「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

小坂クリニック今週末の診療時間:6月4日(土)12:00-13:00 / 5日(日)10:00-13:00

2022-06-03 18:19:15 | 日程、行事のお知らせ

こんにちは、小坂クリニックです。

 早いもので、6月に。この月が過ぎると、2022年も折り返しにかかります。
 学校行事も、本格化してくるころです。
 暑くなってきており、熱中症にも十分ご注意ください。マスクは、外せるときははずしてください。

 ちょうど、6月1日に厚労省の会議https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00348.htmlで、小児科医ら中心に『小児における新型コロナウイルス感染症の課題について』と題する意見書が提出されました。
 この趣旨が、医療現場や教育現場に浸透していきますことを、願っています。

 同意見書は、最後に共有します。

 今週末の日程をお伝えいたします。

********今週末の日程**********
6月4日(土) 12:00-13:00
*中央区・消防合同水防訓練に出動するため開始が大幅に遅れます。

6月5日(日) 10:00-13:00

******************

 月島三丁目再開発問題の映画化も、いよいよ、6月4日から本格撮影に入ります。
 クラウドファンディングも実施されています。
 応援、よろしくお願い致します。
 ➝ https://camp-fire.jp/projects/view/590126

 プレス発表:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000102307.html


***************************

<小児科医らの厚労省会議で提出された意見書について>

 意見書全文は8頁におよび長いため、私なりに重要なポイントをまずピックアップし、概略を述べます。
 その後、全文を掲載します。

【意見書の概略】

第1,現在薦められること


1,マスクについて

(1)十分な身体的距離が確保できる場合、マスク着用が不要

・屋内で黙って行うことが想定される教育活動(読書、会話をせず個人で調べたり考えたりする活動等)を行う場合

・休憩時間などにおいて、屋外で過ごす場合


(2)体育の授業、原則不要

・ 地域の感染状況等を踏まえつつ、児童生徒間の距離をなるべく確保する


・ 屋内の場合には、呼気が激しくなるような運動は避ける、こまめに換気する

(3)登下校、マスク着用が不要

・登下校時に会話を控えるよう注意した上で移動する場合

2,行事等

運動会や卒業式のような学校行事、修学旅行、課外活動などは、感染対策を工夫した上で、できるだけ実施する方向で考える。


3,子どもの心の問題

 様々な不定愁訴で苦しんでいる子どもたちの数が明らかに増えている。苦しんでいる子どもたちをサポートする体制をつくることが大切。


第2,今後の課題 9項目

①小児のコロナ診療ができる医療機関を増やすこと

②①のための、財政的な支援も

③行政が抱え込まずに、小児科医と連携するなどして、小児の入院判断をスムーズにする仕組みを。

④養育者が、受診すべきかどうかなやまないように、ツールの周知を。

 ツールとは:ⅰ)子どもの救急オンライン(http://kodomoqq.jp) ⅱ)#8000番

⑤職場・保育所・学校は、事情がある場合を除き、無症状の子どもへの検査を求めないように。

⑥コロナ感染の有無の判断に時間を要することのために、小児救急医療の遅れを生じさせないこと。

⑦これまでの対策の中で、子ども達の時間と経験を犠牲にしており、遊びと学びの機会を取り戻す。

⑧心の問題を抱えた子ども達のサポート体制をつくる。

⑨子ども達に過剰な負担を与えないように、小児に接する人(先生方)が対策をとること(ワクチン、有症状の迅速な検査、体調悪い場合の休職など)、ハイリスク者を守る対策をとること(追加ワクチン、早期診断で抗ウイルス療法実施)。

以上

 

*******意見書 全文2022.6.1********

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000945988.pdf

小児における新型コロナウイルス感染症の課題について

2022 年 6 月 1 日

阿南英明、今村顕史、太田圭洋、岡部信彦*、尾身 茂、釜萢 敏*、舘田一博、中島一敏、
前田秀雄、脇田隆字、岡田賢司*、谷口清州*、多屋馨子*、峯 真人*、森内浩幸*
(*小児科医)

