霧の社

某国民的妖怪漫画に関して語るブログです。

はじめに

2040-01-01 00:00:00 | はじめに

・このサイトについて

~ここは500号が管理するブログサイトです。
 主に某妖怪漫画作品(婆・4期中心)に関する活動を目的としております。

 ※捏造設定(キャラ同士で子作り)で二次創作しています。

 他の怪奇作品(主に児童向け)も混ぜ込んでおります。

 色々とマニアックです。
 公式の関係者様には一切関係ございません。
 マナーを守ってお楽しみ下さい。

 ※捏造設定に関してはカテゴリの「設定解説」を参考にして下さい。
 
 サイト名:霧の社(きりのやしろ)
 管理人:500号
 URL:http://blog.goo.ne.jp/kjapart
 ※同人サイト様に限りリンクOKです。

 何かございましたらこちらへどうぞ。
 
メールアドレス:kjapart3730☆gmail.com
  (☆を@に変えて下さい。)

コメント (2)

番外編「怪奇!ゴーストホテル」⑧

2018-12-09 23:09:58 | 捏造作品(小説)

~第8話~

 

上に行く階段を登ってしばらく。

扉の並んだ壁に囲まれた廊下の突き当り。

自分達が辿って来た道をタオルンは振り返っていた。

両腕に弟を抱え、周囲を警戒している。

「あの人、来ないみたいだな」

自分と仲間の前に現れた怪人。

キャンディーノが連れてきた旅行者の1人、若い女性。

思い返してみると、あの人に顔立ちが似ていた。

――僕達はとんでもない奴を招いてしまったかも。

「兄さん・・・」

「ん?」

顔を下に向けると、兄に抱えられながらトレバーが俯いている。

「どうした?トレバー」

タオルンの呼び掛けに弟は応えない。

「さっきの怖い人はいないから大丈夫だよ」

心を落ち着かせる優しい声。

暖かい眼差しに見つめられ、トレバーがおずおずと口を開く。

「・・・ごめんなさい」

謝罪の言葉が弱々しく響く。

少年は相変わらず、頭を下に向けたままだ。

「僕、逃げてばっかり。兄さんについていくだけで・・・、さっきも泣いてるしか出来なかったですよ・・・」

「トレバー」

「うっ、僕だって・・・、ひぐっ、おどかし、うえっ、にいったのに、何も・・・できな、ふぐ、ひぇっ、」

トレバーの両目から透明な滴がぽろぽろと落ちていく。

「ごめんっ、なっさい・・・、うえええええ~~~」

すすり泣きがとうとう号泣に変わってしまった。

えぐえぐと嗚咽する弟を、兄は黙って見守っている。

「トレバー」

再び少年の名が呼ばれる。

「僕の話聞いてね」

タオルンは腕の中の弟を降ろし、震える体をそっと立たせた。

目線を彼に合わせ、小さな両肩に手を置く。

「お前は頑張ってるよ、今のままで十分」

しっかりとした意志の強い声だ。

「あんなもの見たら誰だって怖いと思うよ。僕だってお前と一緒に逃げただろう?」

「・・・・・・」

「おっかない思いをしたって、こんなにしっかり立ってられるんだから。それだけでも大したもんだよ」

「・・・本当?」

「本当。だから泣くのはおやめ。ハンサムな顔が台無しだぞ」

「・・・へへっ」

気障に格好つけた台詞に、トレバーが吹き出す。

ようやく笑みを浮かべたと同時に、涙は止まっていた。

元気を取り戻した弟の姿を見て、タオルンも一安心するのだった。

 

 

