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レジオネラ属菌の検査

2012-05-07 09:00:00 | 技術情報 水質分析

皆さんこんにちは、記事作成担当の櫻内です。今回はお風呂や冷却塔の水質検査項目の一つであるレジオネラ属菌の検査方法についてご紹介させていただきます。
レジオネラ属菌は、レジオネラ肺炎を主としたレジオネラ症の感染源となる病原菌で、重篤になると肝不全や多臓器不全を引き起こし死亡する場合もあります。過去にも何度か集団感染を引き起こし、数百名規模の感染者を出した事例もあります。レジオネラ属菌は、人から人への感染はしませんが、主にレジオネラ属菌に汚染されたエアロゾル(霧状の液体)を吸入することによって感染します。特に、浴場施設、冷却塔、加湿器等のエアロゾルを発生しやすい設備が感染源となる恐れがあり、注意が必要になっています。
レジオネラ属菌の感染を防ぐために、浴場施設や冷却塔設備の管理者は、点検や清掃などの適切な維持管理が求められます。そして、レジオネラ症の感染を防ぎ、適切な処置が取られているかを確認するために、定期的なレジオネラ属菌の検査を行う必要があります。レジオネラ属菌の検査方法はいくつかありますが、今回は当社で行っている冷却遠心濃縮法のご紹介をしていきます。

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(採水用滅菌瓶)
まずは、検査試料の採水についてです。レジオネラ属菌の採取用の容器は専用の容器を使用します。容器自体が滅菌されており、中に水中の塩素を抜く薬品が入っています。レジオネラ属菌は生物であるため、時間がたてば経つほど採取時に比べ数の増減が生じてしまうので、採水後は出来る限り、現場の状態を維持したまま検査にかけられるようにしています。

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(冷却遠心用容器)
レジオネラ属菌は100mlあたりの個数(CFU:Colony Forming Unitのことで、培地で培養した菌が作るコロニー(集団)の数を意味します。)で結果を求めます。100mlすべてをろ過する方法もありますが、この方法は菌数が多くなると計数不可になる場合があります。そこで、冷却遠心器で濃縮し、その一部を培地に塗りこみ、最後に100ml中の細菌数(CFU/100ml)になるように計算で求めます。

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(冷却遠心器)
冷却遠心器による遠心濃縮は高速で回転させる為、対角線の2本は同じ重さになるよう事前にバランスを調節します。遠心力により、レジオネラ属菌を含む浮遊物質が遠心管の壁に張り付きます。これを洗い出し濃縮液を作ります。

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(サンプルの濃縮液+緩衝液)
 サンプルの濃縮液を一定量、滅菌済みのネジ口試験管に移します。この時点で、濃縮液中にはレジオネラ属菌以外の雑菌もいる可能性があります。そこで、酸性に強いレジオネラ属菌の特性を生かし、緩衝液(酸性に調製された液)を加え、雑菌の数を減らします。

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(WYO-α寒天培地)
これは、レジオネラ属菌の検査に使う培地、WYO-α寒天培地です。この培地を使って、目に見えないレジオネラ属菌を目に見える状態(コロニーを形成)にします。

 
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(サンプルの培地塗りこみ)
緩衝液を加えたサンプルをWYO-α寒天培地に塗りこみます。この時あまり力を入れすぎると培地が崩れてしまうので慎重に行います。

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(培養機器(インキュベータ))
サンプルを塗りこんだ培地は、温度を一定に保つことのできる機器(インキュベータ)に入れ培養を行います。培養中もレジオネラ属菌の有無を確認しながら、必要に応じて、確認試験や再試験などを行います。

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(レジオネラ属菌と思われるコロニーを確認)
培養後、培地にレジオネラ属菌と思われるコロニーが見られれば、それがレジオネラ属菌か確認する試験を行います。写真のような灰色湿潤のコロニーがレジオネラ属菌と思われるコロニーです。このようなコロニーが見られると、WYO-α寒天培地とは別の培地を用いるなどの操作を追加し、本当にレジオネラ属菌かどうかの判断をするための確認試験に移ります。

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(生育したコロニーの計数)
確認試験でレジオネラ属菌であると判断されれば、レジオネラ属菌の数を確認し、最終的な検出、不検出の判断を行い、検出時にはさらに数を求めます。結果は濃縮の関係から、計数されたコロニーの10倍となります。
写真では6個のレジオネラ属菌のコロニーが確認され、結果は60CFU/100ml(試料100ml中にレジオネラ属菌が60個検出)となります。

レジオネラ属菌は、人に感染する病原菌であるため、検査を行う際には、検査員自身が感染しないように特に注意を払っています。例えば、サンプルを取扱う際には、サンプルを飛散させないように注意を払い、検査に使用した器具は、レジオネラ属菌に汚染された可能性があるため、滅菌処理(121℃で15分間の加熱処理)を行い、レジオネラ属菌を完全に殺菌します。レジオネラ属菌の特徴を良く理解している検査員だからこそ、危険な病原菌であっても取扱うことが可能で、検査の結果も確実に出すことができるのです。

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