50女とケンタくん

2017年03月26日 | 日記
施設に来ているケンタくん10歳。

なぜか私にベッタリ笑

ケンタくんは軽度の発達障害と軽度の難聴がある補聴器をつけた男の子。

以前なら私はケンタくん等、発達障害の子供達を担当していたけど、今は身体の障害を持った女の子達を担当することが多い。

そこはオムツなど排泄介助があるため、ケンタくん達とは違う部屋にいる。

でもケンタくんはこのおばちゃんに会いたくて笑、何度も部屋の扉を少し開けて「たかぽんさーん」と声をかけてくる。

その度に男性職員が追いかけて来て、ケンタくんを連れて行ってしまうのだが。

ケンタくんよ、こんな白髪で膝痛で指はヘバーデン結節のおばちゃんの、いったいどこが良いんだい。

でもこの前、1時間だけだが久しぶりにケンタくん達の部屋を担当した。

「たかぽんさん、遊ぼう」
「たかぽんさん、ずっとこっちに来ててね」
「たかぼんさんたかぽんさん」

ケンタくん、慌ただしく一人で大興奮。

家族ごっこみたいな遊びをして、Nちゃんがお母さん、私が長女、ケンタくんが弟、Mちゃんが次女という設定だった。

家族設定はNちゃんが決めた。

50過ぎのおばちゃんが長女。

そして一つの布団に4人で寝る。

と、お母さん役のNちゃん、

「そうだわ。買い物を忘れてたわ。ちょっとお母さん、買い物行ってくるわね」

「あらお母さん、こんな真夜中に何を買ってくるの?」

と、おばちゃん長女が聞くと、

「ええと…」とNちゃん母さんが一瞬考えて、

「ポテトチップスよ」

と答えた。

ポテトチップスて笑

Nちゃん母さんがいそいそと部屋の隅っこに買い物に行った。

そんな中、楽しくて嬉しくてしょうがない様子のケンタくん。

「ねぇ、たかぽんさんて何歳?」

ケンタくん、それを聞くのかい。

「50歳だよ」

弱冠サバを読んだが、50も53も小学生からしたら同じもんだろう。

「えー、本当の歳は?」

え、本当の歳て…

「本当に50歳だよ。まあ本当は50をちょっと過ぎてるけどね」

にこやかに説明するおばちゃん。

「え…」

ちょ、驚いて声が出なくなったような「え…」て、ショックを受けたような、悲しいような、或いは哀れみを感じたようなその表情はなんだいケンタくん。

哀れな目で見られた50歳ていったい…


「ただいま。買ってきたわよ」

Nちゃん母さんが帰って来た。部屋の隅っこから。

「お母さん、ポテトチップスは買ってきたの?」

おばちゃん長女が布団の中から声をかける。

「ええ、買ってきたわ。ムシャムシャ…」

Nちゃん母さん、エアーポテトチップスを食べ始める。

「さあ寝ましょう」

Nちゃん母さん、

「さあ子供達、電気を消すわよ、カチッ」

と、布団に入る。

「たかぽんさん、たかぽんさん、楽しいねぇ」

ニコニコして隣に寝てるケンタくん。


どうやらケンタくん、50ショックから立ち直ったようである。