「ちーっす」

何の前触れも無く兄弟は呼ばれた。

知り合いでは無い。

だが、他人でも無い。

声のした方に顔を向けるなり、トレバーは「ひぇっ」と小さく悲鳴を上げた。

彼は1度、確実に声の主にあっている。

呑気そうな青年――小児郎丸は1歩ずつ2人の方に近付いてくる。

「あり?邪魔した?」

彼は一見気さくに声を掛けてくる。

だが兄弟はひしひしと感じていた。

腹の底へと重くのしかかってくる、不気味で不安な邪気を。

「そう固くなんなよ・・・」

・・・の後に「何もしないから」とは続かない。

タオルンはとっさにトレバーを後ろへ追いやった。

兄は視線を逸らさず、小児郎丸をその目で捕えている。

「聞きたいんだけどよ」

男は大人として丁寧に対応する。

形だけの笑みを浮かべて。

「風呂場で俺の姉ちゃんの首絞めたの、お前か?」

「覚えてもらって光栄だよ」

たっぷり皮肉を込めて返答するタオルン。

「ガキの割に舐めた真似してくれるじゃねえか」

そう言う小児郎丸の拳はパキポキと音を鳴らしている。

背後で息を潜めるトレバーにタオルンが促す。

「トレバー、いいかい?」

「え?何、何?」

ひそひそと相談し合う兄弟。

相手の隙を伺っていた小児郎丸が、攻撃の構えに入る。

足に力を込め、一気に駆け出した。

しかしである。

「!」

2人の姿は一瞬の内に消えた。

――ただ、この表現は正しくない。

「さっきの2人の姿」は確かに見えない。

ぽつんと「2人の本体」が存在する。

タオルとトイレットペーパー。

小児郎丸は兄弟の姿が消えた「経過」にしか気付いていない。

彼の足下へ移っていた2つの物体は、その視線から外れていた。

加速を止めて立ちぼうけになった小児郎丸に向かって、タオルがするすると忍び寄る。

相手の踵に自らの一部を引っ掛けて、蛇のように静かに這いずり出す。

脛・膝・太腿と順序良く上半身へ上り詰めながら。

「お!?」

小児郎丸が事態を飲み込む頃、タオルはもう胸元間近。

姉がされたように、彼も薄い布に首を絞められる。

「ん!ぐ、ぐ!?」

小児郎丸の喉が喰われているようだ。

狂暴なタオル――タオルンはお構いなしに急所を攻める。

気管が狭まり、呼吸がままならない。

腕っぷしの強い小児郎丸でも、態勢が取れなければどうにも出来ない。

(兄さん)

トイレットペーパー――トレバーはタオルンの活躍をじっと見守っていた。

自分達が原型である無機物の姿を取り、相手の拍子をついた際にタオルの兄が旅行客を怯ませる。

その間にお前はこっそり逃げるんだよ、・・・と兄にはそう言いつけられていた。

布製のタオルンに比べ、紙製のトレバーは脆く、壊れやすい。

自分は今役に立てない。

それはトレバーが一番良く理解していた。

まず自分が気配を殺して修羅場を去る。

その後でピンチを切り抜けた兄と落ち合う。

(兄さん、頑張って)

――大丈夫、兄さんはきっと帰って来る。

大切な家族を信じて、弟はころころとひっそり転がっていく。

「待てよ」

「!」

ふいに呼び止められる。

トレバーは急なショックで固まってしまう。

「悪ぃが逃がす訳にゃいかねぇな」

(何で、どうして)

巻き紙は驚愕の余り固まっている。

自分の見ている光景が信じられずに。

「・・・っぶねぇトコだったなー」

息を止められ、もがいていたはずの男がピンピンしていた。

苦しみの余り体をめちゃくちゃに曲げていたあの姿はどこへやら。

楽な姿勢でその場に立ち、自分の首を丁寧に擦っている。

(信じられない)

小児郎丸に巻き付いた布――タオルンも酷く動揺している。

同時に、自分の体でその原因を感じ取っていた。

ふにふにとした皮膚の柔らかさとは無縁の、ごつごつざらざらした固さ。

――この男、石だ。

石である、岩である。

鉱物が、無機物が、素知らぬ顔で息をしている。

こんなのありえない、と言葉には出来ない。

タオルンも、男の足下にいるトレバーも、非生物を元に生まれた怪異なのだから。

細長い布は面積全体に力を入れ、再び首を絞めにかかる。

だが何も起こらない。

硬化した頸部は押し潰されることなく、元の形を維持している。

 

 

タオルンは無力化された。

いとも簡単に。

 

 

人型の岩はゆるゆると首に手を添える。

正確には、自分に纏わりつく鬱陶しい細長い布にだが。

「さぁ~て」

小児郎丸は喜々としている。

先程まで生命の危機に瀕したとは思えない態度。

にやついた笑みを浮かべ、剥ぎ取った布を片手でがっちりと掴む。

「はっ・・・離せ!」

タオルンが声を大にして叫ぶ。

奇怪な男に捕らえられ、恐ろしい凶器は単なる日用品と化した。

「いや~~~形勢逆転だね~~~」

「は・な・せ!!」

冷静だったタオルンはすっかり荒ぶっている。

もう潮時だな、と小児郎丸は行動を起こした。

「うりゃ、うりゃ!うりゃうりゃうりゃ!」

手に持っていた布を力一杯振り回す。

この怪力男が本領を発揮するのだから、並の上下運動では済まない。

尋常ではない腕力に翻弄されるタオルン。

上へ左へ右へ下へ、四方八方に揺さぶられる。

「#□、△、*○×!!!!」

でたらめに言葉を発し、文字通り手も足も出ない。

「お?これは・・・」

小児郎丸が感心の声を上げる。

停止させた腕の中を見ると、いつしか1人の少年が腹を天に向けて垂れ下がっていた。

真っ青な顔にどこかも分からぬ方向を向いた眼。

完全に意識を失っていた。

「兄さんっ!!」

トレバーの悲痛な叫び。

小児郎丸の意識が彼に向く。

青年は転がっていた巻き紙に近付くと、さっと手に取る。

「きゃっ!」

「あん?お前・・・」

まじまじと見つめられるトレバー。

「おぉ、トイレにいた奴か!」

「・・・ひぃっ」

「いやー喋るトイペなんで初めて見たぞー」

まるで緊張感の無い呑気な言動。

完全に面白がっている小児郎丸。

 

