手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

私の治療観について~私が体験した「うつ」の感覚 その5

2015-04-18 16:37:55 | 治療についてのひとりごと
シリーズ最終回となる今回は、私の治療観についてのお話し、まとめのような感じです。



癒しや治療の役割は、本来備わっている治癒力が働けるところまでサポートすることであるとお話してきました。

裏を返せばその役割さえ果たすことができれば、どんな方法でもよいということになります。



同じ人間でも体質や好みはさまざま。

そのため、同じ疾患に対するケアやサポートの方法でも「合う」「合わない」があるはず。

ですから癒しや治療法も、さまざまなアプローチが存在してよいわけですね。



ときどき、ある方法のすばらしさを強調するために、他を下げるような表現を見聞きすることがありますがとても残念なことです。

自分の方法をすばらしいと思うのはよいことですが、だからといって他の方法を見下すのはよくありません。



セラピスト自身が自分に向いているアプローチで、そのアプローチが合っている方の役に立っていけばよい。

私の場合は手技療法がそれになるわけです(ちょっぴり刺激的ですが)。



もちろん自分の力量に応じて、複数のアプローチを用いてもかまいません。

でも一人ですべてのものを完全に習得することなんてできないので、他のアプローチを用いている方と繋がることで、互いにより広い範囲をカバーしていく。

これが大切なのだろうと思います。



そのようなことをお伝えしたくて、Facebookで昔話風にまとめた投稿を過去にしたことがあります。

なぜ昔話風にしたのかというと、このような話は堅苦しくなりがちだから

最後にそれをご紹介したいと思います。



≪クビ先生とコシ先生 [ 私の治療観 ] ≫
昔々あるところに、身体の異常は首が原因と考えている治療家と、腰が原因と考えている治療家がおりました。
二人ともたいそう自分の信念が強かったので、村人たちからそれぞれクビ先生、コシ先生と呼ばれていたそうな。


もともと二人は仲が良く、共に修行をし、治療院も一緒に始めるほどでした。
ところが、それぞれ異なる考えを持つようになってからというもの、その関係は微妙なものに。
やがて自分のほうが正しく、相手は間違っているということを、毎日のように言い合うようになったのでした。


そんなある日のこと、治療院に弟子入り希望の若者がやってきました。
二人はいつものように言い合っていたのですが、話しを聞く限りではどちらもスジが通っていてもっともらしく聞こえます。


困りながらも疑問を感じた若者は尋ねました。


「クビ先生とコシ先生、お二人とも相手には治せない患者を自分は治せるとおっしゃいます。
お二人の話がそれぞれ本当のことなら、いったいどのようなことがいえるのでしょうか?」


若者の素直な疑問に、二人は思わずハッとしました。
これまで狭い治療院の中に二人でいたせいか、自分の立場でしか物事を考えられていなかったのかもしれません。


その夜、二人は同じ夢を見ました。
夢の中ではそれぞれ孫悟空の姿をして、どちらのほうが強いのか、キント雲で飛び回ったり、如意棒を振り回したりと大暴れ。
互いに、この世でいちばん強いのは自分だと思っています。


二人がわが者顔で暴れまわっていると、突然、空から大きな声が聞こえてきました。
「だ~れ~だ~、私の手のひらをクスぐっているのは?」
ビックリして見上げた先には、とんでもなく大きいお釈迦さまの顔が二人を見下ろしています。


二人は相談して、どちらがこの世で一番強いかを、お釈迦さまに聞いてみることにしました。
話を聞いたお釈迦さまは、あきれ顔でおっしゃいました。


「お前たちは、私の手のひらをくすぐっていただけだとことが、まだわからないのかな?
まったく自惚れるのもはなはだしい。
少しは反省しなさ~い!


