こっちゃんと映画をみまちょ♪

レビューと呼ぶほど中身なし。しかし中身が無いのも中身のウチよのぅ。・・・なんちって。

ブロークン・フラワーズ (2005)

2006年05月07日 | いかすMovie

こっちゃんポイント ★★★★

鑑賞環境  映画館
上映時間 106分
製作国 アメリカ
公開情報 劇場公開
(キネティック=東京テアトル)
初公開年月 2006/04/29
ジャンル ドラマ/コメディ
映倫 PG-12

恋人に愛想を尽かされ去られてしまったドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)のもとに、一通のピンクの手紙が届いた。封筒の中にはピンクの便せん。そして赤い字で「あなたと別れて20年。息子は19歳。あなたの子です」と書かれていた!差出人の名はナシ。お節介な隣人ウィンストン(ジェフリー・ライト)の手はずで、かつてのモテ男、ドンはピンクの手紙の手がかりを求めて旅に出ることに。果たしてドンの息子は実在するのか。彼は当時付き合っていた恋人たちを訪ねていく。

 

(goo映画より抜粋)

オホン。 ここで一句。

ジム・ジャームッシュ 嗚呼ジム・ジャームッシュ ジャームッシュ(詠み人 こちゃ麻呂)

それにしても、なんともまぁ。
ジム・ジャームッシュの映画を観るたび”妙な満足感”に満たされ、まんまと「いい映画を観たなぁ」などという気分にさせられてしまうのです。

かといってこの作品を始め、彼の作品の全てについて「奥深い部分までバッチリ理解したもんね!」と胸を張って言えるほど、この映画のお洒落で粋なセンスを完全に理解してもいないのですが、それでも理屈抜きで魂が引き寄せられるほどの「何か」というものに、やはり今回も圧倒されてしまいました。

そうです!いつも”彼”の作品にはその「何か」を感じるんですね。

今回もまたかつての名作と同じほどの満足感をこの作品で味わい、またそんな気分をお土産に自宅まで帰ることができました。素敵です、ジム・ジャームッシュさま。

しかし・・・・この映画をどう語って良いものか。

ボキャブラリーに乏しいこっちゃんにとって、この映画の感想を書くというのは 中々ハードでもあるのですが、今回も出来るだけ頑張って行ってみましょう。

あのね、あのね....お話としては、これまた しょーもない類のものでして。(笑)

かつてのプレイボーイで今日に至るまで女性には何の不自由もしなかった「特捜刑事マイアミ・バイス」のドン・ジョンソンと一字違いの男・・・それがビル・マーレイ演じるドン・ジョンストンです。

初対面の人に会うたび「マジでドン・ジョンソン?」と聞かれ、「違う。” T ”が入る。ジョンストンだ。」とイチイチ説明しなければならないチョット面倒な名前の持ち主。
この映画「ブロークン・フラワーズ」は、そんな今や”完全中年”の男が恋人のシェリー(ジュリー・デルピー)にフラれるところから物語はスタートします。

彼女にフラれたその日、彼の自宅の郵便受けには一通のピンクの手紙が届くのでした。
その中には衝撃の(と言っても当の本人はいたって覚めまくってるのですが)事実が書き綴られているではないですか!

その内容は「あなたと別れて20年。息子は19歳。あなたの子です....」というもの。

ぬぁにっ!自分の知らないところで自分の息子が生まれ、成長していただとぉ?

普通の男ならその場で腰を抜かすか、はたまた ひたすら動揺を隠しつつ その後無理にでも開き直るであろうそんな話を聞いても、大して驚くでもなし、喜ぶでもなし。

ただ、心当たりは大いにあるので否定はしない。(笑)

今さら、突然降って沸いたような”真実”に直面しながら、まったく無表情で通すビル・マーレイがとにかくオッカシくて笑わせます。

その反面、隣人の親友:ウインストンを演じるジェフリー・ライトの熱いこと、熱いこと。(笑)
他人のことにココまで介入し、そして全面的にバックアップするこの姿勢はアッパレでございます。

ただ・・・・こんな隣人いたら完全にウザい。(笑)こっちゃん家の近所には、この人要りません。

インターネットに取り憑かれ気味の隣人ウィンストンは、まずドンに過去付き合った女性のリストを書かせ、それをご自分のPCで徹底調査。なんとわずか二日間でそのリストの現住所、そして一人の死亡とお墓のある場所まで調べ上げるという凄さを見せ付けます。

何しろドンにその”調査報告”を告げるときには航空機のチケット、現地でのレンタカーまで手配済みですからね。これで「あとはオマエが行け」と言う。
これでは、ハナからこの件に踏み込むことにノリ気ではなかったドン自身も渋々腰を上げざるを得ません。

