子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

薬がでなかった

2007-08-01 03:35:05 | 雑記
発熱で外来を受診されたお子さんで、咳鼻水などの症状も軽く全身状態も良い場合に、「今の状態で薬の必要はないからゆっくり休んで様子見て下さい」と言って薬を処方しないことがあります。

この場合に、せっかく病院に来たのに薬もでなかった(だしてくれなかった)と思う保護者の方も少なくないのではないかと思うことがあります。
薬がないと不安(不満?)かもしれませんが、その後の経過によっては抗生剤などが必要になることもあるのですが、そのまま薬を必要とせずに済むことがほとんどだと思います。

不必要な薬や医療行為を出来るだけ行わず適切な対応をするためには、少し遠回りに感じるかもしれませんが様子(経過)をみるということが大切で、急いで結果ばかりを求めると不必要な薬や医療行為も多くなり、結局は経過も変わらないということも少なくないと思います。

一方で薬を出さないということが、医療側の立場からみるとどういうことなのも少し考えてみて下さい。

とりあえず何か薬をだしておく方が医療側からすると楽な選択です。
その後の経過で症状が改善しない場合にも、だしておいた薬が効かなかったという言い訳ができるし、不必要な薬でも処方さえすれば多少なりともそのことで収益が発生します。
薬をださないで様子をみてもらうことを選択することは、自分の診断にある程度自信がなければできないし、経営的(利益を求める)思惑に影響されない診療姿勢がなければできないことだと思います。
また多くの場合、薬をだすということで診療を終わらす事のほうが手っ取り早く、薬をださないという時には薬が必要ないということの説明に多くの時間がかかり労力を要します。

「病院にかかる=薬をもらう」ではなく「病院にかかる=医師の診察を受ける」というように、診察して患者さんの状態を判断する行為が診療(医師の仕事)の主体だということを心に留めておいて下さい。