新型コロナウイルス感染症と小児*

 新型コロナウイルス感染症はいわゆる第 5 波までは小児での感染者数は大人に比較する
と少なく重症者も稀であるとされていたが、第 6 波においては感染力の強いオミクロン株
への置き換わり、大人におけるワクチン接種率の増加と感染による免疫保有者(一部不十分
であっても)の増加等から、小児感染者の増加が目立ち、学校教育、学校行事、休園・休校・
学級閉鎖等に伴う保護者を含んだ日常生活への圧迫などが目立った。また、感染者が激増す
ると、軽症者が圧倒的多数とはいえ、熱性けいれん、クループなどの合併症が目立ち始め、
また極めて少数ながら入院患者や、死亡例も出ている(2022 年 5 月 10 日時点の厚労省の
集計で、10 歳未満 6 例、10 代 8 例)。
 発育途上にある小児に対して、過剰な警戒を強いることなく、一方では小児における感染
の拡大を避け、感染した場合でも早期発見し、早期に医療に結び付け重症化をできるだけ防
ぎ、保護者を含め日常生活をできるだけ保つようにすることは時に困難を伴うが、小児の健
やかな発育発達のために我々大人が努力すべきことである。
*ここでいう小児とは、幼児・学童・中学生年齢程度を想定している


◎現在薦められること

1.小児の日常生活でのマスクをどう考えるか

 呼吸器感染症予防としてのマスク着用の有用性は明らかであるが、米国の調査では学校
において教師も生徒も universal masking することでの感染予防効果は 23%、そして低学年
になるほど教師・生徒の universal masking 効果は減衰する(MMWR 2022; 71(10): 384-9)と
ある。そのメリットとマスク着用のデメリットはきちんとその場と、バランスをとって考え
るべきである。2 歳未満や、それ以上の年齢であっても自分でマスクの着脱ができない場合、
マスク着用はむしろ危険となる場合がある。呼吸が苦しくなり顔色が悪くなっても周囲は
気付きにくい。マスクしたままで嘔吐すると誤嚥や窒息の恐れがある。健康な子どもでも運
動の時や炎天下での戸外活動であれば、マスクは熱中症のリスクを著しく増大させる。さら
に、幼児においてはマスク着用で表情の読み取りが学習できなくなる弊害を示す研究報告
もある(Front Psychol 2021; 12: 669432)。
 文科省では、衛生管理マニュアル等において「マスク着用が不要な具体的な場面の例」を
示しており、

【十分な身体的距離が確保できる場合】

◇ 屋内で黙って行うことが想定される教育活動(読書、会話をせず個人で調べたり考えた
りする活動等)を行う場合

◇ 休憩時間などにおいて、屋外で過ごす場合

【体育の授業】

◇ 原則不要
・ 地域の感染状況等を踏まえつつ、児童生徒間の距離をなるべく確保する
・ 屋内の場合には、呼気が激しくなるような運動は避ける、こまめに換気する

【その他】

◇ 登下校時に会話を控えるよう注意した上で移動する場合
等としている。また、これらはマスクの着用を禁止する趣旨ではなく、希望する児童生徒が
マスクを着用することを妨げるものではないことに留意が必要である、

 としている。上記の考え方は従来の我々の考え方と一致するものである。ただし、屋内の
場合には十分な換気が保たれている必要がある。


 また、厚労省から最近出された

〇2歳未満(乳幼児)は、引き続き、マスク着用は奨めない。

○2歳以上は、オミクロン株対策以前の新型コロナウイルス対策の取扱いに戻し、「保育所
等では、個々の発達の状況や体調等を踏まえる必要があることから、他者との身体的距離に
かかわらず、マスク着用を一律には求めない。なお、施設内に感染者が生じている場合など
において、施設管理者等の判断により、可能な範囲で、マスクの着用を求めることは考えら
れる」

としている。上記についても我々の考えと一致するものであり、広く周知されることを求
めるものである。


2.学校教育・休園・休校・学校行事等をどう考えるか

 安易な保育施設・教育施設の閉鎖は子どもの遊びと学びの機会を奪い、子どもの健全な発
育発達を阻害するばかりでなく、学習能力の低下が将来における社会全体の経済損失を起
こ す 恐 れ が あ る と も い わ れ て い る ( 世 界 銀 行 :
https://www.worldbank.org/en/topic/education/publication/the-state-of-the-globaleducation-crisis-a-path-to-recovery?cq_ck=1638565414093)。また、2020 年は前年と比べて
子どもたちの自殺が 100 人増加したが、その傾向は昨年(2021 年)も続いていることにも注
視が必要である。

