内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

法政・ストラスブール合同ゼミについてー自分および自文化理解の方法としての異文化理解の実践

2019-02-07 23:59:59 | 哲学

 昨日今日と、法政大学の哲学科の学生十九名とストラスブール大学日本学科修士の学生十三名(+法政大学からの留学生一人)による年に一度の合同ゼミがあった。私はそのストラスブール側の責任者として、法政大側の責任者の安孫子先生とともにプログラムの司会進行役を務めた。この合同ゼミを担当して今年が五回目になる。
 昨日は、午前と午後に分けて、双方の学生たちが前期をかけて準備してきたラフカディオ・ハーンの日本理解と異文化理解の問題を巡ってのプレゼンテーションを交互にすべて日本語で行い、各プレゼン後に、若干の質疑応答を行った。それだけでかなりの時間がかかってしまい、全発表終了後のグループ・ディスカッションのためにはほとんど時間が取れなかったのは大変遺憾であった。
 その主な原因は、ストラスブール側の三つの発表が長かったことにあり、これは半年間指導してきた私のミスであった。それぞれに面白いテーマを選び内容的にも充実していたので、どのグループにもそのまま発表させたのだが、コンパクトに絞り込む最終作業を課すべきであった。これは来年へ向けての反省事項である。
 積極的に評価できる点としては、前回から導入した予備ディスカッションの成果である。月一回のペースで計四回、双方の学生たちにグループごとにインターネットを使って自分たちのテーマについて予め議論することを授業外の課題として課した。この予備ディスカッションのおかげで、合同ゼミ当日の席ではすでにお互いがある程度知り合っているので、自己紹介や挨拶抜きにいきなりプレゼンに入ることができ、しかも相手の発表内容を事前にある程度把握することができているというメリットがある。
 ただ、実際には、テレビ会議をするために十分な接続環境が得られず、接続が安定せず、しばしば話し合いが中断するという技術的問題がどのグループにも毎回のようにあったとの報告を受けている。大学の Wi-Fi 環境が不安定なのがその主な原因で、自宅の有線接続を使って問題を解決できたグループもあったが、双方に十分な環境を恒常的に確保することはできなかった。これは来年に残された技術的課題である。
 合同ゼミ後は、参加者全員で宿泊施設に移動し、そこで夕食、その後最終グループ・ディスカッションを三十分ほど行い、最後は、恒例のお楽しみ懇親会。この席ではアルコールも入り、毎回大いに盛り上がる。前回から導入した予備ディスカッションがここでもその効果を発揮し、日仏の学生同士仲良く話し合ったり、カード・ゲームを楽しんだりしていた。日本学科の学生たちは、普段教室では見せない弾けるような笑顔を見せる。それを見ているのは毎回とても楽しい。
 今日は、午後に日本学科の教員による日本語での講演があった。講演のための事前学習として、法政側の一グループが講演者によって予め与えられていた課題に答えるプレゼンを行い、それに対する応答という形で講演は行われた。ストラスブール側の学生たちも出席しており、テーマが日本語の歴史と特異性についてだったこともあり、もう少し時間があれば、面白い議論になりそうなところで時間切れとなってしまい、これもまた残念であった。
 プログラム相互がよりバランスの取れた有機的連関をもつように全体の流れを組み直す必要があるというのが今回を通じて得られた次回への課題である。