さぁて、息子を産んだ女は見つかるのか?そしてその息子本人に会えるのか?というのが話としては非常に気になるところ。
しかし、ジム・ジャームッシュ作品において、実はそんなトコが最大の見せ場などであるわけもなく、ラストは結局「おいおい」と言いたくなるような代物だったりします。

そのラスト。
エンドクレジット直前のあのビル・マーレイの「へ?」という顔こそが一番の見世物ではなかったのか?と思えるくらいですからね。

しかしまぁ、突然届いたピンクの手紙一通のおかげで、彼は思いもかけず”自分のカノジョ歴”と向き合うことになる この話。

今さら20年も前の恋人に会ったところで、「何がどうなる」というモノでもなく、会いに行く先々では、それなりに歳をとった”彼女”たちが当然のごとく現在の生活を営んでいるわけで、そんなところに昔付き合ってた野郎が突然、「やぁ」などと訪れたとしても、もはや入り込む余地などドコにもある訳ナイんだよ というところが、なんともまぁ哀愁なカンジに繋がって行きます。

さらに、行く先々で出会う”過去の女性”はまた何ともビミョーなツボを押してくれる女優さんたちばかり。

露出癖の娘をもつ母親のシャロン・ストーン。大きなお家に住み優しいダンナを持つフランセス・コンロイ。動物と対話するアニマル・セラピストのジェシカ・ラングとその受付係のクロエ・セヴィニー

そして・・・

こんなん なっちまったティルダ・スウィントン。↑(笑)

これには、ひっくらコケましたよ。

そう言えば、この女性のもとを訪ねるドン・ジョンストンは、必ずピンクの花束を持って彼女たちのところへ足を運ぶわけですが、このティルダのとこにだけは”その辺で摘んだ花”を持って行きましたね。他の女性には買った花束だったのに、このあたりの微妙なサジ加減がまた可笑しくてね。妙にツボにきてしまいました。

さすがジム・ジャームッシュですねぇ。細かいネタにまで魂を注ぎ込みます。ほんと、インディーズの王様ですよアナタは。他にもクスッときちゃう仕草や やり取りがたっぷりと仕込まれていたりして、たぶんこっちゃんはズーット、ニヤニヤしながらこの映画を観ていたのだと思います。

この映画「ブロークン・フラワーズ」はジム・ジャームッシュ・ファンならたまらないでしょうね。
そんな方は、ぜひ遠慮せず 大いに仰け反っちゃって下さい。

さて、結局この映画「ブロークン・フラワーズ」を観て思うのは・・・・何ンでしょうね?( ̄∀ ̄*)

あれ?またしてもこんなカンジの感想です。(笑) 結局、表現できてましぇん。

例えば、この映画を「息子探しのミステリー」として観るなら、その結末に「え?」って思うことになっちゃいそうですし、かと言って、深い深ぁ~い人生の教訓を叩き込むような重々しいノリでもないんですよ。

ほんと、「しょーもない」話だったりします。

でも、この映画の主人公ドンが言ってましたね。
「過去はもう終わってしまったこと。未来はこれからどうにでもなる。だから大切なのは現在だ。」と。
(正確ではありませんが、確かこんなニュアンスでしたね)

結局、「今のあなたの周りの人を大切にしなさい。」ということですよね。

”専門分野は女性”だなんていつまでも言ってる方がバカなんですよってことでしょ。
いい歳こいてこんなコトを言ってる男は、やっぱり最後に痛い目に遭っちゃうわけで。

彼のこの言葉は、結局この映画のふりだしに戻り、その時の彼自身に突き刺さったのでは無いでしょうか?

ネタバレ・・・だと思う(ドラッグ反転で読めます)ここから>>差出人も分からないピンクの手紙。ピンクが鍵になったこのミステリーの旅に出る。で、結局 差出人も見つからなければ息子の顔さえも分からぬまま・・・。

やはりこの茶番めいた謎はドンをフッたあの女性”シェリー”によって仕組まれた”当てつけ”だったと思う方が自然ですよね。「今までの自分をもう一度良く見てみろ!」と。
「昔のプレイボーイがナンボのもんじゃ!」と。
<<ここまでネタバレ。

・・・違いますかね?(深読みしすぎ?)

とまぁ、こんなことを振り返っているうちに、不思議とまた観たくなっちゃう映画です。
これはかつてのジム作品どれにも言えることですね。深読みする楽しみが至る所に仕込まれてマスからね。

ドンパチがメインのド派手なアクション映画でもなければ、抱腹絶倒のギャグやコメディでもないこの映画ですが、そんな映画よりもずっと味わい深く、そしてじわじわと後から後から愛しく思えてくる不思議な映画ではあります。

 

《2006.08.17記事一部改訂》

【作品】ブロークン・フラワーズ