 

幼い巻き紙が恐怖で気絶していたことなど、気にも留めていなかった。

(続)

コメント

番外編「怪奇!ゴーストホテル」⑦

2018-11-09 00:28:16 | 捏造作品(小説)

~第7話~

 

※ホラー色強め

 

時は深夜、ホテルの受付にて。

子供達が床に座り、円になって集合していた。

中心の空洞には大量の菓子とジュースが置かれている。

キャンディーノがただ1人、皆から少し離れた所に立っていた。

「えー、皆さんご静粛にー!」

少年は胸を張ってどっしりと構えている。

他の子達は静粛と言われながらも、それぞれ思い思いにお喋りを続けていた。

「皆~、俺の話聞けよ~」

ろくに場を静められないまま、話は進められる。

「本日は俺、じゃなくてワタクシのためにお集まりいただき、誠にありがとうございます」

「ディーノのためだけじゃないよね」

「他の子も頑張ったよね」

「うるせー!黙って聞いてろ!」

司会の挨拶に陰口が飛ぶ。

怒りながらもキャンディーノは務めを全うしようとする。

「今回の計画が成功したのも、皆さんのご協力のおかげであります。と言うわけで、今から記念のお疲れ会を始めようと思います!」

彼の手に包まれているコップ。

乾杯の準備が始められようとしている。

「ほら、お前らもコップ持って!」

司会に促され、観客達も次々と飲み物に手を出す。

コップを自分の胸元あたりまで浮かせ、そのままの姿勢で待機していた。

「えー、それでは、『旅人脅かし大作戦』の成功を祝して~~~・・・」

祝いの盃が頭上に高く掲げられる。

「カンパーイ!!」

――カンパーイ!!

祝杯の号令と共に皆コップを突き合った。

楽しい宴の始まり。

 

 

同時に、宴の終わりでもあった。

 

 

空間から光が一瞬で消える

「ん?」

いち早く異変に反応したのはキャンディーノである。

「やだ!停電!?」

「何も見えないよー」

徐々に混乱の波が広がっていく。

「早く電気をっ・・・むぐっ・・・!」

「コユキ!?」

仲間の身を案じるピートリーヌ。

他にも「いやだ!」「離して!」などと悲鳴が聞こえる。

「やだ!僕怖い!!」

「大丈夫。じっとしてるんだよ、トレバー」

恐怖に震える弟をタオルンが力強く抱き締める。

暗闇の中で動きが取れず、ただ立ち竦むしか術がない子供達。

彼らの頭上から光が舞い降りる。

時間を掛けて皆が視力を取り戻していく。

目にした広間では明らかに異変が起きていた。

「いない!」

ピートリーヌが驚愕の声を上げる。

その言葉通り、子供達の内何人かが消えていた。

仲間が行方不明になった事実に他のメンバーも騒然となる。

誰もが皆、自分以外の残った面々を確認している。

キャンディーノ。

ピートリーヌ。

トレバー。

タオルン。

無事なのは計4人。

「何で俺達だけ・・・」

目の前の事実を直視出来ず、キャンディーノが苦い表情をしている。

ドリンクがあちこちに零れて床はびしょびしょ。

美味そうだった大量の菓子は踏み潰されて粉々。

歓声で溢れる筈の宴会は、陰鬱とした事件現場と化した。

「そういえばさ」

タオルンが口を開く。

彼は依然冷静を保ち、先程と変わらず大切に弟を守っている。

「残ったのは脅かしに参加した子達だけだね。僕も含めて」

発言の内容は事実だった。

子供達の中で消えたのは、裏方に回ったメンバーである。

この現状が何を示しているのか。

残された仕掛人達にその意味は分からない。

「・・・偶然かもしれないけどね」

嵐の起こる前触れかもしれない。

4人の胸騒ぎは一向に止まらなかった。

 

 

「ぎゃ!!」

巨大な振動。

それは突如訪れた。

「な、な、何だよ!!」

「いやーーーっっっ!!」

グラグラ、ギギギイイッ、ドゴンドゴン。

大量のほこりが上から下へ降り注ぐ。

一気に足元から崩れ落ちる子供達。

床下は激しく揺れ、立つことすらままならない。

「わあ、や!!やだ、っ、!ひいいいっ!!!!」

気弱なトレバーは既に正気を失っている。

「駄目!お願いだから動かないで、じっとしてて!」

腕の中で暴れる弟をタオルンが必死に宥める。

「ちっきしょー!全然立てねぇ!」

「どうなってんのよー!!」

キャンディーノもピートリーヌも、床に這いつくばるのが精一杯である。

子供達は怯えに怯え、物が四方八方跳ねまわり、室内は荒れに荒れていた。

 

 

