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国際私法の論理のおもしろさ。

2012-05-02 01:14:56 | 文化振興、異文化交流

 国際私法を聴講していて、たいへんおもしろい法の考え方に出会いましたのでご紹介します。

 フィリピン人ご夫婦が日本で10年ほど住んでいたとします。

 しかし、そのご夫婦が離婚をすることになりました。

 法の適用に関する通則法第27条で、

(離婚)第二十七条  第二十五条の規定は、離婚について準用する。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。

 同法第25条で、

 (婚姻の効力)
第二十五条  婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。

 よって、このフィリビン人ご夫婦の離婚の問題は、両人がフィリピン人ゆえ、フィリピンの法を適用することになります。


 ところが、フィリピンでは、離婚を法で禁じています。

ということは、二人は、離婚できなくなるのでしょうか。

 取り得るべきひとつの方法は、二人とも日本の国籍をとり、その後、日本の民法に沿って、離婚をする手段、法律回避の方法があります。


 そして、もうひとつ取り得る手法があります。

 同法42条で

(公序)
第四十二条  外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない。

 同法を用い、今回の場合、離婚を求めるフィリピンのご夫婦に、フィリピン法を適用した結果が、離婚が出来ないという公の秩序に反しており、よって適用をしないことにし、故に離婚を可能にするという手法がとれます。

 第42条の適用の仕方には、二つの学説が分かれています。

 1)準拠法なしに、判断をするというやり方と、2)外国法が排除されたと言うことで、内国法を適用するという手法です。
 1)は、準拠する法律なしに行う点で不都合です。2)は、「国際私法の自殺」だと言われています。

 第42条では、その適用が公の秩序又は善良の風俗に反するとき」とあるところ、
 その適用の結果と読むことが大切です。
 上記の場合、フィリピン法自体が、公の秩序又は善良の風俗に反するという意味ではなく、
 フィリピン法を、具体的にその個人に適用したその“結果”が、公の秩序又は善良の風俗に反することを意味しています。


******実際の判例(○○○○、下線は、小坂)****

【事件番号】 東京地方裁判所判決/昭和32年(タ)第14号
【判決日付】 昭和33年7月10日
【判示事項】 離婚禁止の外国法と国際私法

主   文

 原告と被告とを離婚する。
 訴訟費用は被告の負担とする。

       事   実

 原告は、主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、
 原告は、日本の国籍を有する者であり、被告は、フイリピン共和国(以下、単にフイリピン国という。)の国籍を有する者であるが原被告は、昭和二五年一二月二七日東京都で事実上婚姻し、昭和二六年七月一一日千代田区長に対してその婚姻の届出をした。
 ところで、原被告は、右婚姻後東京都で同棲し仝年八月被告が先ず沖縄に渡り、次いで翌年秋原告も沖縄に赴き仝地で同棲生活を送つた後、昭和二八年七月初め日本に帰り、ともに東京都にある原告の実家において居住するに至つたが、被告は、沖縄滞在中同地の会社に技術者として就職し、相当額の収入があつたにかかわらず、東京にいた原告には生活費をほとんど与えたことがなく、被告の勤務さきであつた右会社が解散するに至つた際、被告は、同地で就職ができたにもかかわらず、日本での就職を望んだ結果、さきに述べたように再び原被告は、日本に帰国したのである。しかるに、被告は、その後労働の意慾を失い、無為に過ごすのみで、原告の実家の援助を受けて、かろうじて生活を支えることができるありさまであつたから、原告が被告に対して極力収入の道を講ずるよう求めたところ、遂に昭和二八年八月二一日行くさきを告げずに単独で原告のもとを去つた。そこで、原告は、被告との離婚もやむをえないものと考えるに至つたところ、被告は、原告との協議離婚の届書に署名すると申し述べて、原告や原告の実母からしばしば金銭をもらい受ける一方、右届書の作成に協力しようとしないことは、もちろんのこと、その所在さえ原告に明かさず、昭和二九年初めころ以後は、音信を絶つてしまつた。
 更に、被告は、昭和三二年一一月初めその本国に強制送還されるべき旨の決定を受けたが、被告の本国法であるフイリツピン国法によれば、原告の同国への入国は許されず、原被告が同棲する可能性さえもない。
 このようなわけで、原告は、民法第七七〇条第一項第二号にいわゆる配偶者から悪意で遺棄されたときにあたり、また、同条項第五号にいわゆる婚姻を継続しがたい重大な事由があるときにあたるから、右各事由に基づき裁判上被告との離婚を求めるため、本訴請求に及んだ、と述べ、
 証拠として、甲第一、二号証を提出し、証人○○○○、○○○○の各証言、原告本人尋問の結果を援用した。
 被告は、原告請求どおりの判決を求め、原、被告の国籍に関する事実(ただし、原告の婚姻後の国籍に関する点を除く。)原、被告の婚姻の成立に関する事実、原、被告の婚姻後の滞在地、滞在期間に関する事実がいずれも原告主張のとおりであること、被告が、原告主張のころから原告のもとを去り、別居していることは、認めるが、その余の点は、争う。
 被告は、沖縄滞在中及びその後を通じて原告に対する生活費の供与を欠かしたことがないから、扶養の義務を怠つたものでなく、被告が原告のもとを去つたのは、原告主張のように両名が原告の実家に居住中、被告の人格を無視した取扱いを受け、そのあげくに原告から追い出されたのであり、被告の意思によるものでなかつた。と述べ、甲号各証の成立を認めた。
 当裁判所は、職権により、被告本人を尋問した。

