~窓をあけよう☆~

現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展

7月12日(土)に行ってきました。


そもそも「ハードコア」とはどういう意味(?_?)
ポルノと音楽とプロレスに使われる言葉だそうです。それぞれの分野で共通していえるのは「過激さ」。
自分なりに解釈してみると、「現代美術のハードコア」とは多分、現代美術市場の生々しい最前線・・・という意味ではないかと思いました。

国立近代美術館の前にはサン・ユウ(常玉)氏の「六匹の馬」という穏やかな絵の写真付き展覧会の案内が書かれていて、ふと左を見るとヨガのポーズをしている巨大な白い女の人が展示されてました。


マーク・クイン「神話(スフィンクス)」2006年


ポスターがまたなんともサイケデリック!


ヤゲオコレクションとは、台湾の電子機器メーカーのヤゲオコーポレーションのCEO(これ中国語で総経理って書くけど、こっちのほうがわかりやすい気がする)のピエール・チェン氏がコレクションした作品群だそうです。世界的にも十大コレクターのなかの一人として美術市場界でも注目されているそうで、この展覧会を開催するきっかけは去年開催されたフランシス・ベーコン展を企画するときにキュレーターがヤゲオコレクションにベーコンの作品が存在することを知り借り受けたことから展開したそうです。

ピエール・チェン氏が自宅の部屋に飾るために購入したもので、写真(台湾、香港、東京のご自宅の写真が展示されてました)をみると、モダンでシンプルな部屋に飾られていました。
私的な好みをもってコレクションしているのが特徴。美術館は後の世代に残していく作品として絵を買い付けるけど、コレクターは今自分の感覚にあった作品を選ぶ。そこが違いであり、現代美術の作家作品をいち早く評価するのもコレクターだそうで、美術館とは違う役割を担っているそうです。

会場の壁には説明が細かい字でびっしり書かれていて、開催された方々のこの展覧会への意気込みと熱気がむんむん感じられました。そこに最初に書かれていたのが「世界の宝」という意味。
たしか説明では2つの意味があると書いてました
一つの絵が何億もする値段で取引されていることからも絵自体が宝物である、という事
美術史的にもやがて貴重な宝となる存在になる、という事
だそうです。また購入時の金額なども説明書きに書かれているのが面白かったです。

一代でヤゲオコーポレーションをたちあげ、丁々発止のビジネス界で生きているピエール・チェンにとって美術作品は心の解放をしてくれるものだそうです。
なんといってもスケールの大きい方だなと思いました。

最初はまずマン・レイが恋人を描いた魅力的な女性像から始まりリキテンシュタインやウォーホールの作品などポップアートが展示され、次に初期にコレクションされた中国、台湾の作家の作品が展示されてました。
台湾の作家をまずコレクションし始めたのだそうです。
赤い屋根の中国の街の佇まいの絵を俯瞰して描いているグォ・ボーチュアン(郭柏川)は1947年の2.28事件で処刑された作家だそうです。

パリで活動したサン・ユウ(常玉)は穏やかな作風でした。
「蓮に白鶴」は板に蓮と鶴の絵を描いて現在は額絵になってるけど、屏風のように蝶番で折れ曲がるようになっていました。
「六匹の馬」ものどかで優しさを感じました。
そしてあひるが並んで泳いでいるこの絵が可愛らしい!

「アヒルとボート」1930年
他にも抽象画や中国大陸の作家(名前が簡体字で明記されている)の作品がありました。
説明書きによると美術市場では今中国の作家作品が高値で流通されているそうです。日本作家はまだそこまで高値ではないそうです。知らなかった。


そして、写真シリーズ
杉本博司のかなり大きな写真作品、モノトーンで写された海景シリーズは静謐な美しさを佇ませていました。

そしてアンドレアス・グルスキーの写真作品も

「V&R」2011年
よく見ると同じ顔のひとが2~3人ずついます。右端にいるのは東洋人で、西洋人と違い横顔に奥行のない平たい顔だな、なんて溜息ついたり・・・

フランスやイタリアの大聖堂を写した作品や、核施設を写した作品もありました。

トーマス・シュトゥルート「トカマク型核融合炉(Asdex Upgrade)の内部2、マックス・ブランク・プラズマ物理研究所、ガーヒンク」2009年
タイトルが長い・・・(@_@)。こんなコアな場所を撮らせてもらえるのか・・・。


ゲルハルト・リヒターは写真を拡大して絵にしてました

「叔母マリアンネ」1966年
昔の白黒写真を絵にしたもの、横線が古いテレビの画面を再生したように見えます。遠い記憶から呼び覚ましたような感じにも思える。写真の女性はユダヤ人で作者の叔母でのちにナチに虐殺されたそうです。
ユダヤ人の記録としても貴重な作品だそうです。