ホテルの外。

1人の男が外壁に手を付いて、前後に腕を動かしている。

お気楽にストレッチをしている訳ではない。

そのような楽し気なものでは断じてない。

男は、ホテルを動かしていた。

ホテルそのものを、である。

聞いただけでは信じ難いことである。

しかし現に、彼は両腕に力を込め、建物を揺らしていた。

そんな人間離れした芸当がこの人物には出来た。

男の名は「小児郎丸」。

別名は「子泣き小僧」。

能力は体を岩石に変えること。

そして、人様の度肝を抜く程の怪力。

「やりすぎちったかな」

作業を止めて、小児郎丸がポツリと呟く。

自分が揺らしていたホテルの一室では、今まさに地震騒ぎが起きている筈である。

「まぁいいか」

それにも構わず、彼自身は呑気に構えている。

室内の混乱とは正反対の状況だ。

「他の部屋は何もないように細工してある、ガキんちょ達は怪我しないように見張られてる・・・、問題無しっ」

小児郎丸は自分が聞かされたことを反芻している。

ここまでの行動は全て打ち合わせの範囲内なのだ。

「じゃ、俺も中に戻るかな」

そう言うと、何食わぬ顔で青年はホテル内に入り込んだ。

 

 

広々として豪華さを感じさせる広間はどこにもない。

受付は家具や小物が散乱して足の踏み場も無かった。

倒れたソファーの陰でキャンディーノが呻いている。

「いっ・・・てぇ・・・」

体を強く打ってしまったらしい。

ソファーに手をついてよろよろと立ち上がる。

「皆~無事か~・・・」

キャンディーノはもう疲れ切り、息も絶え絶えである。

仲間達も同様で、力無く返事をする。

「無事じゃないよ~・・・」

「・・・以下同じ」

「・・・・・・っ、グスッ」

ピートリーヌ、タオルン、トレバーの安否は確認出来た。

キャンディーノはひとまず辺りを見回す。

「・・・何なんだよ」

少年の体から気力が急速に抜けていく。

家具はそれぞれが別の方向を向いている。

テーブルは全部横転、ソファーは縦か横かも判別出来ない角度で倒れていた。

今回の計画用に揃えた小物類は殆どが破損し、無残に床に飛び散っている。

「っんも~~~・・・」

滅茶苦茶としか言いようがない風景。

キャンディーノは頭を抱えた。

大人を出し抜く程知恵が働いても、彼も一介の子供。

突然の危機に立ち向かえる強さは持ち合わせていなかった。

「ひぃっ!!」

トレバーが急に悲鳴を上げる。

今この場にいる全員が注目した。

「お、おい何だよ!?」

「どうしたの!?」

キャンディーノとピートリーヌは動揺していた。

タオルンはトレバーの身を案じる。

「落ち着くんだトレバー。何があったの?」

ガチガチと歯を鳴らして怯えるトレバー。

震える幼児の小さな指が、ゆるゆるとある一点を指す。

そこに皆の視線が一斉に集まる。

 

 

 

 

女がいた。

髪の長い女。

無残な逆さ吊り。

髪と一緒に両腕をだらしなく垂らしている。

生気を無くした表情。

死人同然の顔。

それなのに。

2つの瞳だけが4人をしっかりと捕らえていた。

 

 

 

 

「・・・・・・ぃゃぁぁぁああああああっっっ!!!!!!」

ピートリーヌが最初に動いた。

脇目も振らずに逃げ惑う。

「リッ・・・リーヌ!!」

それに気付いたのはキャンディーノ。

目の前の怪人よりピートリーヌが消え去る不安が勝った。

本能のまま走り出す彼女を追い駆けていく。

「僕達も行くよ!トレバー!」

タオルンも逃走を開始した。

恐怖に心を支配されたトレバーを抱えながら、懸命に駆け抜ける。

――この子だけは守らなきゃ。

安全な場所を求めて、兄は弟を連れ、去っていった。

 

 

「さぁ、てと・・・」

子供達のいなくなった元・受付。

吊られた状態から姿勢を変え、砂子姫は速やかに床に着地する。

あのおぞましい凶相はどこへやら。

いつもの澄ました凛々しい顔立ちがそこにあった。

「本番は、これからだからね?」

もうここにはいない者達に向かって、彼女は話し掛ける。

「覚悟しときなよー」

飄々とした口振りで、淡々とそう言った。

 

(続)

コメント

番外編「怪奇!ゴーストホテル」⑥

2018-10-05 00:42:07 | 捏造作品(小説)

~第6話~

 