       理   由

 公文書であつて、真正に成立したものと認める甲第一号証(戸籍謄本)、同第二号証(東京都新宿区長作成にかかる外国人登録済証明書)、原、被告本人尋問の各結果を綜合すれば、原告は、日本国籍、被告は、フイリツピン国籍を有する者であるが、原、被告は、昭和二五年一二月事実上婚姻し、昭和二六年七月一一日東京都千代田区長に対しその婚姻の届出をしたこと及び原被告は昭和二八年七月沖縄から帰り東京都新宿区の原告の実母方に別居する迄仝居していたが別居后被告の所在ははつきりしないことを夫々認めることができる。そうして、フイリツピン国法律第四七三号によれば、フイリツピン市民と婚姻した外国人の妻は、婚姻により当然にフイリツピン国籍を取得するものでなく、また原告本人尋問の結果によれば、原告がフイリツピン国に帰化したものでもないことが認められるから、原告は、現に日本国籍を有する。そうとすれば、被告の住所が日本にあるかどうかにかかわりなく、本件離婚につき日本の裁判所は、裁判管轄権(裁判権)を有するのであり、この場合国内における土地管轄は人事訴訟手続法第一条に則り夫たる被告の最后の住所地である東京都を管轄する、当裁判所の管轄に属する。
 次に、証人○○○○、○○○○の各証言、原告本人尋問の結果を綜合すれば、原、被告は昭和二四年一二月原告が駐日フイリツピン大使館に勤務中、知りあい、その当時被告は、沖縄で自動車修理工として働いていたのであつたが、前記の日に東京都において婚姻した後、昭和二七年九月三〇日原告が沖縄に赴き、それ以来同地において右両名は同棲するに至つた。ところが、被告が同地の勤務さきを解雇されたため、昭和二八年七月初め原、被告は東京都に帰り原告の実母○○○○方に身を寄せたが、被告は、まつたく働く意思がなく、沖縄居住当時たくわえた金銭を消費し尽し、原、被告所有の家財道具を売却してしまつたうえ、同年八月その行くさきを告げずに原告のもとを去つた。
 このような事実を認めることができ被告本人尋問の結果のうち右事実認定と抵触する部分は当裁判所の信用し得ないところであり、他に右認定を妨げるに足りる証拠がない。そうして、本件訴訟の係属後漸く被告の所在が判明したが、被告は、昭和三二年一一月五日強制退去を命ずる命令に基き前記本国に強制送還されたものであることは、本件訴訟の経過に照らして明白である。
 法例第一六条によれば、離婚は、離婚原因事実の発生当時における夫の本国法によるべきであるから、本件離婚は、被告の本国法であるフイリツピン国の法律によらなければならないが、一九五〇年六月一九日施行のフイリツピン国法第三八六号フイリツピン民法を制定する法律は、第九七条において(一)刑法において定められている妻の姦通及び夫の蓄妾行為(Concubinage)(二)夫婦の一方の他の一方に対する殺人未遂の場合に法定別居(Legal Separation)を求める訴を提起することができると規定するのみで、離婚に関する法規を欠き、外務省アジア局長作成の回答書によれば、フイリツピン国においては、右フイリツピン民法を制定する法律の解釈上同法の施行後において同国は、離婚を禁止したものとされていることを認めることができる。また、右フイリツピン民法を制定する法律第一五条は「家族の権利義務または人の法律上の身分、地位及び能力に関するフイリツピンの法律は、外国にあるフイリツピン人にも適用される。」旨を規定し、同条は、国際私法上のてい触規定でもあり、右所定の各法律関係に関してフイリツピン国は、いわゆる本国法主義を採用したものと解すべきものである。(Javito R.Salonga,Private InternationalLaw 1st edition 1950 p.445)従つて、法例第二九条によるいわゆる反致条項を適用すべき余地がない
