リビアの戦争、カダフィ軍の大反攻

2011-03-31 20:02:08 | 軍事ネタ

↑ややてきとうな、各拠点の位置関係図

ここ数日、リビアの戦争では大きな動きがあった。
先週、反政府派本拠地であるベンガジが攻撃に晒されていた反政府軍は包囲網を食い破る反撃に出た。
ベンガジを攻撃する為の拠点となっていたアジュダビアの都市からカダフィ軍を追い出し、
さらに西へ西へとカダフィ軍をカダフィ派本拠地のトリポリ方面へと追いやったのだ。

この時の反政府軍の進出速度はなかなかのものであり、
3月27日には1日に200km以上も進出した。
カダフィ軍は重火器を置き、戦いもせずに西へと一目散に撤退していった。

反政府軍はこのカダフィ軍の劇的な敗走により勝利は目前、
大進撃により士気は高まっていると喧伝した。


しかし28日、後退していったカダフィ軍は重要拠点シルテにて再集結した。
シルテは西部の拠点であるトリポリ、ミスラタなどの都市に通じる拠点であり、
ここを突破しなければ本拠地トリポリを攻撃できないし、
またシルテはカダフィ大佐の出身地でもある。

しかしシルテにて再集結したカダフィ軍は防衛線を引き、
しばしの防衛戦闘を行い西部からの増援を待った後、
反政府軍に対して東部へ反攻に出た。

この攻撃により30日の昨夜、シルテ目前まで展開していた反政府軍部隊は敗退を喫し、
また立て続けにラスラノフ・ブレガと両都市が奪還されてしまった。
これによりカダフィ軍は東部の石油地帯を取り戻した。

これは第二次世界大戦のリビア戦線でドイツ軍のロンメル将軍が、
また独ソ戦でもソ連軍が用いた、"機動防御"という戦術である。


リビア軍に配備されていた、ロシア製車載ロケットBM-21「グラート」

先週のカダフィ軍の劇的な撤退同様、反政府軍は1日で200km近くも押し戻された。
これにはいくらかの要因があったと思われる。

まず先週のカダフィ軍の劇的な撤退は、反政府軍が宣伝したような大進撃によるものなどではなく、
自軍兵力を集中させ反政府軍を散らばらせ補給線を伸びきらせる為の"戦術的後退"であったようだ。
これによりシルテの拠点にて一気に力を蓄えて反攻に出ただけである。

またその進出速度は統制の取れていない反政府軍を散らばらせ、
進出の速い連中と遅れて追従する人々という図式を創りだした。
この状態で尖峰の部隊を叩いて反政府軍を撤退させれば、統制のとれていない連中なのだから、
後続の人々は前方から敗走してくる友軍勢力を見てパニック状態に陥り、釣られて逃げ出すといった現象があったようだ。
こうなると反撃なんてしようもないので、カダフィ軍が進出しただけ反政府軍は後退することになる。

このような状態になったのは、反政府軍の内容が職業軍人で構成されたプロの軍隊などではなく、
ほとんどは銃を持っただけで訓練も受けておらず統制もない素人集団だったことが大きく作用しているだろう。
各国の記者のインタビューによれば、反政府軍の素人集団の大部分は失業者たちであり、
この者たちは軍人の上官に敬語も使わなければ、命令に従わず身勝手な行動をすることもあり、
またむやみに銃を空などに向けて発砲しまくり無駄に弾丸を消費しているというような有様だったらしい。
ようするに烏合の衆であった。


反政府軍は今回の大敗退を、「大進出により補給線が続かなかった為」としている。
しかしこれの真実味はあまり感じられないだろう。
なにせカダフィ軍はほとんど戦闘もせずに後退したので、戦闘による消耗はあまりなかったし、
第一先週の反政府軍の宣伝が本当なら、カダフィ軍は大量の重火器類や弾薬を捨てて慌てて逃げ出したはずである。
ならばそれらの武器が鹵獲できただろうし。

実際のところ、反政府軍は上記の通り大半は素人の烏合の衆であったので、統制もなく戦闘行動なんてままらない、
という有様が広まれば反政府派全体の士気に関わると判断したと思われる。
また補給不足を主張すればNATOなどからの物資供与も期待できるかもしれない。
補給切れというのは体の良い敗走の口実だったに違いない。

しかし重火器類の鹵獲兵器を上手く扱えないのは真実の部分もあるようで、
なにせNATOが供与したミサイルなどの兵器も上手く運用できないといった有様が記者により報告されている。


テクニカルと乗用車で移動する反政府軍

今回のカダフィ軍の大反攻に対して、NATO軍は限定的な空爆を行ったが、十分な打撃を与えられずにいる。
カダフィ軍は緒戦からの戦訓で、今回の反攻作戦には戦車などの装甲車類を用いていない。
民生用トラックを武装化した"テクニカル"を主力に用いた反撃であり、
つまり反政府軍の連中と見た目上はほとんど変わらない姿でシルテから出てきたのだ。
これはNATO軍に敵味方を誤認させ、空爆の能率を落とす狙いがあると思われる。

カダフィ軍は空爆のターゲットにならないように、歩兵戦を挑むことを学んだ。
そしてこれは現在のところ、大きな効果を挙げたようだ。

最新の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2011-03-31 23:22:19
地図がいいね
返信する
Unknown (Unknown)
2011-04-01 05:51:49
こういう軍事情報ってどこで仕入れるの?
返信する
Unknown (TM)
2011-04-01 11:08:49
素人と軍人の差は大きいですね。ムリダナ
返信する
Unknown (ゆっきぃ)
2011-04-01 21:15:46
>>地図がいいねのUnknown
あればわかりやすいよね。

>>こういう軍事情報ってのUnknown
メディアの記事とかが大部分だよ。
各地点の目撃情報などが挙げられるから。
どの街が制圧されたのか、攻撃を受けたのかはだいたいわかる。

>>TM
大きな違いは、個人能力よりも、
集団で統制して動けるかどうかだよね。
訓練を受けていないと厳しい。
返信する
Unknown (Unknown)
2011-04-02 00:31:01
バラバラで戦っても個が強ければ勝てるのは
命が無限にあるゲームだけだな
死んだらそれまでの現実で無茶なんてできねぇ
返信する
Unknown (ゆっきぃ)
2011-04-02 22:52:45
そうだね。
まあ現実にせよゲームにせよ
統制のとれた集団に対しては個人で攻撃しても
まったく歯がたたないもんさ。
返信する
Unknown (Unknown)
2011-04-03 00:26:21
これからどうなるんだろう。
カダフィは国際的な支持を完全に失ってるけど
今の反政府軍では航空支援があっても押し切れなさそうだし。
やはり第三国が介入するまで終わらないのかな。
そしてまた歴史は繰り返されるのか。
返信する
Unknown (ゆっきぃ)
2011-04-03 13:19:30
かといって第三国の反政府側での介入はこれ以上なさそうな気はするよね
カダフィ大佐勝利に終わる気がするよ
返信する
ケミカル・インベンター (王様)
2014-10-10 10:37:17
ケミカル・インベンターは、公開日未定
返信する
ケミカル・インベンター (王様)
2021-05-01 07:37:17
アメリカ合衆国西部のネバダ州南部にラスベガスのケミカル・インベンター
このミサイルラスベガス・ビッグマグナムをリビアのカダフィ大佐を倒してやる
返信する

コメントを投稿