永続優良企業への「変化と継続」井上経営研究所

中小零細ファミリー企業版『長寿幸せ企業』の実践経営事典2019
なぜあの会社が短期間で無借金会社に生まれ変わったのか?

第3章(8)いまの会社の内部からどのようにしてお金を生み出すか、それが「資産負債対策」

2017年01月10日 | 第3章 経営危機の乗り越え方

章 経営危機の乗り越え方

(8)いまの会社の内部からどのようにしてお金を生み出すか、それが「資産負債対策」

 

 【日繰り資金繰り表】ができても資金繰りがショートするまでに時間のない会社の場合は、緊急手当てを施す必要があります。

 期日に支払うべき1000万円のお金が必要なのに、700万しか用意できないとき、あなたならどうしますか?
選択肢は二つです。会社外から不足する300万円を手当するか、その日に不足する300万円の支払うのをやめるかです。

  ここで落ち着いて、一息入れてよく考えてください。この段階で経営者であるあなたの目的はなんですか?


 支払期日をクリアーすることだけが目的であれば、どんな手段であっても会社外から手当すれば済むことですが、目的が経営再建・企業再生であれば、この選択では倒産への先送りでしかありません。倒産による犠牲者が経営者だけならまだ構いませんが、ここで会社外からの借り入れを起こすことによって、家族や親戚、友人があらたに連帯保証人になり、犠牲者を増やすことになります。

 易きを選択すれば、のちにその苦労がついてくるのは世の常です。あなたの会社が資金繰りに窮しているのは、今の経営力で必要なお金を生み出すことができないからです。

 資金繰りに困らないときは、経営者は新たに学んだり、やり方を変えることには消極的です。しかし、経営危機から脱出するために、経営者は必死になって基本的なの経営知識や能力を身につけながら、経営再建・企業再生するしか手はありません。ですから、【経営再建プログラム】を成功させた会社の多くが健全企業から、無借金会社など優良企業に変わっていくことが出来るのです。

 それでは、不足の300万円を【日繰り資金繰り表】の期日の支払いからジャンプさせていく優先順です。その際に最も重要なことは、「支払う順序を間違えない」ということです。どうしても支払額が足りなってしまう時は、企業によって若干の違いはありますが、原則的には次の順に支払いを延期する以外にありません。
企業の個別事情の判断については考慮していませんので、無料相談などでご相談ください。

 

  1. 借入金の返済

  2. 経営者の報酬

  3. 租税公課

  4. 電気・ガスなどの公共料金

  5. 事務維持に要する最低限の諸経費

  6. 買掛金
    仕入先や外注先などへ支払うべき残高を指します。中小零細企業では資金繰りが難しくなると、、厳しい苦情を言われないから、金融機関への返済より先に支払いを延期するケースが多く見受けられますが、順番は全く逆です。また、事前にお願いして、支払期日などを交渉することが原則です。倒産の危機ですからある程度信用が崩れるのはやむをえません。会社の信用が大きく崩れ信用をなくすと当然、以後の仕入や外注が難しくなり、場合によっては前金でしか仕入れられなくなる可能性もあります。そうすれば、資金繰りは今以上に悪化します。

  7. 従業員の給与の減額や遅配
    これを従業員の了解をなしにやることは厳に謹んでください。再建計画を説明しその協力を取り付けてください。彼がが知りたいのは、いつ払えるのかと今後会社はどうなるのかということです。

  8. 手形のジャンプ
     手形が2回落ちなければ、金融機関との取引が停止され、事実上の倒産となってしまいます。流通業の一部では、手形を落とせなくて金融機関の取引停止になっても、現金仕入れで凌いだという例もありますが、よほどの精神的な強さがある人でないとおすすめできません。

 

 支払い優先順序の中で最も大きなポイントとなるのは、「借入金の元金返済は一番最後」ということです。多くの経営者が間違ってしまうのはこの点です。なぜなら、「元金を返済しないと、金融機関から取引を停止されてしまうのでは?」という不安を抱いてしまうからです。

 金融機関との関係は重要取引(仕入)先との関係と全く同じです。特別な存在ではありません。お互いに信頼関係を築くべきですし、過度に恐れたり、敵対したりすることは間違っています。当然信頼すべき重要取引先ですから、現状を理解してもらい、お互いに言いたいことを言い、できないことをはっきりいうべきです。
 ですから絶対に無断で返済をストップしない。必ず事前に、金融機関へ相談する必要があります。

 

金融機関への元金返済猶予の交渉

(「経営改善プログラム講座」実務テキスト[注1]より転載修正加筆)

