弁護士公認会計士 横張清威の呟き

日々の出来事に弁護士会計士の視点から独自のコメントを加えています

表明保証保険(M&A保険)

2017年06月07日 | M&A

日経新聞で海外MAに関する保険のニュースを目にしました

 

日本経済新聞H29.6.7朝刊

 

実は、海外MAでなくても、国内MAについても保険は存在します

(参考)http://www.nikkei.com/article/DGKKZO13328960U7A220C1TCJ000/

 

このようなことを言うと、MAに恐れをなしてしまう人が増えるかもしれないと思うので、あまり言いたくないのですが、MA契約は類型的に揉めやすい契約だと認識しています

何故かというと、MA契約には通常の商取引と異なる、以下の3つの要素が存在するからです

 

  1. ワンショットの契約である
  2. 取引金額が高額である
  3. 斜陽になる手前で売却してることが多い

 

1 ワンショット契約について

通常の企業間の商取引は、毎月繰り返し取引が行われる、継続的取引が一般的です

継続的契約では、特定の月でトラブルが生じたとしても、翌月以降の取引を調整することで解決することが可能です

また、継続的に取引をしているので、担当者間で信頼関係が成り立つことも往々にして見られます

ところが、MA契約は、1回切りのワンショット契約であるため、翌月の調整や当事者間の信頼関係を形成することが困難な取引と言えます

 

2 取引金額の高額化

当然のことながら、会社全体の売買であるため、通常の取引よりも売買金額は高くなります

億単位になることもしばしばあります

 

3 斜陽手前であること

今後お金を際限なく生み出す打ち出の小槌を手放したいと思う人は、そうそういません

経営者の直感として、今後斜陽になりそうだという予感があるから、売却に踏み切っているという要素が多いことも事実です

(もちろん違う場合もありますし、売却後にシナジーを生む場合もあります)

そのため、MAをしたものの、思ったとおりのパフォーマンスを発揮せず、損害賠償できないかと粗探しをすることがあります

 

 

このように、MA契約は、締結後に揉めやすい類型の契約だと言えます

実際に、MA契約による訴訟を今まで何件も対応しています(現在進行形でも

 

MA契約で争われるのは、通常、表明保証違反となります

たとえば、決算書の内容は正しい、法律違反は行っていないなどと保証して会社を売ったものの、買主が後で調べてみたら嘘が発覚したというものです

 

MA保険は、このような表明保証違反の賠償金を賄うものですが、記事を読む限り数十億円以上のディールを対象としているようです

これでは、実際に日本で行われているMA契約の大半は、検討外となってしまいます

 

保険会社も手探り状態でコンサバになっているのだと思われますが、保険金を支払うケースを制限することで(今も制限してますが)、小規模MAにも手が届く保険商品を作ることができると思います

実際、そのような流れになるのは目に見えてますが、早くそうなって欲しいと願っています

 

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税金(税務調査)

2013年06月17日 | M&A

M&Aストラクチャーの選定の際には、各ストラクチャーを選択した場合の税務メリット・デメリットを主眼に据えて検討することになる。
それとは別に、簿外債務の観点からも税金を調査する必要性がある。

というのも、基本的に買収した以上、その後買収された会社に税務調査が入り加算税等が課された場合には、基本的に買主側の資金によって支払われることになるからである。

 

 

税金関係のリスクを検討する際には、通常、5年程度以前からの確定申告書、修正申告書、更正通知、税務調査の状況などに関連する資料を収集することになる。
これらの資料を検討し、買収後に税務調査が入るリスクが高い箇所を特定する。

一般的に、過去に税務調査が入った箇所は、当該会社が税務的に問題を抱えている箇所であると推測されるため、直近の税務調査後の決算書の当該箇所につき重点的に問題がないかを検討する。
役員給与などについては、過大役員報酬・賞与などの認定がされるおそれが具に確認しなければならない。

以前、グループ間取引につき、恣意的とも思われる条件が設定された契約を発見されたことがある。
著しく恣意的なグループ間取引は、寄付金として損金不算入となるおそれがある。寄付金は、期ずれ(収益認識時期のずれ)とは異なり、永久に損金算入されない差異であるため、特に注意が必要となる。