 運動会や卒業式のような学校行事、修学旅行、課外活動などは単なるセレモニーやレクレ
ーションではなく、子どもたちの健やかな成長・発育にとって極めて重要な教育活動である。
成長の過程で失われた時間や経験は後から取り返すことは出来ず、子どもたちの一生に関
わる負の遺産となるので、感染対策を工夫した上で、できるだけ実施する方向で考えてもら
いたい。

文科省の学校における衛生管理マニュアル等には
子どもたちの健やかな学びの継続を最優先に、地域一斉の臨時休業については慎重な検
討を求めるとともに、オミクロン株の特性等を踏まえ、臨時休業等に関する対応方針を見直
し、あわせて教育活動の継続のため、基本的な感染対策の徹底に加え、感染拡大局面におい
て対策を強化・徹底する

 とある。この考え方は従来の我々の考え方と一致するものである。

 なお、コロナ禍の子どもたちの心の問題がクローズアップされており、様々な不定愁訴で
苦 し ん で い る 子 ど も た ち の 数 が 明 ら か に 増 え て い る
(https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/index.html#3tab)。何よりそう
いう子どもたちが増えないような対応が必要だが、苦しんでいる子どもたちをサポートす
る体制が不十分である現状も変えるべきである。


3.小児の検査、軽症例への対処

 症状の軽い子どもに対して、コロナの検査をしてくるようにと学校、保育所、保護者の職
場などが小児医療機関に要求することが増え、小児医療の現場での検査件数が増えている。
子どもは唾液の自己採取が困難であるため、スワブで鼻腔などから採取することになるが、
子どもは嫌がって体動が激しくなるため補助がなければ確実で安全な採取はできない。こ
のような検査のみを目的とした受診は、小児医療の現場で多大な労力を奪い、時間外に受診
されると小児救急医療を逼迫し、また検査キットを含む医療資源を枯渇させる可能性があ
る。なお、学校や園・所などにおいて、非医療者による小児等への検体採取は推奨されてい
ない。

 このような事態を避けるためには、濃厚接触者調査・クラスター調査・リサーチ調査等公
衆衛生上明確な目的を持っての検査は別として、子どもへの不用意な検査要求を職場や保
育所等が安易に行わないこと、そして子どもの体調不良による保護者欠勤に対する理解を
職場や社会全体に促すことがまず求められる。検査は少なくとも有症状者に限ることを基
本とすべきである。

 健康な子どもには現在抗ウイルス療法の適応もなく、小児医学的には「子どもが元来健康
で、現時点で全身状態として元気であるならば必ずしも一律に検査を受けなくて良い」と考
えるものであり、加えてオミクロン株の特性を踏まえれば、濃厚接触者*を厳格に特定する
ことなく、現実に即した考え方、対策に切り替えるべきである。ただし、小児・教職員等の
大人も含めて症状があれば本人のためにも周囲のためにも、学校や園を休んで自宅療養す
ることが、その他の感染症も含めて感染症対策の基本であることを常に強調すべきである。

*濃厚接触者の特定については、現在以下のようにされている(第 77 回新型コロナ対策
アドバイザリーボード資料)