 金融機関へ元金返済猶予を相談する場合、具体的には以下の手順で行うことが望まれます。

 まず、金融機関の担当者へ電話をして、

 「申し訳ございませんが、今月は借入金の元金を返済できない可能性があります」

と丁重に申し出ましょう。

 元金自動引き落としの同日や直後に、それよりも優先すべき引き落とし事項がある場合は、

 「申し訳ございませんが、今月は借入金の元金を返済できない可能性があります」と電話で申し出た上で、

「今月は借入金の元金返済を止めるようお願いいたします。○月○日に別案件の引き落としがありますので、元金の引き落としはせず、そのまま口座に残してくださいますようお願いいたします」という旨の書面を送ります。

 いずれの場合においても、ケンカ腰は絶対にいけません。金融機関の担当者も人間ですから、味方になってくれるよう丁重に相談する姿勢が望まれます。 

 そうするとおそらく金融機関から、次のような答が返ってくるでしょう。

 「それは困ります。ぜひご返済ください」 

 しかし、それでくじけてしまっては目的を叶えることはできません。再度丁重に、なおかつ強い意志を持ってお願いしましょう。

 ただし、申し出を受け入れてくれたとしても、「上司と相談してみますが、どうすればご返済いただけるか説明してもらえますか」など、何らかの条件がつくでしょう。

 この場合、説明とは口頭での言い訳を意味するのではなく、

 経理的な数字がきちんと記載された、実現可能な「経営再建計画書」を作成・提出し、金融機関に協力してもらうこと

を意味するケースがほとんどです。

※「経営再建計画書」についてはこのあと第(12)節で詳しく解説します。

 

会社の内部からお金を生み出す「資産対策」

 支払い優先順序は、あくまで緊急時における苦肉の策です。支払期日を延ばす“延命方法”を述べただけであって、支払義務がなくなったわけではありません。いずれ、どれも支払わなくてはいけません。【経営再建プログラム】の対策は効果のあるものほどお金を生むまでの時間がかかります。経費削減対策でも早くても数ヶ月、対策によっては半年以上かかります。ということで、“延命”している間に何らかの形でお金を作る必要があります。もちろん、個人のお金は会社から戻してもらえることが【日繰り資金繰り表】ではっきりしない限り会社につぎ込むべきではありません。

 まずは「資産対策」で会社の内部からお金を生み出す方法を考えてみましょう。お手元に最近の決算書・勘定科目内訳明細書・総勘定元帳をご用意ください。貸借対照表(B/S)の左側の部分(資産の部)をご覧ください。この部分は大きく「流動資産」と「固定資産」に分かれていますが、今回の話は「会計学」の話ではなく、再建のための話ですのでB/Sの詳しい解説はやりません。

 ところで、「資産」とはどのようなものを言うのかおわかりでしょうか?

 企業会計における「資産」とは、主に次のようなものを指します。
 現金、預金、受取手形(現金の代わりに受け取った手形)、売掛金(売上先からまだ入金されていないお金)、商品・製品(在庫)、原材料、仕掛品(まだ完成していない製品や工事)、貸付金、土地、建物、建物付属設備、車両、機械工具、事務機器、特許権、有価証券(株式など)、出資金などです。

注目していただきたいのは

(a)「流動資産」の「売掛金」

(b)「流動資産」の「棚卸資産」

(c)「その他の流動資産」の「立替金・未収入金・仮払金・貸付金」など

(d)「固定資産」の「工具・器具・備品」など

です。 

 科目名は決算書で確認できますが、その個別明細や詳細については勘定科目内訳明細書・総勘定元帳を開いてみてください。

 経営危機に陥った会社の経営者は不足する資金を借りてくることと売上を上げることのみに腐心していますが、金額の多少はあるものの今ある会社の資産・負債からお金を生み出すことを忘れてはなりません。

(a)で洗い直しをしなければならないのは「売掛金」です。全ての売掛先をチェックしてみてください。失礼な言い方ですが、売掛先もあなたの会社と同じように
「うるさく言ってこない支払い先は放っておこう」
と考えているところがあるかもしれません。言い難いかもしれませんがこのような売掛先の気持ちは良く分かるといってもあなたの会社が倒産すれば元も子もありません。
 段階を追うことが必要ですが、ある程度強い請求態度を示さなければなりません。不良化している売掛金についても、その相手が倒産していれば別ですが、内容証明など法的請求してみると、意外とあっけなく振り込まれてくるケースさえあります。

