けろろの「浜あるき・野良あるき」

漁あるところ、農あるところへ、風土のにおいに誘われて、いそいそ出かけています

磯漁の漁具、「カギ」のあれこれ

2011-09-22 00:30:37 | 浜あるき
三陸沿岸で、漁師さんの話を聞きながら歩くうち、
津波にされわれず残った、民俗文化財というべきすばらしい漁具にも出会います。

まったく偶然の出会い。
今日は、磯漁の漁具の宝庫をおもちの漁師さんに出会いました。

磯漁は三陸沿岸だと、アワビ、ウニ、ホヤ、ワカメ、コンブ、ゴカイ(釣りえさ)など。
ほぼすべて棒(竹)の先に鉄の「カギ」をつけた漁具ですが、
当然のことながら、対象ごとにカギの形が違うのがとても面白い。
下の写真いちばん手前“はてなマーク”のようなのが、アワビカギ。

        

  

  

上左は、ウニカギ。右は天然ホヤをとるホヤカギ。なんでこんな形に?
下左はワカメカマ。右はコンブをからめとる道具です。
横の歯を抜くと、からめたコンブが手間なくはずせます。

        

さらにすごいのは、カギをつける柄の部分の工夫。
潮の影響を極力おさえ、獲物にうまく吸いつくように考えつくされています。
カギに直接つなぐのが、孟宗竹を削ったシナイ(しなうから)。
次に、アツサ(おそらくガマズミ)の枝を皮ごと使います。
この木の枝は真っ直ぐでしかも丈夫。海水に浮かない比重もあります。
もっと深いところを狙うときは、ナラやカシなどより比重の高い固木の棒を使用。
最後に細い竹をつなぎます。
磯漁の別名「小漁」から、コリョウ竹と呼ばれる細い地竹で、
どこにでも生えているものでもないそうです。

      

磯漁は、夫婦舟で操業します。箱メガネ(船大工による木製)で海中をのぞいて漁をするのがとうちゃん。
漁をしやすいよう、舟を小刻みにたくみに操るのはかあちゃん。
これがそのときに使う櫂(かい)。
左のがオモテ櫂(舟の前のほうで使う)、右のがトモ櫂(舟の後方で使う)。
どちらも、船の左舷(とり舵)がわで使います。
丈夫なカシノキ製なので、かなり重たい。
どれもこれも、植物の性質を知りつくした、くらしの知恵の結晶です。

75歳になるこの漁師さん。
毎日海に出たくて仕方ないといいます。
年だからと心配するご家族に頼み込んで、今年秋にワカメ養殖を再開するため、
準備を進めています。
新造船の注文もして、来年から磯漁や沿岸漁業もすると、元気いっぱいです。

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