香港のご自宅(こんなにスッキリしてたらお掃除楽だろうな)
手前の壁に掛っているのがゲルハルト・リヒター「抽象絵画」 1990年
24年たってずいぶん作風が違うので別の人かと思いました。

奥の壁の赤い作品はセザンヌの水浴の絵を思い出す作品

マーク・タンジー「サント・ヴィクトワール山」1987年
水浴びをしている人物と水に映っている人物の違いがこの大きさの写真ならわかるかな?
セザンヌは水浴画を男性だけ描いたもの、それと女性だけ描いたものがあり、男女両方が入っている絵がありません。だから・・・
・・・そろそろ書きます
水の上にいる人物は全て男性なのに対して、水に映った人物は全て女性なんです。
この写真じゃわかりにくかったかな。


油絵作品もしくは他の材料で描いた平面作品も多数あり、見ごたえありました。
マーク・ロスコは穏やかなオレンジ色の作品が心地よく、
ベーコンは2作品あり、特に紅い背景にルシアン・フロイドを描いた三副対作品が素敵でした。

後半の展示に入ると、複雑な情景を描いた作品がありました。
多分少年たちの売買を思い起こす絵とか・・・パッと見て不穏な男女関係の絵のように思えてじっと見ないようにした絵とか・・・
そういうものもあえてコレクションしているのは作家の活動を支援している意味もあるのかと思いました。

ディビット・ホックニーの美大卒業作品はゲイの雰囲気プンプンでした。

元ロックミュージシャンが日本の元首相を描いているのも興味深いです。また、その作品を買ったピエール・チェン氏にも妙に感心。

そうそうインドの作家作品も

ディエブ・メータ「無題(リキシャに乗った女性)」1991年


そして立体作品

マーク・クイン「ミニチュアのヴィーナス」2008年
あまり大きくない作品で、ケイト・モスという有名なモデルさんの顔と体にヨガのポーズをさせたものだそうです。もう1点ありました。展示された写真を見ると東京のお宅にあるようです。


ロン・ミュエク「若者」1958年
血に染まったシャツをめくりあげて脇腹にある切り傷をいぶかしげに見る少年。危険な町に住む少年なのでしょう。

会場外にはすりガラスの家のなかで手紙を書くリー・ミンウェイ(李明維)の参加型作品「手紙を書くプロジェクト」がありました。
外から手紙の封筒に書かれた宛名を見ると、故人に向かって書かれた手紙が多かったです。どうしようか、と私も考えましたが参加せず少し眺めただけにしました。

全体を見て爽快感があり、特に、抽象画が心地よく洒落ていました。実際、お部屋に飾っている写真を見るとシンプルで広い家に大画面の絵は壁の模様にも見えて生活にすっかり馴染んでいるように見えました。居心地がよさそう。

会場出口にはドールハウスがあり。絵のミニチュアがおもちゃのようにあり、その中から自由に5点ドールハウスに飾ると値段がわかるゲームのようなコーナーがありました。予算は50億円です♪。ちょっとばかりオーナーの気分を味わうということかな。せっかくだからお洒落な家具もレイアウトしたかったな♪すいてたので並ばずすぐ楽しみました。




帰りに地下鉄に乗るため毎日新聞社のビルのエレベーターに乗ろうとしたら、ワールドカップの報道写真展がこじんまりとやってました。せっかくなので一通り見てゆきました。
日本チームの選手が精いっぱいの表情をしてプレーし、そして悔しさに泣いている写真もありました。
カメラはサッカー会場周辺にも向けられ、大会がはじまってもなお続けられている道路工事の様子もありました。
最後、会場から近い場所で暮らす人たち・・・見渡す限り人がかがんではいるのがやっとのビニールのテントに住んでいる貧民街の人々でした。
ブルーシートならまだましで、ほんとうに黒いごみ袋に使われるようなビニールで、テントも人が横たわるのでいっぱいいっぱいな様子でした。夏は暑いでしょう、冬は寒いでしょう。さらに嵐の日はどうしているのか・・・。
一時的な難民キャンプではなく、こういう生活が何年も続き、しかもここから脱出する展望もない生活をしていたら、気持ち追い込まれ絶望してしまうのではないか、この生活から這い上がれるならどんな手段も選ばないと思ってしまうだろう。
ワールドカップ開催に際し、住人のデモがあったとは聞いてましたが、こんなにせっぱつまってるとは。

皮肉にも夢のような富豪の暮らしと絶望的な貧しい暮らしを前後して見ました。
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