(b)の「棚卸資産」は経営危機に陥っている会社の多くは過剰評価しています。なぜなら,金融機関へ提出する際一番粉飾しやすいのがこの科目だからです。この段階で必要なことは、金融機関に良く見せて、借り入れしようということより、不良化している棚卸資産を1円でも現金化することです。そのためには棚卸のための「ものさし」を決め、その「ものさし」にそぐわない商品は処分して、現金化する必要があります。

(c)の「その他の流動資産」には前払い費用・未収入金・立替金・仮払金などを一つ一つチェックしなければなりません。意外と目こぼししているものが出てきます。経営危機に陥っている会社はここに何年も同じ金額が固定しているものがあります。その多くは現金化できないもので実質ゼロ円です。税理士の指導で見せかけ上悪いといって残しておいている数字です。つまり、粉飾しているということです。しかし、中には、この人は払ってくれないのでということであきらめているケースがあります。請求していないので、法的には時効になっているかもしれません。しかし、ダメ元で内容証明を出しただけで支払っってもらったケースが幾つかあります。

(d)の「固定資産」の「工具・器具・備品」などについては決算書に付いている「固定資産台帳兼元きゃ償却計算書」をコピーして、店内や事務所・倉庫などを指差し確認するくらいのつもりで
「今、本当に必要なものなのか」
チェックしてみてください。埃をかぶった事務什器などが倉庫に場所を取って眠ってしまっていませんか?
 無駄な「棚卸資産」や「工具・器具・備品」を売却することは、単に現金を産むばかりでなく、作業効率をアップさせます。ひどい例では、不良化した固定資産を保管するために倉庫を賃貸している会社さえあるのですから。

 「こんなもの売れるわけない」と思い込んでいるものでも売れる可能性はあります。たとえば、壊れて使い物にならない機械であっても、日本のどこかには「オブジェにしたい」と考えるマニアがいるかもしれません。不良在庫でも、誰かが別の目的で欲しがっている可能性もあります。売り方もいろんな方法が考えられます。捨てるのにお金がかかると思っていたものが、思いもかけない値段で売れた例は枚挙にいとまがありません。 みなさんは「赤いクリップ」の話をご存知ですか? カナダのカイル・マクドナルドという人が、「1個の赤いペーパークリップを何かと交換してほしい」とインターネットで求めたのです。そうすると、クリップは魚の形のペンに化けました。その後、ドアノブ→キャンプストーブ→発電機→パーティーセット→スノーモービル→旅行→車などへと物々交換が発展し、最後には家を1軒得たのです。

 みなさんの会社の隅には、ほこりをかぶって眠っている備品はありませんか? 現在は、ヤフーオークションやメルカリなど便利なサイトがいくつもあります。インターネットのオークションに出品すれば、誰かが購入するかもしれません。今まで「役に立たなかったもの」がお金になるのです。今はゴミを捨てるのにもお金がかかる時代。たとえ数千円にしかならなくても、要らないものが現金に化けるのでしたら、すぐに実行すべきです。
 ともかく前に進んで成功体験の端緒のつもりで取り組んでみてください。

 このうち、売却の候補としたいのは、車両、機械工具、事務機器、有価証券、そして不良在庫です。土地など高額資産については、再建のスキームで大きな鍵になりますのでここでは対象にしません。 もちろん、これらをすべて売れというわけではありません。全部売ってしまったら、その後の経営が成り立ちません。

 売るべきものは、
「売っても今後の経営に大きな支障を及ぼさないもの」
に限ります。

[注1] 著者:井上雅司・水谷一生 発行:有限責任事業組合/小規模企業経営支援協会 2008年

次回は、第3章 「経営危機の乗り越え方」 (9)経費削減対策 です。

 このブログ、「中小零細ファミリー企業版 『長寿幸せ企業』の実践経営事典2017」は井上経営研究所が発信しています。

 井上経営研究所(代表 井上雅司)は2002年から、「ひとりで悩み、追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、中小企業・小規模零細ファミリー企業を対象に

  1. 赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業の経営再建や経営改善をお手伝いする「経営救急クリニック」事業
  2. 再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、無借金優良企業にまで一気に生まれ変わらせ、永続優良企業をめざす「長寿幸せ企業への道」事業
  3. 後継者もおらず「廃業」しかないと思っている経営者に、事業承継の道を拓くお手伝いをし、「廃業」「清算」しかないと思っている経営者に、第2の人生を拓く「最善の廃業」「最善の清算」をお手伝いする「事業承継・M&A・廃業」事業

 に取り組んでいます。詳しくはそれぞれのサイトをご覧ください。 

 1.「経営救急クリニック

 2.「長寿幸せ企業への道

 3.「事業承継・M&A


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