次の瞬間、二人の頭に巻かれていた金冠がギューっとしまって激痛が走り、そのショックで目を覚ましました。
その朝、顔を合わせた二人は、不思議な夢のことを話し、互いに首をかしげました。


ふと机の上を見ると、生理学の本が置かれていました。
昨日の若者が忘れていったのでしょう。
二人は一緒に仲良く勉強していた頃が懐かしくなって、本を手に取りました。


ペラッとめくったページの言葉が、ふと目に飛び込んできました。


「生体には変化しながらも一定範囲内で生命活動を営もうとする、恒常性の維持機能(ホメオスタシス)が備わっている」
「恒常性の維持機能が破たんすることにより、疾病状態に陥る」


漠然とした表現なので修行時代には何気なく読んでいた一文ですが、今改めて読むと如意棒でひっぱたかれたような衝撃を二人は覚えたのでした。


恒常性の破たんした状態が疾病であるいうなら、再び恒常性が働く状態になれば、生命が持つ機能によって、治るものは治っていくということになります。
ということは、自分たちのやっていることは「治す」のではなく、生体の恒常性が働くところまで戻す手伝いをしているだけだということになる。
それができるのであれば、アプローチは上からでも下からでも、外からでも内からでも、多くても少なくても、強くても弱くても、症状のそばでも離れていても構わないということになります。



自分は良くて相手はダメというような表現をしていましたが、お互いの方法で効果を挙げた可能性はあるはず。
反対に両方ともダメで、さらに他の方法が必要な場合だってある。
自分の方法だけが正しいのではないのだということが、改めて腑に落ちたような気がしました。


自分たちは生命という、お釈迦さまの手のひらの上に乗っている孫悟空にすぎず、お互いに孫悟空仲間だったのです。
二人はようやく目を覚ましました。


互いに全体をみる必要性をつねづね語っていましたが、互いにひとつの見方をしているに過ぎないことを気づいていなかったのです。
生命に対して謙虚であることを旨としていたはずが、自分が限りある存在であることを忘れ、傲慢になっていたのでした。

限りのある自分だからこそ、異なる考えや方法を持つ他の人と、手を取り支え合わなければなならない。
そのようなことを落ち着いて話し合うことができ、久しぶりに一緒にいておだやかな気持ちになりました。


そこへ、忘れ物を取りにきた若者がやってきました。
昨日までの険悪な雰囲気とは、まるで違う二人の様子に驚いているようです。


クビ先生とコシ先生は自分たちが間違っていたことを認め、気づかせてくれた若者にお礼を言って語りはじめました。
「あらゆる方法は、恒常性を回復さるための手段に過ぎないこと」

「ひとつの方法で、すべてをカバーすることなどできないこと」

「患者の状態や好みによっても、合う・合わない方法があり、受け入れられる刺激の幅も個人差があるということ」

「治療家自身にも好みや関心、得手・不得手によって、合う・合わない方法があること」

「だから、治療家は自分にしっくりくる考えや、方法を学んでいけばよいということ」

「ただし自分という存在の限界も理解し、可能性を広げる努力をしつつも他の考えや方法を認め、互いに協力することが大切なのだということ」を。

それからというもの、クビ先生とコシ先生は孫悟空仲間として互いの方法を尊重しつつ、必要に応じてカバーし合いながら仲良く治療院をやっていったのでした。


二人のもとに弟子入りした若者は、経験を重ね、やがて独自の治療法を考えました。
でも決して、自分の方法だけが正しいなんて思ったりしません。
生体の恒常性を回復させる、道すじのひとつを見つけたに過ぎないとわかっているからです。


そして若者は村人からも、同業者からも慕われる立派な先生になっていったとさ。
めでたしめでたし。


♪ クマの子みていたかくれんぼ
おしりを出した子いっとう賞~



さて、このシリーズではいろいろ取りとめもなくお話してきましたが、私の治療家としての土台になっている考え方もご紹介しました。

私はうつ病の体験を通して、それをよりしっかりと固めることができたのではないかと思っています。



「病中是山野」という言葉があります。

山野とは修行の場を指していて、病いとはよい学びの場であるという意味です。



テキストを通して学ぶことも大切ですが、治療家としてのあり方を学ぶのは、このような自分自身が身を持って知った体験はとても大きいものだと感じます。

だからといって、ムリに病気になる必要はありませんよ



自分自身が成長するために大切なことは、日々の経験をただボンヤリとやり過ごさないということ。

喜んだり、怒ったり、哀しんだり、不安になったりという体験に流されるのではなく、それらからいかに学んでいくのか。

そこが問われるのだろうと思います。



次回は5月2日(土)更新予定です。



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☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
これだけの量になると、全体をみたり記事を探すのも手間がかかるかもしれません。
そこで、少しでもタイトルを調べやすくできるように、このお休みを使って目次を作ってみました。
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