天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

逢坂剛『バックストリート』

2021-01-23 06:02:04 | 

毎日新聞社 (2013/6/25)


内容
スペインものを得意とする著者が世に問うた、ドイツを隠し味にしたミステリーである。フリー調査員・岡坂神策は近所のタブラオ(フラメンコ酒場)に通ううち、不審なカップルの尾行に気づく。やがて彼らを見張る公安の女性刑事まで現れ、事態は一挙に緊迫する。一見無関係に感じられる出来事の数々に、岡坂も愛読するドイツロマン派の作家クライストという意外な串を通すと、巨大な陰謀の存在が浮かび上がるという凝った仕掛けだ。
誰かが死ぬわけでも大立ち回りがあるわけでもない物語の華は、機知に富んだ登場人物の会話にある。選び抜かれた言葉の掛け合いをも堪能できる、大人のミステリーである。

読書メーターにおいて、ますずし氏は、

結局なにを訴えたかっとのか。フランメンコ、卵子提供、クライスト? どれも自分とはとても遠いところにある情報でさっぱりわからん。読み進めるはまさに苦行だった。
myunclek氏は、
事件の背景が少々無理があったのと、結末が余りにも呆気なかった。しかし、流石は逢坂剛の筆。スペインの香りが漂う東京を舞台に、お洒落な都会の物語を堪能した。岡坂と桂本の絶妙なコンビ、まだまだ続いてほしいものだ。
と言い、二人ともそう評価していないが、584ページという長さを嫌にならずに読めたということは作者に文章力と楽しませるエスプリがあると思った。
逢坂剛をはじめて読んだが、博識を感じた。ドイツとスペインについて。フラメンコの踊子がバイラオーラ。踊る場所がタブラオ、踊りの種類にセビリャナス、アレグリアス、シギリージャ、ブレリアがあるなど知らなかったし、手で鳴らすカスタネットをパリージョというのも新鮮であった。
myunclek氏が「流石は逢坂剛の筆」と評価するのは以下の箇所かと思った。

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「今夜、お食事でもどうですか。情報交換のついでに、腹ごしらえというのは」
答えが返ってくるまでに、少なくとも五秒は間があいた。
「それはデートのお誘いですか」
その声は、コンピュータの合成音声と同じ程度の、温かみがこもっていた。

わたしは、舌を使わない程度には自制心を保ち、顔を放した。
炎華が一歩下がり、体で大きく息をする。
「二人のあとを、つけてください」
口ぶりだけは、電動ブラシを使ったあとのように、冷静だった。
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岡坂と美貌の警部補とのやりとりであるが、巧いと感じた。
なにが代表作なのか。それならまた読んでいいと思う。
コメント
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