第1章 あなたは何のために、何処に行きたいのか ー経営理念・行動規範のつくり方
(1)「経営理念(フィロソフィー)」は企業のすべての判断や行動の大本になるもの
「経営理念(フィロソフィー)」とは何でしょうか?
「企業理念」「使命(ミッション)」「目的地(ビジョン)」「行動規範(モラルコード)」「信条(クリード・クレド)」「社是・社訓」など、会社によって使い方や組み合わせはそれぞれです。
「理念」を広辞苑で調べてみますと「理性から得た最高の概念で全経験を統制するもの」とあります。そうすると、「企業理念」や「経営理念」は企業や経営においてすべての行動の大本となるものと考えても間違いないでしょう。
私が経営再建の現場で『経営再建プログラム』を終了して『俯瞰塾』に入会された会員様と最初にお手伝いさせていただく仕事は、企業が何のために存在するかという「使命(ミッション)」や何処へ行くかという「目的地(ビジョン)」を柱とする「経営理念(フィロソフィー)」の再構築と「信条(クリード・クレド)」、「行動規範(モラルコード)」への落とし込みです。
「経営理念(フィロソフィー)」が明確でない企業が『長寿幸せ企業』であることは絶対にありえないと確信しています。それどころか経営環境の変化の厳しい現代においては、これらを持っていない企業が健全な状態で10年以上存続することさえ難しいと思います。
学術的に正しいかどうかわかりませんが、私は会員様に『経営理念』とは、
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企業が何のために存在するのかを明確にする「使命(ミッション)」
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現経営者が経営人生の最終到達地としてめだす目的地がどういう状態であるかを文章で描く「目的地(ビジョン)」
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②を達成するためにおおまかな必要な数字を「経営目標(ターゲット)」
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①から③の計画・実行・判断を支える「行動規範(モラルコード)」や「信条(クリード)」
以上をひっくるめたもので、これから正常企業から優良企業、さらに『長寿幸せ企業』を目指す上ですべての判断や行動の大本になるものだと申し上げています。
①~④を包括した「経営理念」が明確になってはじめて、「目的地(ビジョン)」へ行くための準備や長期的計画である「戦略」やその戦略目的を達成するための具体的な方法、つまり「戦術」が構築されるのです。
経営理念といえば、ジョンソン・エンド・ジョンソンの「我が信条(Our Credo)」の思い浮かべます。1887年創業の長寿企業でありながら、2015年の時価総額ランキング(注1)で依然として8位にランキングされています。1位のアップルなど上位100社にはマイクロソフト、サムスン、テンセント、フェースブック、アマゾンなど急激に拡大した企業が名を連ねています。しかし私はこれらの躍進企業が10年後、20年後にまだランキングに残っている可能性はジョンソン・エンド・ジョンソンやGE、プロクター・アンド・ギャンブルなどの長寿企業より遥かに少ないと思います。
その違いは明確な理念があるかどうかと、経営理念で明確に企業の使命と行動規範が示されているからです。「中小零細企業」でも長寿になると同じですが、ジョンソン・エンド・ジョンソンも130年の間に企業を破綻に追いやるような大きな事件や不祥事も度々起っています。そこを乗り越えるのに必要な物が経営理念とくに使命と信念・行動規範です。ジョンソン・エンド・ジョンソンのタイレノール毒物混入事件(注2)は有名ですが、これを乗り越えられたのも経営理念「我が信条(Our Credo)」があったからです。
じっくとお読みください。その後、あなたの会社の経営理念についてもう一度考えてみましょう。
「我が信条(Our Credo)」
我々の第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、
看護師、患者、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対する
ものであると確信する。顧客一人一人のニーズに応えるにあたり、我々の
行なうすべての活動は質的に高い水準のものでなければならない。適正な
価格を維持するため、我々は常に製品原価を引き下げる努力をしなければ
ならない。顧客からの注文には、迅速、かつ正確に応えなければならない。
我々の取引先には、適正な利益をあげる機会を提供しなければならない。
我々の第二の責任は全社員―世界中で共に働く男性も女性も―に対する
ものである。社員一人一人は個人として尊重され、その尊厳と価値が認め
られなければならない。社員は安心して仕事に従事できなければならない。
待遇は公正かつ適切でなければならず、働く環境は清潔で、整理整頓され、
かつ安全でなければならない。社員が家族に対する責任を十分果たすことが
できるよう、配慮しなければならない。社員の提案、苦情が自由にできる
環境でなければならない。能力ある人々には、雇用、 能力開発および昇進の
機会が平等に与えられなければならない。我々は有能な管理者を任命
しなければならない。そして、その行動は公正、かつ道義にかなったもので
なければならない。
我々の第三の責任は、我々が生活し、働いている地域社会、更には全世界の
共同社会に対するものである。我々は良き市民として、有益な社会事業
および福祉に貢献し、適切な租税を負担しなければならない。我々は社会の
発展、健康の増進、教育の改善に寄与する活動に参画しなければならない。
我々が使用する施設を常に良好な状態に保ち、環境と資源の保護に努め
なければならない。
我々の第四の、そして最後の責任は、会社の株主に対するものである。
事業は健全な利益を生まなければならない。我々は新しい考えを試み
なければならない。研究・開発は継続され、革新的な企画は開発され、
失敗は償わなければならない。新しい設備を購入し、新しい施設を整備し、
新しい製品を市場に導入しなければならない。逆境の時に備えて蓄積を
おこなわなければならない。これらすべての原則が実行されてはじめて、
株主は正当な報酬を享受することができるものと確信する。(注3)
(注1)フィナンシャル・タイムズ・グローバル500
(注2)1982年に米国シカゴで第三者がタイレノール(頭痛薬)に毒物を混入し7人が死亡した事件
(注3)ジョンソン・エンド・ジョンソンのHP企業情報より転載
井上経営研究所(代表 井上雅司)は2002年から、「ひとりで悩み、追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、中小企業・小規模零細ファミリー企業を対象に
- 赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業の経営再建や経営改善をお手伝いする「経営救急クリニック」事業
- 再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、無借金優良企業にまで一気に生まれ変わらせ、永続優良企業をめざす「長寿幸せ企業への道」事業
- 後継者もおらず「廃業」しかないと思っている経営者に、事業承継の道を拓くお手伝いをし、「廃業」「清算」しかないと思っている経営者に、第2の人生を拓く「最善の廃業」「最善の清算」をお手伝いする「事業承継・M&A・廃業」事業
に取り組んでいます。詳しくはそれぞれのサイトをご覧ください。
1.「経営救急クリニック」
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2.「長寿幸せ企業への道」
3.「事業承継・M&A」