現在美術日記@関西

アートシーンは東京だけじゃない

ジュゼッペ・ペノーネ展【9月12日】

2009年09月16日 14時15分13秒 | 美術
9月の大型連休を外して、愛知県に美術館巡りをしてきました。
1日目は、豊田市美術館の「ジュゼッペ・ペノーネ展」



案内板から美術館までは急な坂が続いています。



豊田市美術館
ジュゼッペ・ペノーネ展
2009年7月7[火]~9月23[水・祝]

展示室4つに対し、7種類の作品グループの構成になっています。



入ってすぐに展示されているのが「アカシアのとげ」という作品。
アカシアという植物の棘を平面上に並べており、
また遠くから見ると点描になって何かのシルエットに見えてくる。
ペノーネはアカシアという植物を選んだ理由として、
『棘は芽を守るためだが、高圧線の下にあるアカシアの棘は特に動物的本能を感じる』
ということを挙げている。

棘という皮膚感覚に訴えてくる効果に加え、その動物的本能に基づく棘の造形が、
ペノーネのレイアウトによって、美術の領域に昇華されていると思う。
そして、ライトの生み出す棘の影が美しい。
その単純さでさえ見入ってしまう所に、ペノーネのコンセプトが生きていると感じる。



黒い紙に黒鉛で描かれた巨大なドローイング作品「黒鉛の皮膚」シリーズ。
紙のマットな質感と黒鉛の反射によって、皮膚や葉脈が浮き出ているように描かれている。
緻密な作業の繰り返しとシンプルな効果を積み上げて、大きな表現を生み出すのも、
ペノーネの大きな特徴であると思う。

シンプルなワンアイデアで生み出される効果だからこそ、作家のコンセプトの強度が試される。
キャンバスのサイズで表現の大きさを補足しているのではなく、
求めている効果を生かすためのサイジングである事が展示から伝わってくる。



奇妙なオブジェに見える「手の中の幾何学」という作品。
同時に写真の額が壁にかかっている。

写真には両手を色々な形で組み合わせ、そこに円や四角の幾何学的な物体があり、
内側から光を照らした様子が写っている。
そう、これはその両手の中にできた空間を彫刻にしているのである。
そして幾何学な物体の一部に穴が空いていて、
そこには実物大の両手の内側が見えるのだ。

この複雑な次元の混線ぶりが伝わるだろうか。
ポジである空間の拡大彫刻の中に、ネガを表す空間が存在しているという、
永久ループする哲学的趣向。

立体物から滲む素材の重量感が、更にそのコンセプトの強度を確固たる物にしている。
良質な作品は、素材と表現にコンセプトをつなぎにして、作り出される。


豊田市美術館
〒471-0034
愛知県豊田市小坂本町8丁目5番地1
http://www.museum.toyota.aichi.jp/



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