(4)保育所、幼稚園、小学校等で感染者が発生した場合

○濃厚接触者の特定・行動制限は、保健衛生部局と児童福祉部局等が連携して、自治体ご
とに方針を決定する。

○濃厚接触者となった従事者は、待機期間中においても、一定の条件の下、毎日の検査に
よる陰性確認によって、業務従事を可能とする。

上記のように、濃厚接触者の特定は自治体にその判断が委ねられており、そのこと自体は
尊重すべきであるが、基本方針としては、小児の集団に対しても事業所と同様に、

○感染者と接触があったことのみを理由として、出勤(通学・通園)を含む外出を制限す
る必要はない。

○感染者と接触があった者は、高齢者等との接触や感染リスクの高い行動を控える。

とするのが現実的と考える。


4.小児へのワクチンの考え方

 ワクチンは子どもにおいても重症化の予防に大きな効果が期待できるが、重症化リスク
のある子どもは成人と比べて非常に少なく、親にとって健康な子どもたちへの接種にメリ
ットを感じにくいことは理解できる。5~11 歳へのワクチンにおける感染予防効果について
は 31%と報告されており(MMWR 2022;71(11):422-8)、一定の効果がある反面、これだけ
で流行の阻止に繋がる程の効果ではなく、またどれくらいの期間効果が持続するのかは現
段階で不明である。生後 6 か月から 5 歳未満の子どもへのワクチンについては、米国では
EUA (Emergency Use Authorization; 緊急事態使用許可)において検討が行われている。例
えばモデルナのワクチンの有効性(発症予防効果)は 2~5 歳で 38%、6 か月~2 歳で 44%
で あ り 、 感 染 予 防 効 果 は 現 時 点 で は 分 か っ て い な い
(https://investors.modernatx.com/news/news-details/2022/Moderna-Announces-itsCOVID-19-Vaccine-Phase-23-Study-in-Children-6-Months-to-Under-6-Years-HasSuccessfully-Met-Its-Primary-Endpoint/default.aspx)。生後 6 か月から 5 歳未満におけるフ
ァイザーのワクチンによる初回接種については、2 回接種のみでは十分な効果が得られなか
ったため、3 回目の接種まで含めての検討もなされている。
子どもへのワクチンは、基礎疾患のある患児への重症化予防効果は強く期待できる一方
で、これ単独で流行が阻止出来るだけの感染予防効果はないため、有害事象への心配を拭い
きれない当事者に努力義務を課して接種させるだけの説得力はなく、また不安や恐怖が拭
え切れない本人または保護者の気持ちを持った中での接種は、血管迷走神経反射や機能性
身体症状のような予防接種ストレス関連反応(ISRR)を引き起こす恐れもあるので、大人と
は異なった丁寧な接種、接種場所の提供が必要である。
現在国内外で小児のワクチンに対する効果・安全性に対するデータは集積されつつある。
これらの科学的データをなるべく早く公開し、専門家を含めて接種判断の材料とすべきで
ある。なお、感染が小児ヘ拡大するとワクチン接種希望者の急増は考えられることであり、
小児への接種体制の維持は必要である。


◎これからの小児の医療体制

1.小児医療体制

 小児の医療は、成人医療と異なり診療にも看護にも非常に手間がかかり、他の診療活動に
支障を来してしまうことがある。インフルエンザ流行時も同様であるが、軽症者への診療は
当然行うべきであるが、医療機関にとって非常に多くの労力を必要とすることについて理
解をいただきたい。

 今回の第 6 波の時には、小児医療の現場はコロナを疑っての受診者が多くなった。小児
での外来診療を可能とする小児医療機関は地域差があるものの特に地方都市においては十
分ではなく、数的増加が必要であり、更なる小児医療に協力してくれる医療機関の増加が必
要である。一方では小児の診療に携わる医師・医療機関にとっては、自医療機関外での発熱
外来や一般ワクチン外来担当あるいは集団接種会場への出向による協力等、自医療機関に
おける小児医療外の業務の増加が多いこと、コロナ小児の診療と看護は例え軽症であって
も医療現場に非常に手間がかかること、などが現在の小児医療における問題点となってお
り、業務の整理調整、感染対策や保険診療上の評価や各種措置についての維持及び追加等を
支援することが必要である。

 入退院の判断などは保健所ではなく現場に委ねる方が、コロナだけではなくその他の重
症例への対応が円滑になると思われる。

 小児医療の逼迫を防ぎ、アンダートリアージにより医療へのアクセスが遅れるなどのこ
とを起こさないためには、適切なトリアージが必要である。子どもの救急オンライン
http://kodomo-qq.jp)を市民に再周知し、判断のアルゴリズムを示すことは養育者の受
診判断に有用と考えられる。その上で医学的適応がある、あるいはそのように養育者が考え
ている場合は医療機関が応需するのが、アンダートリアージを最低限にする良い方法と考
える。真のエマージェンシーの場合には検査結果によらず迅速な医学的対応に結び付くこ
とができるように周知することも必要である。トリアージを行う施設は保健所やコロナ検
査を担当する施設などではなく、あくまでも必要な救急対応を適正なスピード感で行うた
めの施設であり、トリアージを行うのは保健所職員などではなく、小児科医であるべきと考
える。

