびなく土にさしてみた。
　もしかしたら、しばらくそのまま咲いているのではないかと、思ったからだ。
次の日に見てみると、まだきれいに咲いていた。毎日「ガンバッテね」と声を
かけているが、まだ今日もそのまま咲いているが、一体いつまで咲いていて
くれるかしら？とわたしは可愛そうで心配でならない。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　能里子