梯子(ワンタッチラダー)を小屋から出して山へ入る準備
きのう武蔵五日市駅から入った養沢というところで山仕事をした。50年ぶりである。ひこばえ句会で知り合った森林インストラクターのKさんと一日付きあってみようかと思ったのである。参加者が10名。最近にない大人数とのこと。
主な仕事は枝打ちと聞いていた。ぼくは高い所が苦手だしそれはやったことがないので「後方支援でいいですか」と聞くと「火の番でもいいですよ」という。
150段ある急な石段を上り、八幡様に安全祈願をして現場に着くと、後方支援、すなわち落ちた枝の整理などは意味がないとことに気づく。
火の番といっても焚火は昼飯のときだけで済めば水をかけて消す。話が違うよKさん。
コーディネーターとしての弁舌さわやかなKさんにすっかり乗せられていた。彼は句会でもことの本質に関わるいい発言をして会を盛り上げている。
ここの枝打ちは幹から飛び出た部分を残さない方式。森林用語で「座を残さない」「枝座を残さない」という。
枝を上から切ると下の樹皮が下へ破れて垂れる。傷つく面積が広がる。それはご法度で下から鋸をまず使い2割ほど切ってから上から切り落とす。
幹の面と切った枝の木口の面とが平らになるようにするにはいくぶん幹を抉るように切ってちょうどいいらしい。
それを下から熟練者たちが細かく指摘する。
安全ベルトで腰を確保しているのだから両手を離して体と幹との間にもっと間隔を取れとか、一挙手一投足に指示を受ける。
わかっちゃいるが怖いんだよ。
ワンタッチラダーを使い、最高5mまで登って枝打ちをする天地わたる。
熟練者はさらに3mは登る。梯子を離れて脚を巻きつけて登るのは無理、きっと落ちる。
昼飯は現場から少し上った焚火場。杉の枯葉をバリバリ燃やして太い木を載せる。
飯を食ってしばらくのんびりしていると上から杉があとこちに落ちてくる。
枯枝をばさばさ落とし杉赤し
という感じ。
午前、午後で実働3時間半ていど。スタミナがもって恥をかかずに済んだ。
現場はとにかく急。斜度30度はありそう。傾斜を2m登るのもたいへん。下るときは滑るのでもっとたいへん。
50年前父とやった間伐作業も傾斜が急で上り下りに難渋したことを鮮烈に思い出した。
日本の山林はどこも急で材木の採算がとれないということが一つ理由で産業の座からとうに後退した。
ぼくのやった杉5本ていどの枝打ちは「蟷螂の斧」という気がしてならなかった。
森林ボランティアの作業はまさに「蟷螂の斧」だと思います。ただ、森林ボランティアのもっとも大きな役割は、その作業量ではなく、山仕事を体験することにより「荒廃している日本の森林や林業の現状を知ること、そしてそれを周囲の人達に伝えること」だと思います。
これにより、その解決への具体的な方策を市民レベルで考え、しいては国の政策につなげていく。こんなことを考え我々は活動しています。何年先になるかわかりませんが。
「森と人の会」HP http://morihito.la.coocan.jp/
森林ボランティア「森と人の会」は1999年発足、今年20年目になります。
我々がこんなに長く活動しているのは、環境保全にわずかながら寄与しているという思いと、それ以上に「山に入りその豊かな自然に触れる」、「山仕事の深さ、面白さ」によります。
ご関心のある方がいましたらご連絡ください。お待ちしております。