 一方、検査が陽性であっても、子どもが元気であれば自宅で経過をみるだけでよい。元気
な子どもを親から離して入院させると、通常の入院患児よりも看護の負担が大きくなり、何
より子ども自身にとってもストレスが大きくなる。ただし自宅で様子を見るためには、上述
のように養育者が受診の必要性を判断できるようなサポートが必須であり、医療従事者が
自宅療養者の健康観察を行う際のサポートも必要である。


2.小児重症例への備え

 成人と比べて小児は軽症とされ、オミクロン株流行下ではそれ以前の変異株と比べて病
原性が低下していると考えられているが、感染者が激増すると小児感染者も増加し、その結
果として小児の重症例も出現する。これらの症状に対する必要な治療が速やかに行われ、自
宅での急変にも対応できる医療体制の構築が望まれる。また、症状が悪化するリスクが高い
あるいは高くなると思われる小児が、小児科医の管理の下自宅等で療養する際に、病態の変
化など自宅等でも早期にとらえられるように、小児に装着できるパルスオキシメーターの
確保と普及を行うべきである。

 オミクロン株の感染は小児においても成人と同様に以前の変異株より軽症化しているこ
とが報告されている一方で、香港におけるオミクロン系統株 BA.2 の流行で急性脳症 2 例を
含む死亡例が 4 名報告された。わが国においても発生動向調査において急性脳炎脳症の報
告が散見されている。第 6 波においては熱性痙攣の症例も増えていることが小児科の間で
は話題となっているが、一般的に熱性痙攣も急性脳症も欧米と比べて日本を含む東アジア
では多いことから、わが国の小児においてオミクロン株の感染が決して軽視できない可能
性には留意すべきである。軽症であっても、リスクに応じて確実なフォローアップ体制が必
要な所以である。BA.4 および BA.5 の検出も海外を中心に報告されている。感染力は BA.2
より高いとの報告もあり、今後の動向が注目される。

 コロナであるないに関わらず、小児の容態は変わりやすく、小児においては必要な救急受
診が適正なスピード感で行われる必要がある。しかし現状は、発熱等コロナウイルス感染症
を疑う患者についてコロナの検査で陰性が確認されるまでは次の診断・治療へのステップ
に進めず、遅れを生じやすい。またコロナと判明した場合には受け入れる施設がなかなか見
つからないという状況のために、適正なスピードで対応できていないことが多い。現状はコ
ロナであるか否かが診断治療の判断前に重視されがちであるが、医療的適応を重視した速
やかな救急医療の整備対応が小児救急医療のみならず全般に必要である。

 周産期医療においても、胎盤早期剥離や臍帯脱出のような超緊急事態において、救急搬送
と受け入れ先での対応が求められるスピードで行われなかった事例が各地で起こっている。
障壁となっているのは、この場合においてもコロナ検査陰性が確認できないと受け入れら
れないという一部の医療機関が少なからず存在していることも一因である。このような場
合もコロナであるか否かが診断治療の判断前に重視されがちであるので、緊急性を重視し
た取り扱いが可能になるような医療体制が必要である。

 なお、このようなことは小児医療・周産期医療に限ったことではなく医療全般に通じるこ
とであり、コロナ医療が一般医療でも取り扱うことができるようにしていくことも、議論を
すすめていくべきである。


3.他のウイルス感染症に対する注意喚起

コロナ禍により、生活様式が変化したことで、子どもたちの様々な感染症が激減した一方、
2021 年夏には RS ウイルスが季節外れの大流行を起こして小児医療の現場が逼迫する事態
となった。また、現在世界で話題となっている原因不明の小児重症急性肝炎についても、コ
ロナ禍で生活様式が変化したことにより、「感染症に罹ることが激減した子どもの自然免疫
力が低下し、しばらく感染が抑えられた中で感受性児が増えた状況で、アデノウイルス 41
型が流行し、これまでにない強い病原性を示すようになった」という仮説もある。日本でも
アデノウイルス 41 型は胃腸炎の原因として知られており、稀なウイルスではない。現在国
内においてアデノウイルス胃腸炎の流行的発生は報告されていないが、今後の発生動向に
は注意が必要である。