「「!」」

明らかな異変。

目の前の状況に、姉弟は息を潜める。

「・・・・・・ひ」

再び不気味な声。

「いひひひひひひ・・・」

床の上の生首が笑みを浮かべている。

歪に口角を上げながら、依然双子の方を見つめている。

やがて首は横から真っ直ぐに姿勢を変え、ふわふわと宙に浮き始めた。

砂子姫達の目線の上まで達すると、静かに停止する。

「父上!母上!2人共起きて!」

危機を察した砂子姫が両親を起こしにかかる。

「う、うぐぅ・・・」

どうにも意識がハッキリしない。

散々いたぶられて、余った体力を根こそぎ削られたようである。

「俺に任せて!」

小児郎丸が自慢の腕力で老人2人を持ち上げる。

片腕に分けて親を1人ずつ抱えている。

この瞬間、動ける者達は介抱と戦闘、2つの難題を強いられた。

態勢を整え直すため、姉弟は逃走の道を選ぶ。

両親を弟に任せ、姉は素早く扉に向かう。

しかし手を掛けたドアノブは微動だにしない。

「くっ、くそ!開かない!」

いくら取っ手を回しても、ドアを押したり引いたりしても、扉は開かれない。

一旦正攻法を捨て、砂子姫は力技で現状を打破することにした。

思い切り気合を入れ、足を破壊対象にぶつける。

だが目の前の状況は変わらない。

扉にはわずかに汚れが付いたのみである。

全力で体当たりしても、結果は同じ。

女の力ではこれが限界か。

「ジロ、こっち来な!」

「お、おう!」

姉が弟へ協力を求める。

様子を見守っていた小児郎丸はすぐ頷いた。

抱えていた両親をひとまず床に寝かせ、姉の側へ向かう。

そんな彼の行く先を遮るように。

部屋の中に一筋の光が走る。

ドアに近付く小児郎丸の頬をギリギリでかすめ、一直線に通り過ぎた。

 

 

ビイィィンッ・・・。

部屋を通った物体が反動で音を立てる。

ギラギラと輝く包丁が刃の先を壁に突き刺していた。

「・・・・・・い?」

小児郎丸が冷や汗を流す。

この一撃が、皮切り。

凄まじい猛攻が始まった。

まずはナイフ。

次はフォーク。

今度はスプーン

ハサミ、カッター、裁縫用の針、等々。

千差万別。

どこからともなく、様々な物が飛び交ってくる。

多くの凶器が部屋中と右往左往している。

さらに脅威の矛先は、双子へと集中していた。

「ちっ!」

砂子姫が常に持ち歩く苦無を抜き、危機に対応する。

タイミングを上手く合わせて、自分に向かってくる凶器に得物を当て、打ち落としている。

小児郎丸も同様。

両腕を石化させ、姉のように縦横無尽の攻撃に立ち向かう。

「いいわ!その調子よ!」

天井近くから声がする。

あの怪しい頭部はまだ一家の頭上に浮いていた。

「もっと色々飛ばしちゃって!」

「うっせー!!」

砂子姫が躊躇うことなく怒りをぶちまける。

「調子に乗ってんなよ!その気になりゃお前なんか・・・」

「良いのかな?」

「何ぃ!」

「姉ちゃん、上!上!」

小児郎丸に促されて砂子姫が向けた視線の先。

床に寝かせていたはずの両親がいた。

頭部と同じく、2人も浮いている。

いや、『浮かされている』と言った方が正しいか。

時間を経て、意識は自然に取り戻したようだ。

空中で成す術もなく、ひたすら手足をバタつかせている。

「ごめんね~、ちょっと我慢しててよ~」

母を羽交い絞めにして抱える人物。

蝙蝠の翼を羽ばたかせ、気軽に話し掛けてくる。

「こら!お前達、今すぐ離さんか!こんなこと止めなさい!」

「ダメだよ、大事な仕事だからね❤」

「おじいちゃん達、ごめんなさいですよ・・・」

気弱な子供の声も聞こえてくる。

父を宙で支えているのはこちらの方。

大人の体を支えるのが厳しいのか。

肌には触れず、身に付けている衣服を引っ張り、それはそれは重そうに浮かせている。

「終わったらちゃんと下ろすから・・・、もうちょっとガマンしてほしいであるですよ」

「ん~?」

父が状況に似合わない呑気な声を出す。

「飛んどる。わしまだ酔っとるのか~?」

「ううん、現実であるですよ」

空気を読まない老人の問いに、幼子が律義に返答する。

 

 

タオルンとトレバー。

飛行術を発揮し、計画進行に貢献する。

 

 

