債券・株・為替 中年金融マン ぐっちーさんの金持ちまっしぐら 

ウォールストリートで20年、生き残ってきたノウハウを開示、日々のマーケット・社会情勢を分析します。

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CDO惨禍・・本当の原因はバーゼルII?

2007-11-12 10:09:28 | サブプライム

図らずもこのブログの予想がことごとく当たっていますね、とのメールがたくさん来ます。有難うございます。しかし、これは当たっているというより当然と言えば当然のことなのです。

先週みずほ証券が当初ほとんど保有していない、と宣言していたCDO関連の債券で1000億円の損失を出したと発表、新光との合併を延期するとしまた。

野村が損失を発表したときに体制的には野村は健全な方で、債券部分のプリンシパルを保有していなかったのがラッキーでした・・・とコメントした訳ですが、その通りだった訳です。彼らは自分で組成する力がなく、野村のようにプリンシパルでエクイティーを取りにはいかなかった。その分安全と信じていたシニア債券を在庫のたくさん抱えていただけです。

アメリカの企業もご存知の通り、茶番の繰り返しで、CITIの発表額の変遷を追っても当初の10億ドル(6月)→27億ドル(8月)→200億(10月)ドルと損失額の発表をそれこそ倍倍ゲームで増やして来ました。しかし、いかんせんCDOの実態が不明なのでこの損失額で終わる保証は何にもない、ということです。

その証拠に・・・FRBの観測記事として、CDOの損失額は1兆ドルを超えるかも知れない、という話が先週出てきた。これ、125兆円!!ですぜ・・・・

ただし、実感としてはそれほどわたしには違和感はないのですよ。わたしがいたベアースターンズやメリルリンチの推計でみると、CDOの発行額は年間およそ3500億ドルと書いていた。それだけ大きな市場なので流動性があるのですよ、といってCDOを売っていた訳だけれど、これで、年間約40兆円ですよね。これを10年は売り続けているので、全体の損失額が125兆円としてもあまり違和感はないでしょ?? 数字的には結構いい線を行っている可能性があるのです。

CDOの仕組み上の問題、分散した債権が散り散りになっているため名寄せができず、企業の倒産と違って差し押さえに時間がかかること。更に分散した「寄せ集め」に対してローンを出している為に、お金を出したシティーなどの銀行はどんな不動産に対するローンなのか、その現物を見たことがない。従ってどういう価値が残っているか自分では判断できない問題等等、こちらでは何度も説明してきました。

しかし、これが一企業に対するローンをCDO仕立てにして持っていたとすると・・・M&Aではよくやりますが・・・

エクイティーに買収者が5億円をいれ、残り95億を銀行が融資をしてCDOを組成した場合。キャッシュフロー、構造上はCDOそのものです。

そして、その企業が倒産したとすると、すべてがゼロになった・・・とも言い切れない。
すなわちその企業の暖簾代、また、創業100年でずっとそこで商売をしていたような場合、大変なお得意様を抱えているかもしれない。つまり帳簿に載っていない資産が残されている可能性があるので、資金繰りが悪くなって倒産したとしても・・・、

95億円のローンの半分を一度銀行にあきらめてもらって、そのうち40億円を株式化して、当初の5億円とあわせて新株に切り替える・・引き続き残った銀行のローンを50億円返し続ける訳ですが、上手くいって、また、新しいスポンサーなどが見つかって、その株の価値が何倍にもなれば、融資した銀行はそれがたとえCDOであっても毀損した40億円のいくらかを新株の売却益で埋められるかもしれない、というきわめて希望の残る再生計画が成り立ちます。

一方分散型CDO・・・だから安全だ、とうたったわけだが・・・はどうなのか。
すべてサブプライムということはなく、実際はそれらと同じく低格付けのレバレッジドローンを組み込んでいます。サブプライムが飛べば、所詮同じ格付けゾーンのローンですから同時に劣化するのは考えれば当たり前。

金融機関の融資条件がいっぺんに厳しくなるので、大多数のCDOでサブプライムがとんだあとに、同格付けゾーンのローンがやはり飛んでいます。そして、飛んでしまったCDOの株式には先ほどの例のような企業の暖簾代であるとか、お得意様とか、帳簿に載っていない債権、といった価値というのが皆無な訳です。いくらローンを株式に切り替えたところでその中に入っている債権自体は飛んでしまったわけですから、回復の見込みがない、すなわち本当に「無くなって」しまった、と言う訳です。

分散した、とはいえ、それは数を分散しただけで、レバレッジドローンと言うある一定の商品ゾーンに集中投資をしていたというのがCDOの実態な訳です。ここを見誤っている投資家が多すぎる。