 本件離婚の準拠法を決定するにさきだち、試みに諸外国の法制を顧みよう。ドイツ国際私法は、周知のように離婚は、訴提起の当時における夫の本国法に準拠すべきものと定めるが、判決当時において妻のみドイツ国籍を有するとき、妻の離婚の訴については、ドイツの法律を適用すべきものとする。(ドイツ民法施行法第一七条第三項)イギリス法は、婚姻の結合を解消する、ことができるかどうかは、イギリスの道徳上、宗教上、公の秩序上の根本観念にかかわるという理由に基づいて常に法廷地法であるイギリス法が適用されるべきものとする見解を樹立している。(Martin Wolff,Private International Law.2nd edition 1950 p.374)フランス法は離婚につき、夫の本国法主義を採用するとともに他方妻がフランス人である場合にもなおフランス法によるものとする(Niboyet,Traitede droit international Prive Fran□ais Tome V§ 1514,B,b,p.438.et suiv.フランス法の右原則は、一九二二年七月六日のフランス破毀院判例以来樹立されたところである。)このように、離婚禁止国に属する者と離婚を許容する国に属する者との間の離婚につき離婚禁止国の法律を適用する結果を避けるために諸国の法制は周到な・配慮を示すものということができる。
 もとより、国際私法は、外国法規の内容が内国法規の内容と異なることを前提として、各種の連結点を定め、当該渉外法律関係につき適用すべき外国法規を指定する。しかしながら、その適用を命ぜられた外国法規の内容が内国法規、すなわちわが国の私法法規の内容と異なるため、その外国法規を適用した結果が、わが国の私法法規の根本観念に著しく反し、または、わが国民の法律感情ないし道義の根本観念を著しく害するとき、これが法例第三〇条にいわゆる公序良俗の問題として、その外国法規の適用は、排除されなければならない。法例第三〇条は、国際私法の右のような前提に基き例外的に適用されるべきものであるけれども、具体的にいかなる場合が同条の適用を受けるべき場合であるかは、わが国の内国法規の精神を尋ね、また国家の道義に照らして判断されるべきものである。たとえば、これを婚姻について考えるに、重婚または多数婚を許容する外国法規は、重婚を禁止するわが国の法制(民法第七三二条)のもとでは、わが法規の根本観念に著しく反すると同時に国家の道義的見地からしてもこれを認容することができないであろう。また、離婚についてみれば、法例第一六条但書により離婚原因事実が夫の本国法上離婚原因となるとともにわが国の法律によつても離婚の原因となる場合に限り裁判所は、離婚判決を宣告することができるのであり、国際私法上のてい触規定である法例自体が、特殊的に内国法規の重畳的適用を命ずることからもさきに述べたように解釈すべきものであることをうかがい得る。
 ところで、いかなる場合において婚姻の当事者に離婚請求権を付与するかについては、諸外国の法制上いわゆる絶対的離婚原因に限定するものもあり、またわが民法第七七〇条第一項第五号と同じくいわゆる目的主義を採用するものもあり、絶対的離婚原因として列挙する離婚原因の内容についても諸種の相違がある。仮に当該外国法規が絶対的離婚原因として単一、一個の事実たとえば、いわゆる不貞行為のみを規定するに過ぎないものであるとしても、それが法例第一六条により指定を受けた夫の本国法である以上、当該外国法規を適用して判断すべきであろう。しかし、このような場合と、絶対的に離婚の請求を否定する場合とは、同様にみることができない。離婚原因として離婚請求権を付与する場合が数量的に減少して、その極限の場合として絶対的に離婚請求権が否定された場合には、外国法規と内国法規との間に本質的差異があるとみるべきである。