頭部は得意気に鼻を鳴らす。

「分かったでしょ、自分達の立場が」

不機嫌を一切隠さず、砂子姫が口元を歪ませる。

「くっそ~~~、てかお前!お前!」

「何?」

砂子姫が頭部に問い掛ける。

「お前メイドだろ!最初に会った!」

「あ、よく見るとリーヌちゃん!」

姉の発言に弟が反応する。

「リーヌちゃん!俺だよ!イケメンのお兄ちゃんだよ!愛してるなら俺達を助けてー!」

「馬鹿じゃない?」

頭部、もといピートリーヌのコメント。

明らかに彼を見下している。

小児郎丸に代わり、砂子姫が文句を言い返す。

「ガキの癖に妙な術使いやがって、今そっちに・・・」

その台詞の続きは紡がれなかった。

「!!?」

砂子姫の後頭部に衝撃が走る。

彼女の後ろで影が素早く走り去る。

誰かに思い切り殴りつけられたらしい。

不意に訪れた攻撃に対応出来ず、砂子姫はよろめく。

「姉ちゃん!」

襲い掛かる凶器を薙ぎ払いながら、姉の元へ弟が駆け付ける。

姉弟が劣勢に陥った様を見て、ピートリーヌは部屋から消えた。

砂子姫の窮地しか目に入っていない小児郎丸は、それに気付かない。

室内の混乱が頂点に達した時、上の連中が下に降りてきた。

「じゃあトレバー、僕達も行こうか。頑張ったね」

「は~~~、やっと降りられるです・・・」

「は、早く降ろしなさい!姫~~~~~~!!」

「ああ、子供達が大変じゃあ・・・」

床に到達するやいなや、両親も足早に娘の元へ向かう。

老人達の様子を見届けて、少年達も去っていく。

「じゃあね、お婆ちゃん達」

トレバーの手を取り、タオルンもどこかへと消え去る。

少年2人の動向を気に掛ける余裕は今の一家には無い。

全員の気が逸れた後、物体が部屋に投げ込まれる。

 

 

一連の騒動は終局へ。

全てを締め括るための必要な鍵。

 

 

「爆ぜろ!」

―――光、音、煙。

巨大な威力が一気に溢れ出る。

鼓膜が破れるような爆音が部屋に響いた。

 

 

 

 

「ちょおっとちょーっとちょっとーーー!!」

コユキが焦った様子でやって来る。

待機していた他の子供達も慌ててついてきている。

「あんた達何やってんのよ!?」

あんた達と呼ばれた計4人。

キャンディーノ、ピートリーヌ、タオルン、トレバー。

外の壁に張り付いていた仕掛人達。

「コユキちゃん!どうだった?俺の特製ボム」

「どうだった~?、じゃないわよ!」

浮かれるキャンディーノに対し、怒り心頭のコユキ。

「かなりすごい音したわよ!私達まで巻き込まれたらどうする気!?」

「あ、安全だから心配ねぇよ・・・」

キャンディーノが懸命に弁解する。

「爆発はしたけど火は使ってないし・・・、誰もケガしないよ!」

この発言に異を唱える者が1人。

「そうとは言い切れないぞ」

ブラッドリーである。

「爆風で吹き飛ばされて部屋のどっかに体をぶつけてるかもな」

「お、脅かすなよ」

物騒な可能性を挙げられ、キャンディーノが肩をすくめる。

「も、もしかして・・・」

トレバーが同調して青ざめていく。

「おじいちゃんもおばあちゃんも・・・、お姉ちゃんもお兄ちゃんも、みんな死んでるんじゃ・・・・・・」

最悪の事態を想像してしまい、涙目になるトレバー。

「大丈夫、生きてるよ」

「ふぇ?」

予想だにしなかったタオルンの発言に、気の抜けた声を出すトレバー。

「皆が話してる間に部屋を見てみたけど、あの人達、血の一滴も流してなかったよ?」

「ホント?兄さん」

「ああ、だからお前が泣くことはないんだよ」

緊張が糸が解け、ぶわっと大泣きするトレバー。

びええええええん!、と泣き声を上げて、兄に駆け寄る。

「おぉよしよし、良い子だね」

そんな弟を優しく抱き締めるタオルン。

「なぁ~んだ!心配なかったじゃん」

先程の不安もどこへやら、すっかり肩の荷を下ろしたキャンディーノ。

「さっきまでビビってた癖に・・・」

少年の様子を見て呆れるピートリーヌ。

「調子良いんだから、全く・・・」

「チー?」

「ニー?」

「ミー?」

ぼやく少女を訳も分からず3つ子が見つめる。

「ま、別にケガさせるつもりも無かったしな!」

キャンディーノは胸を張って、こう答えた。

 

 

 

 

