きた産業のスローなブログ

会社のトピックスや出来事を、「スロー」に記録・発信するブログ。文章は、当社の各部門のスタッフが書きます。

イタリア・ワイナリー視察(ピエモンテ編・その2)

2011年12月14日 08時50分18秒 | Weblog


エリオ・アルターレ:醸造所のテラスから一面のブドウ畑を望む。



バルバレスコ村からアルバの街に移動し宿泊。ブライダ醸造所近くのレストランに日本人シェフがいることは書きましたが、アルバでも日本人シェフの方が活躍されていました。さらに、この日最初に訪問したラ・モッラ村にあるエリオ・アルターレでも東京出身の日本人醸造技師テスさんが活躍されています。エリオ・アルターレと言えば、バローロボーイズの中心人物としてあまりにも有名。テスさんの案内で醸造所や畑を案内していただきましたが、ブドウ農家がワインを造っているという基本姿勢が良く理解でき、また余計なことはせずにシンプルに実直に造る、という方向性がそのままワインに表れています。



エリオ・アルターレ:貯蔵室、愛好家垂涎のお宝が整然と並ぶ。



案内していただいたテスさんはアルバの醸造学校出身、5年ほど前にエリオ氏と出会い、ぜひ彼のもとで働きたいという願いかなって2年前から現職に。とてもピュアで飾り気のないナイスガイで、エリオ・アルターレのワインとも重なるところがあります。前出の2名の料理人の方々も含め、ピエモンテでは多くの日本人が活躍されていますが、この土地には何かしら日本人の琴線に触れるところがあるのでしょう。



エリオ・アルターレにて:左から、当社の今井、テスさん、アルターレ家の長女シルヴィアさん、今回ご一緒した五一ワインの添川さん、そして私。



続いて向かったのがバローロ村のルチアーノ・サンドローネ。そのトップキュヴェであるバローロ・カンヌビボスキスがコミック「神の雫」で第六の使徒として登場し、日本でも有名ですね。この日は何とルチアーノ氏ご本人が案内していただけるとのことでビックリ。作業エプロン姿でワイナリー設立の経緯やワイン造りの姿勢などを丁寧に説明してもらった上に、醸造所内もくまなく案内してもらいました。



ルチアーノ・サンドローネ:バリクではなく500Lのトノーを使用。



1999年に新設された醸造所は丘陵を利用したいわゆる重力式レイアウトで、また冷却機器が消費する電力を賄うためにソーラーパネルを設置するなど、意外なほどモダンな造り。しかし、最先端の醸造機器を揃えるわけではなく、あくまでも自分たちが良いと思う醸造環境を、テクノロジーを利用して整える、というのが基本姿勢でした。ブドウもバローロの規定最大収量の半分にまで収量制限し、さらに仕込時には選果も実施、バリクではなく500Lのトノーで熟成させるなど、随所にこだわりが。テイスティングさせてもらったワインはいずれも素晴らしいものでしたが、ある意味でエリオ・アルターレとは対照的で、峻厳さやシリアスさを感じさせるもので、飲んだ後しばらくは黙って考え込んでしまう、そんなワインでした。




ルチアーノ・サンドローネ:熱心に説明してくださるルチアーノ氏。聞いているのは五一ワインの添川さん。



最後に訪れたのは、バローロやバルバレスコが造られるランゲ地方とはターナロ川を挟んで対岸のロエロ地方はカナーレ村にある、マッテオ・コッレッジャ醸造所。ロエロはランゲと比べると知名度はまだまだですが、土着品種であるアルネイス種の白ワインや、最近ではバルベーラやネッビオーロの赤ワインの品質も向上し、注目の産地です。特にこのマッテオ・コッレッジャは早くからこの土地で育てるネッビオーロの可能性に賭けて高品質なワインを造ってきた、知る人ぞ知る醸造所です。



マッテオ・コッレッジャ:古い農家を改築・増築した醸造所の地下には立派なセラー。



前出の2醸造所と比べると、白ワインも造っているからか醸造機器は多様。赤のかもし用には比較的新しい形のロータリーファーメンターが3台並んでいました。それもあってか、ネッビオーロの渋みもマイルドで、果実味の強い優しい印象のワイン。また、アルネイスはもちろん、試験的に造ってみたというソーヴィニヨンブランによる白ワインも非常にレヴェルが高く、また日本食にも合いそうですので、これからますます日本でも知名度が上がってくるはずです。

 
マッテオ・コッレッジャ:10kl容量の温調付きロータリーファーメンター。種を下部に集めて排出可能!



今回訪問した醸造所はいずれもブドウ栽培に非常にこだわっていて、「最新鋭の醸造機器や醸造技術を駆使して」という感じではなく、あくまでも自社のブドウの個性を活かすのに最適な醸造を行うことに主眼を置いているように思います。比較的小規模な栽培・醸造所が多いこともその理由かもしれません。ただ、いずれの醸造所も非常に清潔に保たれ、また海外からのゲストを迎えるための施設や資料、そして実際に説明にあたる人まで、非常に洗練されているのに感心しました。



ミラノで行われるSIMEI展示会の時に足を延ばすことが多く、私にとって4回目のピエモンテ訪問でした。今回は行く先々で特に親切な対応をしていただき、ピエモンテの人々のやさしさや実直さをあらためて感じました。いわゆる観光地ではない分、人々の日々の暮らしを直に感じることができますし、さらに最高級のワインや食材(トリュフの世界的名産地です!)にも恵まれ、何度でも行きたくなる場所です。農業と醸造がごく自然に結び付いている土地には、何とも言えない豊かさがあります。ワイン産地に限らず、日本国内にもそういうところがあるのはうれしいことですが、必ずしも将来の展望が明るいわけではありません。簡単ではありませんが、できればそのような場所が保たれ、そしてより多くなっていってほしいと思います。



企画開発グループ 渡邊 拓也