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無罪

2013-01-15 08:06:03 | Weblog
想像するのも難しいが、少し考えてみていただきたい。あなたは独裁政権によって、あらぬ罪を着せられ、死刑判決をうけた。

重い病にも苦しんでいる。監禁先の病院を突然、外国人が訪れて言う。「ここに、あなたを死刑にするなという趣旨で、世界中から集めた署名があります」。地獄に垂らされた糸を見る思いになるだろうか。

いずれにせよ冷静ではいられないはずだ、反骨の哲学者・鶴見俊輔さん(90)が言っている。「もし私だったら、サンキュー、サンキューぐらいが関の山でしょう」。

だが、その無実の死刑囚は違った。彼は思わぬ訪問者に驚きつつも片言の英語でこう語ったという。「あなたたちの運動は、私を助けることはできないだろう。しかし私は、あなたたちの運動を助けるために、署名に参加する」。

鶴見さんが1970年代、独裁政権下の韓国を訪れた時に、体験した話だ。どんなに絶望的な状況でも、冷静に、こびずへつらわず、礼儀と相手を思いやる心を忘れない。この死刑囚こそ、韓国民主化運動を象徴する抵抗詩人・金芝河(キムジハ)さん(71)であった。

その詩人が死刑宣告から39年ぶりに、かつて自分を弾圧した朴正熙(パク・チョンヒ)大統領の娘、朴槿恵(パククネ)さんが新大統領に選ばれた直後の無罪判決。恩讐から和解へ、時代の針が進んだのだろう。