分散が働くのはお互いにコラレーションが低いものを持つというのが前提で、例は悪いですが・・・

錦鯉と、金と、豚の先物とかに分散していたなら、多分相関係数は低いんでしょう。これが本当の分散ですね。

でも鶏の卵、とうずらの卵と、ダチョウの卵をロングにしていたら、恐らく卵になにか起きたときはいっぺんに問題が発生する可能性がありますね。みんな「卵つながり」になってしまう。CDOのローンポートフォリオはまさに「卵ロング」状態だった訳です。同じ低格付けローンなのに、業種が分散しているから安全です、ひとつの銘柄は3%以上投資しませんから、とやった。

しかし、CCC相当のサブプライム(住宅セクターローン)が飛べば、同じCCC格付け相当のローンに対する与信が厳しくなる・・・・というのは当たり前だと思われませんか?? それを5000銘柄に分散したからと言って、これを安全と考えるのは間違いです。

現場で組成していた立場で言わせてもらうと、そういうリスクを指摘すると、「いいですよ、他で買いますから」、という投資家ばかりだったのですよ。

ローンポートフォリオだけだと、仮に上手く差し押さえてもそれを売却するのに半年以上かかります、債券だったらおなじCCC格付けでも瞬間的に叩けますから、半分くらいアセットとして入れてみたらどうでしょう、というと「債券は担保がついていないからだめ」、とおっしゃる。

かんべえ先生がご指摘の「コンプライアンス不況」、要するに「投資判断における脳死状態」がこういう問題を引き起こす訳です。それは日本の銀行だけでなく欧州も一緒でした。

溜池通信・・・http://tameike.net/

長くなりますが、これにはどうも根本的な原因がありそうです。もちろんだから許されるということではないのですが・・・・・ひとつ大きな原因は・・・これもある種の「脳死コンプライアンス惨禍」と呼べるのですが、バーゼルII,BISによる自己資本比率の新規性にあることは間違いありません。

簡単にいうと、今までコーポレート、すなわち企業向けの融資や債券のリスクは一律で100%のリスクウェートでした。

AAAのトヨタも、BBしかないGMも全部100%を基準としますです。これはこれで妙なルールなんですが、一方で、同じリスクウェート100%を食うなら、たとえ格付けが低くても、与信リスク管理に自信があるなら、それを取りにいった金融機関はある訳です。

同じリスクウェートが100%でトヨタが2%のリターン、GMが6%のリターンだったら、俺はGMが潰れないという自信があるから6%をとりにいく、という輩がいた訳です。

所が新しい規制は、AA以上のコーポレートは100%だけど、BB格付けのコーポレートは500%かけるぞ、とやった。それ以下はもっとリスクウェートをあげなければいけない。となると、低格付けのリスクウェートを背負って、更にリターンを得るのは万が一の場合大変なので・・・・

利幅の薄い高格付けの債権を量で集めてカバーするしかない、となったのです。

しかし・・・これも考えればすぐ分かることですが・・・高格付けのGE,ダウなどの優良企業は資金が潤沢ですからそれだけのローンを調達する筈もなく、飛びついたのがこのCDOと言われる証券化商品のAA,AAAクラスだった、という訳です。

従って作れば売れた。中身、関係ない。とにかく量を確保しろ、ということの顛末がここに至った訳です。結果的にそれが125兆円くらいまで損失がふくらんでいてもマッタク不思議ではありません、と言う訳ですね。


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22 コメント

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Unknown (名無しSUN)
2007-11-12 10:26:34
日本も欧米も、著名金融機関にまともな会社はないと言うことですか。ふー。
時間軸も問題 (PACI)
2007-11-12 10:51:00
コメント読ませていただいております。
今回の問題のもうひとつの側面は、これらの損失を
一度に償却しなさいというところにもあるような気が
します。もちろん、損失の総額(再三ご指摘の通り
これがちゃんと計算できないわけですが)をいまさら
隠蔽などできませんから、はっきりとしたものは
全部いっぺんに償却しなければならない。
かつての日本の不良債権問題みたいに、業務純益
の範囲内での償却などとはいっていられない。
悪いことに、ローンはせめて元本を少しずつリスケ
しながらでも返していれば、なんとでも評価できるが、CDOで値段がついてしまったもの(例えば20%とか)は、その価格あるいはそれ以下で評価
するしかないんですよね。
CDO惨禍・・・ (ペルドン)
2007-11-12 13:17:10
「有識者」の肩書きがが附いた途端、ぐっちーさん張り切って・・・

友人にカサノバがいて、愛人の数は両手では数え切れない。ここまでは珍しくはない・・・
が、
何たる不幸と彼は言う。
何とかの日が計ったように同じで、何人愛人がいても一人と変わりない・・
歯ぎしり(ぐっちーの)・・・
と似たものですな。

こんな場合はローマ人を真似てノンビリしましょう。
彼等は宴会で飲み食いしながら、決められたテーマを参加者一人一人が論じ、論評した(ハリウッド映画とは違う)。人気があるテーマの一つに
『鶏と卵はどちらが先に生まれたか?』
金と欲望はどちらが先か、と共通ではありませんか?

