手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

患者さんを気絶させてしまった苦い思い出(ひたすら練習する)その2

2012-07-21 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
患者さんに迷惑をかけるようなことがあったら、その後に、もうひとつやっておかなければならないとことがあります。


それは、その出来事によって自分の弱点がはっきりした訳ですから、その部位を徹底的に練習して弱点を克服することです。


それが、迷惑をかけた患者さんへの誠実さにもなると思います。





失敗して落ち込んでも、時間の流れと共に立ち直ってそれっきり…、では最悪です。


あるていど落ち込むのは仕方がありませんが、きちんと反省した後は、弱点を克服できるようしっかりトレーニングしましょう。





私の場合、緊張した患者さんを見て私も緊張したというのは、頚部にもともと苦手意識を持っていたというのもあったと思います。


気持ちの余裕がなかったために、余計に緊張した訳ですね。


そのため、余裕を持って頚部をみられるように、自分の手が頚部というのを覚えるように徹底的に練習しました。


軟部組織については、暇があったら自分の首を触診しました。





頸椎に関しては、ちょうど自分で買った初代の脊柱模型の支柱が壊れ、バラバラになっていたので、頸椎をひとつポケットに入れて持ち歩き、暇があれば触れて手で頸椎を覚えるように練習しました。


(写真は、はじめからバラバラになっている脊椎模型。このようなものも市販されています。)

もちろん模型ですから実物とは異なるところもあるでしょう。


個人差もあるはずですし、椎体の上・下面やルシュカ関節には実際に触れることなどできません。


それでもこの方法は、とても役に立ちました。





まず、頸椎では主に関節突起に触れて検査を行いますが、手が頸椎のかたちを覚えているために、関節突起に触れたとき、頸椎の全体像がイメージできるようになります。


また、関節面の角度を手で覚えておくことも重要です。


頸椎の関節面は、斜めに傾斜していますが頸椎の前彎の強さによって角度は変化します。


このようなときも、頸椎全体と関節面のイメージができていることで、頸椎の分節的な可動性検査をよりスムーズに行えるよう調節しやすいのです。


そうなると、気持ちに余裕を持って頸椎を評価でき、それはそのまま、余裕をもったアプローチにつながります。


このようなことを、1か月でも地道に続けたら、実力はまるで違ってきます。





現場でビビったとしても、患者さんの前では堂々としていろ、という考え方があります。


確かにこちらに自信がないと、相手にも伝わってマイナスになるので方便としてそれもいえると思います。


私も過去に芝居じみたことをしたときもありました。





でもそのような張りぼてに、いつまでも頼っていてはいけません。


メッキはすぐにはがれます。


手間ひまかけて身につけたものこそ、ほんとうに役立ち、自分を助けてくれるものとなります。


そして、自分のよりどころが自分自身になり、落ち着き自信をもって臨床に向かうことができるようになります。





これは余談ですが、問題が起きて解決した後でも、その患者さんが気難しい方だったら、お話しするのが何となく気まずく感じるかもしれません。


私もやはりそのように感じました。


でも、会った時にはきちんと挨拶をしておくようにしましょう。


最初は素っ気ないかもしれませんが、私たちがきちんと向き合えば、そのうち少しずつ態度も柔らかくなり、ひょっとしたらまたお話もできるようになるかもしれません。


上手くいけば、やがてリベンジの機会も訪れます。





私の場合は、約一年後にやって来ました。


その頃には、私も堂々と触れるようになっており、患者さんも以前のような頚部の急性痛ではなく、慢性期の頸部痛だったためか落ち着いておられました。


『先生、上手くなったねぇ


そのひと言を聞いた時の嬉しさは忘れられません。


小僧時代のよい思い出です。


やはり私たちは、患者さんに育てていただいているのだと思います。





それからは、その患者さんを私も担当するようになりました。


やがて打ち解けすぎ、世間話で女性遍歴の武勇伝までお話しされるようになったのには、周囲の目もあったのでちょっと困ってしまいました。



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