 わが民法第七七〇条は、離婚が、ほんらい許容されるべきものであることを前提とするのみでなく、同条第一項第五号は、いわゆる目的主義を採用して、離婚請求権を付与する場合を拡大し、離婚の自由を広く承認しようとするのであり、他面当事者から絶対的に離婚請求権を剥奪し、永久に離婚の機会を与えないことは、わが国の道義的見地からみて許されるべきことがらではないといわなければならない。すなわち、明文をもつて離婚を禁止または明文を欠く場合において解釈上離婚の禁止が承認されている外国法規を適用する結果、わが国において現実に離婚が行われない結果をみるときは、その外国法規は、法例第三〇条にいわゆるわが国の公序良俗に反するものとしてわが国の裁判所は、これを適用することができないのである。そうして、この場合右の外国法規が排除される結果適用すべき法規の欠缺が生ずる。一般的にいえば、法例第三〇条は、内国の公序良俗に反する外国法規の排除を命ずるだけで、その法規が存在する外国法秩序全体を排除することを命ずる、ものでない。従つて、右外国法規を排除することにより生じた法規の欠缺は、その外国法秩序における他種の規定または、その法秩序全体の精神から類推解釈することにより欠缺の補充がなされるべきものであり、これによる補充ができない場合、またはその補充によつては、法例第三〇条により外国法規を排除した目的が達成されない場合に限り法廷地法である内国法規が適用されるべきである。ところで、離婚を禁止する外国法規を法例第三〇条により排除すべきとぎにおいて、たとえば、当該外国法が離婚に代えて別居の制度を認める場合、その別居をもつて右法規の欠缺を補充することは、法例第三〇条により排除を無意味のものとならしめることは、明らかであり、その他に右欠缺の補充がなされるべき方法はないであろう。従つて離婚の禁止規定である外国法規を排除する場合、結局適用されるべき法規は、法廷地法である内国法規である。
 そうして、離婚につき右のように法例第三〇条を適用し、内国法規を適用した結果離婚の宣告がなされた場合、離婚を禁止する外国が右離婚判決を承認することなく、依然として婚姻が継続するものとみることは、明らかであり、従つて、いわゆる跛行婚が発生するのであるけれども、法例第三〇条が内国における公序良俗を原則的に指定した外国法規に優先せしめるものである限り、右の結果もまた避けえないものとして承認されるべきものである。
 斯く解しない限りドイツ、フランスに於ては法廷地国の国籍のあることにより、イギリス、アメリカに於ては住所(Domicile)があることによつて法廷地国の婚姻法の適用を受け、妻は離婚禁止国の夫と離婚を許されるに拘らず、夫の本国法主義を無制限に適用すれば、自国民である妻をして離婚禁止国の夫との間に終生別居以外に離婚を許し得ないのに、夫の本国法の適用によつて妻であるフイリツピン人からの離婚を許容する国の国籍を有する夫に対する離婚請求は当然許容せざるを得ない(当庁昭和三十一年(タ)第七二号、仝年五月二六日判決、当庁同年(タ)第二四〇号昭和三二年一月二三日判決参照)結果、離婚禁止国の国籍を有するフイリツピン婦人には離婚を認容し得るのに、離婚を許す法廷地国の国籍を有する婦人には離婚を認容し得ないという奇現像を呈するに至るであろう。
 本件についてみるに、フイリツピン国の離婚禁止の法観念は、法例第三〇条によりわが国の公序良俗に反するものであるから、その適用は、排除されるべきであり、その排除の結果生じた法規の欠缺は、フイリツピン国における前記フイリツピン民法を制定する法律をもつて補充すべきものでないから、わが民法に準拠して判断されるべきであり、前記認定事実をこれに照らせば、原告は、同民法第七七○条第一項第二号にいわゆる配偶者である被告から悪意で遺棄されたときにあたるとともに、同条第一項第五号にいわゆる婚姻を継続しがたい重大な事由があるときにあたることは、明らかである
 そうすると、裁判上被告との離婚を求める原告の本訴請求は、その理由があるから、これを認容すべきものとし、訴訟費用は、敗訴の当事者である被告の負担とし、主文のとおり判決する。
 (裁判官 加藤令造 田中宗雄 間中彦次)

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