ぐっちーさんには
『一日の内で○交に最も適しているのは何時か?』
○にお好きな文字を・・・




リスク回避 (顧客心を捉える!儲かる仕組み請負人)
2007-11-12 13:47:26
リスク回避のための多角化は、非関連多角化といわれます。今回の場合、顧客信用度において関連していたのですね。

言われてみると、なるほどと思うのですが、言われないと分からないです。


また、PACIさんの、時間軸のご意見も参考になりました。
株式の (胡蝶蘭)
2007-11-12 14:12:05
わかりやすい説明ですね。
おかげさまで、バーゲンセールで買えそうです。
ありがとうございます。
Unknown (Unknown)
2007-11-12 14:33:10
損した企業は出てきてますが、
儲けた企業がでてきませんね?
ゴールドマンの1人勝ちと
低所得者を利用したローン会社達
が結局得したのですか?
実態は壮大な国際金融資本のマネーロンダリング
なのでは。結局は国民の税金で補填という
いつものシナリオになると思います。
規制・規制・コンプライアンス (まさき)
2007-11-12 17:46:12
まさにグッチさんのおっしゃる通りです。矛盾に規制をかけると正常に戻る
場合もありますが、もっと大きな矛盾が
発生する場合の方が多いです。
今日本もコンプライアンス・コンプライアンス(内部統制)が合言葉になっておりますが社長除いた内部統制など意味がありません。
昔は(と言っても江戸時代まで)は責任
とって切腹(責任とって死んだ人でまで
非難するような度胸は我が国の美風としてありません)がそのような規範がない現在においては、お言葉を返すようですが
むしろそのような姿か゜当たり前であり
そして首謀者だけでなしに全員が不幸に
なる方程式です。
いつも貴重な世間の金融状況を刻々とお伝えいただき感謝の念に耐えません。
それと (まさき)
2007-11-12 17:51:32
日本はダメですが亜米利加も欧州もダメ
だったのには勇気つけられます。
ブリックスが表面上は活気を帯びているのが唯一の希望です(もつとも中にいる人々の大多数はめぐまれていないと思い
ますが)。
泥まんじゅう (popo23)
2007-11-12 19:09:25
ごめんなさい、私の頭ではCDOとやらのローマ字が出てくる時点で理解できません。

赤・青・黄色の泥まんじゅうシリーズを買ってくれる人が大勢いたので、10年間作ってたら食あたりで不買運動が広がったということでOKですか?ついでに、泥まんじゅうの入ったお買い得パックも、買ってくれる人・現物交換してくれる人が居なくなったと?

その後は、泥まんじゅうの賞味期限ルールを公開して、格付け料を会社から徴収していた、格付け会社が悪いという話になるんでしょうか?

日本だと、マスコミに袋叩きされた泥まんじゅう会社は社長が辞めて会社も潰れるけど、アメリカはどうなるんでしょう。100兆円の損害賠償請求裁判が、泥まんじゅう会社へ起きたりすると面白いですネ♪
Unknown (JAS○A○改め(JA○)(○A○))
2007-11-12 19:23:05
こんばんは、ぐっちーさん。
お久しぶりでございます。

「卵のお話」…深く感動いたしました。
分散投資といえば「株・債権・不動産」が通説ですが、そもそもコレだって見事な「卵つながり」ということで。

>錦鯉と、金と、豚の先物…
確かにココまできますと相関性はないのでしょうから、大袈裟とはいえ、決して悪い例えとは…。
世に分散投資を認識させるなら、コレくらいの派手な例えが欲しいものです。

>かんべえ先生がご指摘の「コンプライアンス不況」、要するに「投資判断における脳死状態」がこういう問題を引き起こす訳です。
二つとも今年の流行語(今のトコ「流行」はしておりませんが…)にノミネートされてもおかしくないほど見事なネーミング。

しかし「やりすぎ感」ありますね~。

それにしても各種の規制がイノベーションを生むことはない、ですね(当たり前ですが…)。

これらの要因で、市況の悪化が引き起こされているとまでは思い至らず、でした。

それにしても本編は力作です。
(毎度毎度)貴重なお話ありがとうございました。

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