「・・・・・・なぁ~にが『ケガさせるつもりも無かったしな!』だ」

砂子姫が苦々しく呟く。

タオルンの言った通り、一家は生きていた。

ただし、決して無事では無い。

数々の刃物のために双子の衣服は切り裂かれ。

傷こそ無いものの1名は頭をぶたれ。

極めつけは最後の煙幕弾。

一気に噴き出す大量の煙で息は詰まり。

内側からの強力な爆発で、ドアは無残に吹き飛んでいた。

「仕留める気満々じゃんか、くそっ」

怒れる砂子姫の心境とは対照的に、「じゃあ行こーぜー」と楽しげな声が聞こえる。

部屋の中から彼女が顔を出し、こっそり様子を伺う。

仕掛人一同は皆、足並み豊かにぞろぞろと去っていく所だった。

小児郎丸も姉に釣られてその後ろ姿を見つめている。

「皆、初めから騙すつもりで俺達を連れてきたのかな」

「当たり前じゃん!」

砂子姫が鼻息を荒くして断言する。

部屋に煙幕が広がった後。

彼らの動向を探るため、一家は気絶したフリを続けていた。

部屋の外での会話は全て筒抜け。

外が静寂を取り戻した時点で、家族は全員意識を取り戻していた。

「大した理由も無く私らを悪ふざけに巻き込んで・・・、親の顔が見てみたいよ!」

「同意見じゃ」

母と娘の意見が一致した。

「刃物を投げたり人様の子を殴ったり、よっぽど良い躾を受けたらしいわい」

嫌味をたっぷり込めた皮肉が響く。

「何も出来んかったのう」

残念そうに話す父。

自分より遥かに幼い子供に手玉に取られたと言う事実。

子供達に対応を任せきりで、肝心の大人達はろくに活躍せず。

「わしはもう反省しきりじゃ~」

「・・・そうじゃな、油断しすぎた」

年寄り2人が気を落とす。

恐怖そのものを生業とする妖怪が、脅かされる立場になるとは。

今回の出来事は一家の自尊心を著しく傷付けた。

「まだだよ」

砂子姫の凛とした声が響く。

「あんなチビ達に舐められたままで、この『砂かけ娘』様が引き下がれるかっての」

「砂かけ娘」。

凄まじい妖力を持って砂塵を操る鬼女。

人も、妖怪も、ひたすら慄かせる実力者。

砂子姫の力を知らしめる別名である。

「母上!父上!今回は好きにやらせて!このままじゃ終われない」

両親の目前まで近付いて、砂子姫は懇願する。

真剣かつ鬼気迫る顔つきをしている。

両親もいつのまにか居住まいを正し、娘の声に耳を傾けている。

「いけません」

しばしの沈黙。

「・・・と言うところじゃ。いつもならな」

自身の言葉を翻し、母は娘の意思を尊重する。

「手加減はしてやれよ」

父も同意見である。

イヒヒヒヒヒヒと両親は笑う。

あのピートリーヌにも負けない程不気味な笑い声である。

「お前もやるか?」

父が尋ねた相手は小児郎丸。

「え、いや、俺は」

「馬鹿っ!!」

砂子姫の怒号が飛ぶ。

「あんたも妖怪の端くれだろ?みょうちきりんで半端なオバケもどきに一泡吹かせてやろうじゃん!」

「え、遠慮しとくよ」

小児郎丸は明らかに怖気づいている。

「なんで」

「え、だってリーヌちゃん達が・・・・・・」

ここで砂子姫がキレる。

「女絡みかよ!!!!!!」

「だって、女の子に、酷い、真似できないよ!」

弟の胸倉を掴み、激しく揺さぶる姉。

無類の女好きは言葉を切れ切れにしか発せない。

「てめぇを騙くらかしたヤツに何鼻の下伸ばしてんだ!!しかも相手はガキだろうがーーーーーー!!」

「姉ちゃんみたいに手荒なことしたくないんだよーーーーーー!!」

「無事に済みそうにないのう、爺」

「ま、若いモンに任せとこうや」

不安を思わせる言動。

それに反する両親の笑み。

 

 

騒動は終わらない。

 

 

(続)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

書くたびに文章増えてる気がする・・・。

もうちっとだけ続くんじゃ。

コメント

番外編「怪奇!ゴーストホテル」⑤

2018-08-28 15:04:12 | 捏造作品(小説)

~第5話~

 

※今回はホラー要素強めです

 

