黄金色の日々(書庫)

海外ミドルエイジ俳優に萌えたり愛でたりするブログ

齢を重ねる愛

2013-12-30 21:35:51 | 映画感想



『鑑定士と顔のない依頼人』 ネタバレそこはかとなく有り。


物語の始まりは、ある鑑定依頼。引き受けたのは、天才的鑑定眼をもち、世界中の美術品を仕切る一流鑑定士にして、オークショニアのヴァージル・オールドマン。
それは、資産家の両親が亡くなり、屋敷に遺された絵画や家具を査定してほしいという若い女性からの、ごくありふれた依頼のはずだった。
ところが──依頼人は嘘の口実を重ねて決して姿を現さない。ヴァージルは不信感を抱くも、屋敷の床にもしそれが本物なら歴史的発見となる、ある美術品の“一部”を見つけ、手を引けなくなる。
やがて、彼女が屋敷の隠し部屋で暮らしていることを突き止めたヴァージル。
決して部屋から出てこない彼女と壁ごしのやり取りを重ね、我慢できずに姿を覗き見たヴァージルは、美しいその姿にどうしようもなく惹かれていく。ところが、ある日、彼女が忽然と姿を消す─。

果たして奇妙な鑑定依頼の本当の目的とは?ヴァージルの鑑定眼は本物か、節穴か?
謎はまだ、入口に過ぎなかった──。

公式サイトより



ラストについて触れないようにしたい。そういう映画ばかり続いてる。
ネタバレしても見応えはあるんだが、ラストを見てどう感じるか、自分の判断で見た方がいい。絶対。

主人公のヴァージルが、生身の女を知らぬ肖像画オタクということがまず、大きなポイント。
それが初めて、生きている女性に恋する。老いらくの恋。
しかしヴァージルは、肖像画に対する執心ぶりを見ても、思い込んだらその情熱は凄いのである。

ある程度はネタバレしないと何も書けないので書いてしまうが、壁の中の美女の信頼を得て、家の中では会えるようになる。
その女性、クレアにヴァージルは求婚する。
彼が集めてきた、沢山の名画の女性たちを見せ、「私たちと一緒に暮らしてほしい」とプロポーズする。

ここで、引っかかった。
それまでのヴァージルの、初めてづくしの生きた女性への接近や煩悶、試行錯誤や怒りや喜びなどにかなり同調して、相愛になったことが良かったなあと感じていたのだが。
ここに来て、彼にとっての生身のクレアと、集め続けた肖像画の女達の比重は同程度なのかと。

コレクターの旦那を持つ女性などいくらでもいるので、クレアが承知すれば問題ないとも言える。
けれど、彼はどちらも取ろうとした。それこそが、ヴァージルの先行きを示すものでもあった。

ラストには、人間不信になる人もいるだろう。ここまでされる必要があったのかとも感じてもおかしくはない。

生身の相手と関わり、そのことで得たもの。失ったもの。
関わらなければ、失うことはなかったのか。それとも、その前にあったすべては、そんな大したものではなかったのか。
深い傷を知らぬまま老い、死ぬはずだった人生は、輝きと人に対する感情を得た。
ヴァージルはそれまで、肖像画を獲得するために長年組んでいるビリーにも上から目線だし、やはり長年の秘書の男性が結婚しているかも知らなかった。
他者に興味がなかったヴァージルが、恋をして人を知り、人に対して感情を持ち優しくなる。

人に感情を持てば、傷つくことを知る。しかし知らぬまま終わる人生と、どちらがいいのか。
残された機械人形は、ヴァージルが操られていたととるか、以前の彼が機械だったと取るか。

誰がなぜという動機や、巧妙過ぎる罠とプロット、そしてここまでするのかというラストは、ストーリー的には重大だし見応えの元だが、私の見るポイント的にはあまりどうでもよかった。
それよりも。ヴァージル自身がこの先あのまま朽ちていくのか、それとも傷をも自分への生き方の変換の示唆と取り、新しい生き方を望むのか。
その方が気になる。

気になるといっても、それは結局、見た人が自分ならどうするか、ということだ。


ジェフリー・ラッシュはさすがの名演。この人は別に憑依系というわけじゃないが、ほんとに多才だ。




またもガラッと文体変わります。


映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』予告篇




これはアトマスフィアを味わう映画ですよ


ジャームッシュ作品は『コーヒー&シガレッツ』しか見たことないんだけど、あれも出演者がコーヒー飲んでタバコ吸ってるだけだった(まんま)。
一緒に行った友人は、「ストーリーってものはないの?」と釈然としない感ありありでしたが(笑) そうなんだよねー。『コーヒー…』よりはあるよ(笑)
私もストーリーテリングの凝った話が好きだから、こういうアートチックな作品は普段あまり見ないので、多少はタルかったとは言える(笑)
でもやはり、キャストは秀逸でしたね。ティルダ姐さんはどう考えても人外なんで、3000年生きているという吸血鬼にはぴったり。ていうか、そんなに生きてるのか。エルフ並みか。
アダム(トムヒ)は幾つなのかわからないですが、明らかにどう見ても年下亭主なんですけど、たいへん気だるい中二です。
彼自身は血統書付の英国紳士なのにノリがよい、でも子供っぽさのない好青年なのに、ロキといいなんで中二野郎がこうも似合うのか。

