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「ルージュの手紙」映画評 ~ フランス映画祭2017

2017-07-01 | フランス映画

団長として登場したカトリーヌ・ドヌーブの舞台挨拶の姿は、優雅とか華麗という雰囲気をスルーした、貫禄ある貴婦人という雰囲気を漂わせていた。

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あらすじ(映画.comより引用)

フランスを代表する2大女優カトリーヌ・ドヌーブとカトリーヌ・フロ、初の共演作。

パリ郊外に住むクレールのもとに、30年間姿を消していた血のつながらない母・ベアトリスから「重要で急を要する知らせがあるので会いたい」との電話が入る。

ベアトリスに捨てられたことで、父は自殺をしてしまった。今でもクレールはベアトリスを許してはいなかった。

真面目すぎるクレールと人生を謳歌するベアトリス。性格が正反対の2人が、互いを受け入れ、ベアトリスの過去の秘密が明らかになることにより、失われた30年という長い年月が埋まっていく。

ベアトリス役をドヌーブ、クレール役をフロがそれぞれ演じる。監督は「ヴィオレット ある作家の肖像」「セラフィーヌの庭」のマルタン・プロボ。


以下、映画評

今回のカトリーヌ・ドヌーブの役(ベアトリス)は、蓮っ葉な女性の役。酸いも甘いも噛み分けた貫禄ある姉御という雰囲気を漂わせながら自然体で演じているような感じがした。たぶん、現実のカトリーヌ・ドヌーブから、優雅さを削ぎ取れば、ベアトリスが誕生する。だから、演技と思えないのだが、それこそが大女優の熟練の技だろう。

この手の雰囲気の中年女性は(僕の経験上から)富裕層に多い。経済的には満たされてはいるが、人生が今一つ満たされていない女性。満たされないから、2か月に1度は海外旅行へ行く。ドバイ、ナパバレー、ブルキナファソ、モーレン湖、、、メジャーな地からマイナーな地までを彼女は彷徨っている。それでも満たされない。賞味期限は40日程度、、と話していた。流石に、そんな無駄使い止めたら、、など口が裂けても言えない。

僕は仕事柄、そのような女性を多く見てきた。現在も見ている。彼女たちは、金融マンに対して最初は手厳しい。かなりの上から目線。手厳しい。ところが、ある時点で相手を認めると、段々と情の深さを見せていく。カトリーヌ・ドヌーブを観ながら、そんな現実的な記憶が蘇ってきた。

 

ところが、この映画の蓮っ葉な女は、経済的にも満たされていない。ハチャメチャな生き方をしてきた。その彼女が癌になった、、という物語である。

この蓮っ葉な女が求めているものは、孤独の先に見えている死に対する漠然とした不安や恐怖ではない。愛に飢えているのは確かだが、今一つ満たされていない現実への充足感のように思える。

それが何であるか、彼女はその正体を掴めない。

この映画はそこを映し出していく(探し出そうとしている)のだが、、、でも、主題は、もう一人の主人公カトリーヌ・フロの地味な生き様である。彼女を中心に、物語は展開していく。このカトリーヌ・フロという女優は美しく見えたり、見えなかったり、、、存在感があるような、ないような女優である。

だから、不器用そうな人生でありながら、そうでもないかもしれない、、、と思わせる。

二人のバランスは悪いようで悪くない。噛み合うような感じもするが、完全には、、、、どうだろうか?

カトリーヌ・ドヌーブ演ずる蓮っ葉な女の存在は、助産婦役のカトリーヌ・フロの人生にとって、何らかの意味を放射していくのだが、、、。

 

人は中高年になり、老人への道を歩む。その過程で、段々と孤独を覚え、体も衰えていく。或いは病という爆弾を突然落とされる。すると、心も次第に過去の記憶の上に依存していくようになる。そして、その記憶を交換できる誰かを探し求め、その誰かと時を生きようとする。

共通の愛する存在の記憶を拠り所に、死者を仲介して、関係を修復もできる。それが人間の弱さであり強さかもしれない。

 

人は、外に充足感を求めても満たされないものだ。だから、残された時間を過去の記憶を共有できる人間と過ごすことこそ、最善の選択と判断するのであれば、最良の選択のような気がしてならない。この映画をみながら、そのことを強く感じた。

では、この映画はそれを描いたのだろうか?

そうであれば、この映画の結末は、、、どう判断すれば良いのだろうか。もっと深い感じがする。結末で哲学してしまう。見事である。

かなりの佳作だと思う。劇場公開が12月からのようだ。邦題が「ルージュの手紙」。原題「Midwife」(助産婦)でも良かったけどな、、。

お奨め! 評価:☆☆☆☆

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