「北の山・じろう」日記

内容は主に時事問題。時々株式投資関係の記事も交じります。

クルスク戦線、時間が経過して見えてきた開戦理由<ウクライナ紛争2024/08/20

2024-08-20 19:29:55 | 中立の視点で見るウクライナ紛争

①ウクライナの越境攻撃で攻守逆転、ロシアは防衛態勢の強化に奔走
2024.08.19 Mon posted at 14:42 JST
https://www.cnn.co.jp/world/35222896.html
2024.08.20
クルスク方面の戦い、ウクライナ軍が戦場の主導権を握って支配地域を拡大
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/in-the-battle-for-kursk-ukrainian-forces-take-control-of-the-battlefield-and-expand-their-territory/


ウクライナ軍のクルスク侵攻作戦は、ほぼ誰もが戸惑ったと思います。
軍事的に意味のある作戦とは思えないからです。
現在、主な戦場だけでザポリージャ戦線、ドネツク戦線(南部・中部・北部)、ハルキウ戦線(東部・北部)とこれだけあります。
しかもどの戦線でもウクライナ軍が劣勢の戦いが続いています。唯一互角なのがハルキウ北部戦線です。
これだけの戦線を抱えていて、新たにクルスク侵攻作戦を開始する意味はありません。
他の戦線の劣勢を深めるだけだからです。

しかし、政治的目的を考えると開戦理由が分かります。
①のCNNの報道を期待した作戦であることが分かります。
ウクライナ国内では、西ウクライナの国民は「大戦果」に熱狂しています。
領土割譲付き和平論は、どこかに吹き飛びました。
ハルキウ北部へのロシア軍の越境攻撃で高まっていたゼレンスキーと軍への批判も称賛に変わりました。
この戦果を強調して、長距離ミサイルでのロシア領への攻撃解禁を西側に迫っています。

ロシア報復の脅しは「はったり」、越境攻撃巡りゼレンスキー氏
By Dan Peleschuk
2024年8月20日午前 9:08 GMT+92時間前更新
https://jp.reuters.com/world/ukraine/OONZG7NI4NL7HAGPEDOYNFGZXE-2024-08-20/

国内の戦意を高揚し、ゼレンスキーへの支持を回復します。西側のメデイアの注目をクルスクに集中すれば、他の戦場でのウクライナ軍の劣勢は隠されて、クルスク州でのウクライナ軍の進撃ぶりが際立つという仕掛けです。

おそらく現在敗勢ともいえるドネツク州中部の戦場(トレツク方面とポクロウシク戦線)での抗戦は、もう放棄していると思います。援軍を送らなければ、持ちこたえられません。援軍を送るどころか部隊を引き抜いています。
ハルキウ北部戦線からも精鋭部隊を引き抜いています。

他の戦場を放置して、クルスク侵攻作戦に全力を投入しています。
全体のバランスやトータルでの勝敗は度外視しています。
今だけ勝っているように見えればいい・という究極の「その日暮らし」作戦と言えます。

ここに来てやっとクルスク侵攻作戦の目的らしきことを発表しています。
『ゼレンスキー氏、クルスク州の92集落、1250平方キロ超を制圧と発表 ロシア西部への越境攻撃2週間』
2024/8/20 09:30
https://www.sankei.com/article/20240820-J2DYFOSSSBPNDHBKWNGBFZ4EPY/
『 ゼレンスキー氏は越境攻撃の目的に関し、露軍の攻撃の脅威からウクライナ領土を遠ざけるための「緩衝地帯」を設けることだと説明。
 同時に、クルスク州の占領地域は「交換資金」だとも表現し、プーチン露大統領を停戦交渉に引き出して譲歩を迫る材料とする考えも示唆している。』

全体的にみると圧倒的優勢にあるロシアが、少々クルスクの領土を占領されたところで、停戦交渉に応じるはずもなく、ましてや譲歩するはずもありません。
ス-ムイ州の外側に「緩衝地帯」を設けることには安全確保の理由は、あります。

しかし、それだけのために他の戦場全部を「がら空き」に近い状態にして、何かメリットがあるのか❓
そこから言えることは、現在ロシアが占領している地域は事実上放棄すると言っているのと同じです。

現在ロシアが占領している地域はロシア領として認め、クルスク州のウクライナの占領地を仮にウクライナ領にしたところで、差し引きウクライナの大赤字です。

結局、クルスク州の戦場にスポットライトを集中させるための政治的な作戦であると言わざるを得ません。

作戦開始から2週間が経過して、ロシア軍の本格的な反撃は、これから始まります。
果たしてロシア軍の反撃を退けてクルスクの占領地を維持できるかどうかさえ不明です。
ロシアが現在、占領している地域は確固たるものでありウクライナが奪還することは、事実上不可能と言えます。

まるでクルスク州でのウクライナ軍の優勢が、全部の戦場でのウクライナ軍の劣勢を挽回すると言いたいように見えます。
しかし現実には、トレツク方面とポクロウシク戦線でロシア軍はウクライナ軍を駆逐しつつあります。
特にポクロウシク戦線の状況は悪化しており、あるいは年内のうちにロシア軍は、ドネツク州の西部の州境まで突破するかもしれません。ポクロウシク戦線限定で言えば、ロシア軍の完全勝利に終わりそうです。
トレツク方面も相当苦しいです。
こちらも年内にはウクライナはトレツクを失うでしょう。それだけでは済まない可能性すらあります。

2~3か月限定でウクライナ軍が優勢に見える状況を演出したところで、何の意味があるのか❓
2~3か月後には、ロシア軍はドネツク州の西部の州境まで突破する・と個人的には推測しています。

その時、ゼレンスキーは何というのでしょうね❓
「ドネツク州は放棄した!」
「だって❓ロシア領だから!」
と主張する心算なのかもしれません。
(ロシア領を放棄しても負けたことにはなりません)


※関連記事目次
「中立の視点で見るウクライナ紛争」の目次⑥
https://blog.goo.ne.jp/kitanoyamajirou/e/e2c67e9b59ec09731a1b86a632f91b27



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