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忘れられない

2008-10-30 07:21:32 | Weblog
忘れたくても忘れられない、いや、忘れてはいけない記憶が人にはある。農民詩人として知られる井上俊夫さんにとっては、先の大戦の記憶がそれに当たる。

「もしも私が蛇に生まれていたら」と題した作品がある。蛇だったら兵隊にならなくてすんだ。

現実には20歳から24歳にかけて、中国で従軍した。<えらいことになったぞ、誰もこの場から逃げることは出来ないんだ。おれも人殺しをやらねばならないのだ>と自分に言い聞かせたが、罪悪感まではなかった(「80歳の戦争論」から)。

この体験を含め、戦争の実相を語り継ぐことが、戦後の井上さんの使命になっていたと推察する。

「戦死させてもらえる顔」では、戦死するのは<権力者を批判したり/それと闘ったりする術など全然知らない/素直で従順な若者と/相場が決まっているのだ>とつづっている。

いつの時代でも、どこの国においても言えそうである。過日、86歳で亡くなった。忘れてはいけない記憶は活字で十分に残してある。