もっとも、将来の税務リスクについては、確定的にリスクが顕在化すると断言することはできない。
多くの場合、解釈の余地が残されているからである。
そのため、相手方も易々とリスクの存在を認めることはせず、買収価格の調整にまで影響が及ぶことは少ない。

しかしながら、そのような場合であっても、リスクの程度が高い場合には、必ずM&A契約書の表明保証条項において、当該リスクのヘッジを行っておくべきである。

上記ケースでも、売主が頑なに税務リスクの存在を認めず、表明保証条項にヘッジ内容を記載するにとどまった。

 

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1円売却(債務超過会社の譲渡)

2013年06月17日 | M&A

実務では1円で会社が売却される事案も散見される。


というのも、会社が債務超過となってしまうと純資産はマイナス、つまり当該債務超過会社の株式は、純資産ベースでいうと負の資産とも評価できるのである。
我が国には債務超過の会社は多数存在する。
そのような債務超過会社を買いたいと思う人はいないのではないかと思うかもしれないが、実際には当該債務超過会社が有しているノウハウに着目し、買収後のシナジー効果を見込んで債務超過会社を購入するというM&Aもしばしば見られる。

1円で債務超過会社を買うのであるから、わざわざ費用を支払ってデューデリジェンスを実施する必要などないと思うかもしれない。
しかし、意外とこのような案件でデューデリジェンスを依頼されるケースは多い。

というのも、債務超過会社を買収して、放置しておけば利益を生むなどということは起こりえない。
実際に利益を生ませるためには、不採算事業の縮小、リストラ、コストカットなどを徹底し、当該債務超過会社のブラッシュアップを行う必要がある。

当然のことながら、これらの作業には多額の費用がかかることになる。
また、債務超過会社の負債項目には通常多額の長短借入金が計上されており、これらの支払についても買主が行わなければならない。

つまり、1円で債務超過会社を購入するということは、何千万円という多額の投資を行った結果、それ以上のリターンを期待するという投資活動なのである。
そのため、投資対象である債務超過会社に予想以上の問題(簿外債務や法律上の問題点)がないかにつき検討する必要があり、1円でのM&Aについてもデューデリジェンスが実施されるのである。

実際に合った事例として、経営不振会社の買収につきデューデリジェンスを実施したところ、簿価純資産は一応プラスだったものの、修正後純資産は大幅にマイナスとなったケースがある。
一般的に、デューデリジェンスを実施すれば、資産の含み損や引当不足が判明し、簿価以上に純資産のマイナスが積み上がるものである。
しかし、これらのマイナス要素を勘案したとしても、それ以上のシナジー効果が期待できるのであれば、M&A契約は締結されることになる。
実際に、買主は問題点を全て把握したうえ、当該会社を1円で買収した。

なお、このような債務超過会社の買収案件では、問題が発覚したときに売主に賠償請求をしたとしても、何も被害回復されないおそれが高い。
そのため、M&A契約書の表明保証条項などに期待するのではなく、通常よりも深くデューデリジェンスを実施して対処しなければならない。

 

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雇用契約の引継(事業譲渡と会社分割)

2013年06月17日 | M&A

M&Aでは、買収対象会社の全部を譲り受ける場合ばかりではなく、事業の一部のみを売買するということもある。
法律用語でいうと事業譲渡、会計用語でいうとアセット・ディール、カーブアウトなどと言われている。

事業譲渡によって取引の対象となるのは、通常は資産のみである。
一般的に、契約は相手方の同意なくして契約当事者の地位を変更することができない。

たとえば、資力があることを見越してお金を貸したのに、債務者の地位を一方的に無資力者に変更できるとすれば、貸主は債権を回収できなくなってしまう。
このことからも、契約上の地位の移転には原則として相手方の同意が必要となることは明らかだろう。

そのため、事業譲渡を行う場合には、その事業に付随する全ての契約の相手方の同意書を取得することになる。
これは、引き継ぐ事業の大きさによっては、大変な作業となる。
また、主要な契約において、相手方当事者の同意が得られないこととなれば、M&A自体が頓挫することにもなりかねない。
このような理由により、比較的規模の大きい事業を事業譲渡の形で処分することは、売主が難色を示すことが多い。

