扇風機

冬に扇風機が売れているという記事があった。エアコンと併用する節電策。タネを明かされ、感心した。

上に昇る暖気を扇風機で循環させる。効率良く部屋が暖まるから、設定温度は下げられる。扇風機分を差し引いても、暖房費は節約できる。扇風機は冷房器具であり、冬は無用の長物。

そんな思い込みがひっくり返った。営業マンが二言目にする「北極圏で冷蔵庫を売る話」に似ている。物を冷やす製品と宣伝しても、商売にならぬ。物を「凍らせない製品」として売り出せば、住民は飛びつく。

大事なのは柔軟な発想、もっとも、エアコンも扇風機も、暮らしに根付いて久しい。二つを使った効率暖房が注目され、にわかに冬の扇風機商戦まで出現したのは、節電の大合唱が起きたから。それに火をつけたのは、忌わしい原発事故である。

不測の事態が、新しい暮らしの知恵を根付かせる。「窮すれば通ず」。ピンチが良作を生む。冬の扇風機から、この教訓も学びたい。節電に限らず、諸事多難な暮らしである。

やがて道は開ける。無理にでもそう言い聞かせて、年を越したいと思う。