◎現状の問題点と今後の課題

 以上より、健康な子どもたちの未来にわたる心と身体と社会的な健康を守るためには、過
度な感染予防策によって子どもたちの遊びと学びを奪うのではなく、周囲の大人達が適切
に感染対策を実施すると共に、重症化リスクのある人々が対策(適宜ワクチンを追加接種、
重症化リスクのある人が発症した場合は直ちに受診・検査・診断確定した後に抗ウイルス療
法、など)を取ることで対応すべきと考える。

 今なお子どもたちの間で流行は続いており、新たな変異株への置き換わりによって次の
感染再拡大も予想される中、可及的速やかに、多方面にわたる関係者の意見も広く聞きなが
ら、子どものコロナの診療のあり方、さらにはコロナ禍における小児医療全般について、以
下のような論点を中心に、具体的な議論を引き続き深めていくとともに、中長期的な対応の
方策も検討することが望まれる。

① 小児に対応できるコロナ診療・検査医療機関を増やす。そのためには地域での小児医療
機関の連携、これに対する医師会・行政等のサポートが必要である。

② その際、小児では成人よりも診療・看護に多大な労力を必要とすることを考慮し、小児
医療における保険診療上の評価や各種措置の維持及び追加を行う。

③ 発熱等の症状を訴える患者が非常に多い小児医療の現場で、コロナであろうとなかろ
うと容態の変わりやすい小児の診療が迅速かつ適切に行えるようにする必要がある。地
域によっては行政が最終的な入院判断を行う場合があるが、このような地域でも、入院の
判断において、診断した医師等の判断が尊重されるような体制を構築するべきである。こ
の体制においては地域医師会、地域小児科医会等が協力し、小児医療の現場で判断ができ
るようにするべきである。一部自治体、例えば、福岡市においては、入院要否の判断につ
いて、保健所と小児科医との連携を行っているほか、埼玉県では小児科医と県庁とで連携
し急ぐ場合には医師間で入院先の調整もできるようにしている例が参考になる。

④ 養育者の受診判断をサポートするために、子どもの救急オンライン(http://kodomoqq.jp)や#8000番を市民に再周知し、その上で医学的に救急医療としての適応があ
る、あるいはそのように養育者が考えている場合は医療機関が応需する。

⑤ 公衆衛生上必要であるなど特別な目的がある場合を除き、無症状である子どもへの検
査要求を職場や保育所・学校等が行わない。そして子どもの体調不良による保護者欠勤に
対する理解を職場や社会全体に促す。

⑥ 小児医療が迅速かつ適切に行われないことにより小児の死亡に繋がるような事態を避
けるためには、必要な救急受診が適正なスピード感で行われるべきで、コロナ感染の疑い
への対応が過度になり真の小児救急医療に遅れを生じてはならず、小児救急医療機関に
おいては、コロナ感染の有無の確認によって患者の医学的処置に遅れが生じないように
すること。

⑦ コロナとの共生が求められる中で、これまでの感染対策の中には取り戻すことのでき
ない子どもたちの時間と経験を犠牲にするものもあり、子どもの遊びと学びの機会を取
り戻すべく改善すべきである。

⑧ 心の問題を抱えた子どもたちをサポートする体制を整える必要がある。

⑨ 種々の規制を強化することによって子どもたちに過剰な負荷を与えるような感染対策
を続けるのではなく、小児に接する人(学校・幼稚園・保育所の職員、スタッフなど)が
より注意を払うような対策の強化(ワクチン接種、有症状者の迅速な検査、体調の悪い時
の休職など)、ハイリスク者を守る対策(適宜ワクチンを追加接種する、重症化リスクの
ある人が発症したら直ちに受診・検査・診断の後に抗ウイルス療法を実施する等)を取る。

以上

************************
参考: https://www.mhlw.go.jp/content/000942784.pdf



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