もっとも、買主からしてみれば、原則として資産のみを譲り受けることになるので、仮に簿外債務が存在する事業であったとしても、当該簿外債務は引き継がれないというメリットも存在する。
その他諸々のメリット・デメリットがあるため、事業の規模、移転すべき契約数や税制上のメリット(繰越欠損等)などを勘案したうえで、アセット・ディールを行うか、ストック・ディール(株式譲渡等)を行うかにつきストラクチャー選択を行うことになる。

以前、事業の一部を譲り受けるに際して、事業譲渡をストラクチャーの前提として協議を行っていた案件がある。
しかし、デューデリジェンスの過程で、当該事業に従事している従業員数名が以前賃上げ交渉を巡り、買収先会社と揉めたという事実が発覚した。
経営者インタビューの結果でも、仮に事業譲渡に際して新たに買主の会社との間で雇用契約を巻き直すのであれば、必ず賃金を巡り揉めることが予測されるとのことだった。
とはいえ、経営者の話では、当該従業員は当該事業において必須の人材であり、これらの従業員が辞めることになれば、当該事業が回らないことが予測された。

上記のとおり、雇用契約も労働者の承諾を得なければ使用者はその地位を第三者に譲渡することができない(民法625条1項)。
ところが、会社分割という組織法上のストラクチャーを用いれば、譲渡対象事業に主として従事する労働者については、原則として通知することにより一方的に雇用契約を移転できる(労働契約承継法3条)。

そのため、このケースでは事業譲渡ではなく、会社分割を用いることとなった。
もっとも、会社分割によって雇用契約が移転したとしても、移転された従業員が辞職してしまうおそれも存在した。
そこで、そのような事態が生じた際には、別途売主が保証を行う旨をM&A契約に盛り込んだ上でクロージングとなった。

 

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買収後の取引停止(スタンドアローン・イシュー)

2013年06月17日 | M&A

M&A実施時に考慮しておかねばならない問題として、スタンドアローン・イシューがある。
スタンドアローン・イシューとは、買収などのディール後に買収対象会社がグループ企業から分離することにより、売上高の減少や安価な仕入先が喪失してしまうことなどを意味する。

 

そのため、事業の継続にとって必要不可欠な原料供給やサービスの提供を従前のグループ企業から受けることができなくなることはないか、十分注意する必要がある。
その他、グループ企業において管理部門を統一していた場合などには、買収後に独自に管理部門を設ける必要が発生するため、別途販管費がかかることを考慮しなければならない。

また、管理に当たって特殊なソフトを導入していた場合には、買収後もそのソフトを利用することができるのかなどにつき、十分確認及び契約書に落とし込んでおく必要がある。
なお、スタンドアローン・イシューは、必ずしもグループ企業間に限った問題ではなく、買収対象会社の社長の個人的な信頼関係で取引を行っている得意先などは、M&Aによって経営者が変更するに伴って、従来までの取引を打ち切ってしまう可能性もある。

以前デューデリジェンスを実施した際に、契約書内にChange of Control条項(株主等が変更した際に契約を解除できる旨を定めた条項)があることを検出した。
当該契約は、会社の売上高の10%を占める主要な取引先であった。
そのため、買収後も当該会社が取引を継続するか否かにつき、買収対象会社の経営者にインタビューを実施したところ、買収後は当該会社と取引を行うことは難しいとの回答が得られた。

そこで、当該会社との取引より得られていた利益分(税効果考慮後)については、企業価値から控除すべきとの主張を行った。
これに対し、買収対象会社の売主から、当該会社と取引が継続されないという事情はM&Aを実施する買主の都合によるものであり、売主の企業価値から控除することは論理的でないとの回答がなされた。

確かに、スタンドアローン・イシューはM&Aによって生じる問題ではあるが、将来の収益性に影響を与える以上、DCF法などで考慮しないことは不合理である。
結局のところ、買収対象会社の売主が折れることとなり、取引停止となる取引先の利益については買収価格に考慮されることになった。

このように、契約書上からChange of Control条項を検出し、スタンドアローン・イシューを買収価格に盛り込むことができる事案もあれば、経営者との人的関係という検出しにくい問題点も多数存在する。
そのため、ビジネスの根幹を支える主要な契約については、M&A実行後も継続するのかにつき、十分注意する必要がある。

 

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