そう、トレイラーでは“永遠の恋人”と出てますが、夫婦ですよ。別居婚の。彼らに結婚制度が何の意味があるかわかりませんけど。もう何千年も一緒にいたら離れて暮らす時もあるんだろう。
ちょうラブラブなんですけどね。お互いの気に入った国、場所に住んでるみたい。
アダムの方がイブより500歳は年下であろうが1000歳違いであろうがわかりませんけど、もうそれっくらいはどうでもいいっつうか。
イブが定期的にかまってやらんと、世界はもうだめだ穢れているゾンビども(人間のことらしい)がすべてを駄目にする俺はすべてがむなしいうんちゃらかんちゃら…となるんだろうこの厄介にしてナイーブな男は。よちよち。

でもねえ。やはり絵になる。ティルダはともかく、相手役の男優が印象薄いなんて感想をどっかで見ましたが、いやあ生々しさを出さずにかつあの姐さんをエスコートできる今が旬の俳優は彼しかいないでしょう。
ティルダは180㎝もあるんだよね。トムヒは187㎝。今回彼の結構なイイ体を拝めますが(上半身裸のシーンが多い)、二人とも全裸で寝てるショットなんて、もうアートそのものですよ。撮り方がそうなのもあるけど、超越した種族ゆえの完全な美であり、エロスはあまりない。非常に美しい。
それに立ち居振る舞いがやはり優雅なんだよね。トムヒもティルダも名家の血筋、しかも二人ともケンブリッジ大卒。
なんて書くと、えらくスノップっぽいですが。

要するにこの話は、ヴァンパイアというよりは高等遊民な長命族の達観と倦怠。達観はイブで倦怠はアダムね。
生々しさ無用。そこに破天荒なイブの妹エヴァが波風立てに来るけれど、それほど大したことじゃない。
ミアちゃんもまた綺麗で可愛いんだわ。ティルダに抱きついて二人で座ってるところなんて、これまた完璧な絵面ですよ。
あとスタトレで可愛いロシア訛りのチェコフこと、アントン・イルチェンが出てました。髪型がソバージュでわからんかったよ。
アダム、始めはファスがキャスティングんだったそうで。いやまて、それは変わって良かった! この役、合わないよ(笑)
7㎝の身長差があり(ファスは183㎝)、かつ脚が2m位あるように見える優雅なトムヒだからこそ、ティルダのエスコートや抱擁が美麗なんですよ。ファスはほれ、脚は(自重)


奇妙なユーモア感覚も満ちていて、この監督が好きな人の傾向はわかる気がした。しかしファンのように世界観を語れる素養もないし、あまりくだくだ説明するような映画ではないので他には書けない。
だからやっぱりアトマスフィアを噛みしめる映画だってばよ。





処刑人の俳優二人来日なんて追っかけてた身には、ギャップが凄すぎましたが(笑)
年末滑り込み鑑賞。やっつけ感想で精一杯でした。書き逃げ御免。
明日はいよいよオーラス。御挨拶に参ります~。

2 コメント

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美麗ヴァンパイアたち (こま)
2013-12-30 23:58:30
遠出して見て来ました!
都会の映画館こわい…。ビルの上のほうにあるし、オサレなんでしょうが何か薄暗い。
田舎のどーんと家族向けの映画館に慣れている身としては、ちょっとおどおどしつつ(笑)

本当に美しい方々でしたね! 
姐さんは言わずもがなですが、トムヒも立ち居振る舞いが流石で
中世ヨーロッパにも生きていたというのにもすんなり納得できますし。
始まってから30分くらいで「うん、話が展開しない(汗)」とは思いましたが、そういうものなのだろうなと。
美術品を鑑賞するような気分でした。眼福です。

あ、こちらで報告させていただきます。メール届きました。
お忙しい中ありがとうございます。
とうとう大晦日ですね。明日も覗きにお邪魔します。
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有閑倶楽部@ヴァンパイア (山吹@やっと大掃除終了)
2013-12-31 01:06:33
こまさん、都会の映画館って!(笑)

私は日比谷は毎度おなじみのトーホーさんで見たんですが、3つあるうちの一番小さいシアターなのはいいものの、傾斜がなくて腰がキツかった。
たゆたう作品に合わせ、どんどんずり下がっていくという。
都会の映画館の方が、新しいシネコンより見ずらいっすよ(笑)

アダムは一応ミュージシャンとして収入得てますが、イブ姐さんはなにして暮らしてんだか。まさしく有閑層。
でも二人して実に絵画チックでしたよ! 肌を見せているシーンより、ダンスするところが優雅にしてエロチックでした。

一緒に行った友人は、話がない! 初めての監督なの!?とか言ってましたが(笑) インディーズの大御所ですよね。しかも監督ご本人が、髪は白いものの年齢不詳のヴァンパイアだよあれ。アートな美男。俺好みのもの以外排除なすごい俺映画で、いっそ清々しい(笑)

中世の頃の二人を想像するのも楽しいですが、私はアダムの無言の行のドクターコスが好きです(笑)

明日もよろしくv
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