2つの寝息が部屋に満ちている。

老人2人はベッドの上で横になっていた。

「う~~~む・・・」

内1人が身じろぎする。

上半身を起こし、辺りを見回す。

寝ぼけ眼をこすりながら、母はある違和感に気付いていた。

――子供達がいない。

「どこへ行った・・・?」

随分と寝ていたせいか、就寝前後の記憶があやふやだ。

この時かすかだが、母は近くに他者の気配を感じていた。

連れ合いの爺に視線を向けるが、どうもそちらの方ではない。

微動だにせず、口の端から涎を垂らしていびきを掻いている。

慎重に様子を伺っていると、気配は意外と近くにあることが分かった。

自分達が腰を下ろしているベッド。

音も立てずに微妙な力加減で揺れている。

気のせいか、と母は考える。

その考えを打ち消すように、揺れは少しずつ大きさを増す。

「な、何じゃ?」

グラグラガタガタ。

ベッドは激しく揺れ出し、豪快に音を立て出した。

「じ、爺!目を覚ませ爺!」

「ん、むにゃ?」

大きく揺れた表紙に両親は叩きつけられた。

「ぎゃんっっっ!!」

「ぎょえっっっ!!」

床ではなく、元いたベッドの上に、である。

器用なことに、敷かれていたシーツは綺麗に剥がされている。

「い・・・痛(いだ)だだだだ・・・」

「え?おい、どうした!?」

ここに来てようやく父が目を覚ました。

「おい婆、何があった?」

「爺、あれ見ろ!」

「はぇ?」

質問の答えも返らぬ内に、父は母に促された方を見た。

2人の頭上に、白くふわふわしたモノが浮いている。

先程のシーツが揺れていた。

風も無いのに、である。

「これは一体・・・」

父の疑問に答える声は無い。

両親が気を取られた一瞬の隙に、シーツが大きく広がる。

「ぎゃ!」

「ぶっ!」

体を巻き取られ、2人はあっけなく包み込まれた。

幅の広い布に四方を塞がれ、外の世界が見えない。

「おっ、おのれ~・・・」

少しでも抵抗しようと婆が手足をジタバタさせる。

爺ももがく。

しかしそれも叶わない。

上からドスドスと殴打されたからである。

「うわっ、や、やめ・・・」

「あ痛、あ痛たたた!!」

遠慮も配慮もない、無慈悲な攻撃。

悲鳴も届かない中、老人2人への厳しい仕打ちは長らく続いた。

 

 

丸くくるまったシーツの上。

2つの影が形作られている。

布の中で起きている悲惨な事実を知らずにいるのか。

知りながらわざとやっているのか。

子供達が無邪気に跳ねている。

キャンディーノとピートリーヌ。

怪現象を引き起こした張本人達。

一家はそれを、まだ知らない。

 

 

一方、双子の方はと言うと。

2人仲良くバスルームに留まっていた。

お互いに自分が遭遇した出来事が妙に引っ掛かり、共同で調査することに決めたのである。

「どうかな、それ?」

「うーん」

小児郎丸が『それ』と呼んだもの。

便座の近くに備えつけられたトイレットペーパー。

彼が用を足していた時、生きていたように振舞ったもの。

「フツーの、白い、紙だねぇ」

「だよねぇ」

紙自体を手に取ってあちこちから眺めてみても、何の変哲も無い。

とても魂の籠った存在とは思えなかった。

「もしかして」

「もしかして?」

「気配を消してるんじゃないかな?」

小児郎丸が推理する。

「いやー、それは無いわ」

砂子姫がすぐさま否定する。

「だって妖気のかけらも感じられないよコレ」

器物百年経てば霊を得る、と伝えられるように。

長い年月を経て使われた道具には魂が宿る。

意思を持ち、妖力を得たその道具達を総称して『付喪神』と呼ぶのだが。

「その類のヤツじゃなさそうだし・・・」

「やっぱ気のせいなのかな」

「あ!でも私のは気のせいじゃないよ」

砂子姫が自分の体験を話し出す。

「さっき私がここにあったタオルに首を絞められた・・・。あれは錯覚じゃないよ」

「でも消えたんでしょ?」

「逃げたのかも。独りでに動いてたから」

事実を確かめることは出来ない。

当のタオルが見当たらないのだから。

「とりあえず部屋に戻ろう」

砂子姫が提案する。

「このホテルはやっぱおかしい。部屋に戻って母上達に相談しよう」

「だね」

弟も姉に同意する。

しこりは残るものの、当面の安全を考慮して両親の元へ戻ることにした。

――その行動が読まれているとも知らずに。

 

 

「ん?」

「ありゃ」

部屋に戻った双子が見たもの。

「母上、父上も。まだ寝てるの?」

ベッドで寝ている自分達の親である。

砂子姫が最初に声を掛けた。

「うっわー、ベッドがぐちゃぐちゃ・・・」

シーツは何故か皴だらけで、とても清潔には見えなかった。

そこから彼女は不自然なことに気付いていく。

両手両足をだらしなく伸ばし、口元は締まりなく開いている。

寝ている、と言うより、気絶している。

両親の状態はまさにそんな感じだった。

 

 

 

 

くへへへへへへへへへへ。

 

 

 

 

突如、禍々しい声が双子の耳に届く。

背筋をゾクゾクさせる不気味な笑い声だ。

「・・・何?」

砂子姫が周囲を探り出した。

部屋の各方面には何も見当たらない。

状況を把握出来ない彼女を焦らすように、絶えず笑みは響き渡る。

うはははははははははは。

きしししししししししし。

場所を問わずあちこちから聞こえてくる。

音量も声色もあやふやで、実体が掴めない。

えへへ、あは、いひひ。

うふふふふふ、あっはっははははは。

「良い加減にしろ!とっとと出てこい!」

イライラが頂点に達した砂子姫の怒声に応えるように、新たな音が響く。

ごとり。

鈍く、重みを感じさせる何かが落ちた音。

「姉ちゃん、あそこ!」

小児郎丸がそれをすかさず発見する。

弟の指し示した先に、姉は視線を移す。

部屋の隅の角の所。

うずくまっているようにそこにある物体。

微かに、笑みを浮かべている。

 

 

それが人体の頭部だと気付いたのは。

相手が視線を2人に向けたからだった。

 

(続)

コメント