「The Hankyoreh」 2024-08-21 18:24
■韓国野党、「親日行為擁護者の公職禁止」を党方針で推進…違憲的要素ありとの指摘も
【写真】14日、キム・ヒョンソク独立記念館長が、忠清南道天安市の独立記念館で館長任命の適切性を確認する審査資料を調べるため訪問する野党議員らを待機中、取材陣からの親日派とニューライトのスタンスをめぐる議論に関する質問に「違う」と反論している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社
野党「共に民主党」が親日行為(編集者注:附日行為。日本統治時代に日本帝国に加担・協力した反民族行為)を擁護した人々の公共機関への進出を防ぎ、独島(トクト)領有権を否定する発言などを処罰する立法を推進する。親日議論に巻き込まれたキム・ヒョンソク独立記念館長の任命など、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の退行的な歴史認識に「対抗する」ためのものだが、表現・学問の自由を縛る違憲的立法という批判の声があがっている。
民主党のチン・ソンジュン政策委議長は20日、院内対策会議で、「民主党は売国的な行動を座視しない。国を守り国土守護のための立法を推進する」とし、「親日・反民族行為を称賛、鼓舞した人を公共機関に進出できないよう法制化し、独島の領有権を否定する行為も処罰するよう法制化する」と述べた。同党のノ・ジョンミョン院内報道担当は会議後のバックブリーフィングで、「特に独島領有権を否定する場合、これは大韓民国の国益を著しく損ねるものであり、内乱罪に該当する可能性もある」とも主張した。政策委レベルで準備中の同法案は、議員総会を経て党方針の法案として進められる予定だ。
歴史的事実を歪曲する発言を処罰しようという趣旨の「歴史否定罪」の立法が進められるのは今回が初めてではない。与野党を問わず政界では韓日の歴史問題が浮上する度に、罰金はもちろん懲役刑まで明示した処罰法が発議されたてきた。与党「国民の力」のウォン・ヒリョン前国土交通部長官は2005年に「日帝強占下の民族差別擁護行為者処罰法」を発議しており、独立運動家の李会栄(イ・フェヨン)の孫であり民主党所属のイ・ジョンゴル元議員も2014年に「日帝植民支配擁護行為者処罰法」を発議したが、全て廃棄された。違憲をめぐる議論を避けられないからだ。
第21代(2020~2024年)国会当時、民主党所属だったヤン・ヒャンジャ前議員が発議した歴史歪曲禁止法案に対する国会専門委員の検討報告書では、「ドイツなど反人倫的犯罪が行われた国家で歴史否定罪が施行されている。その必要性が一部認められるにもかかわらず、過去の歴史が現在の危険として繰り返される可能性があるという因果関係が十分に立証されるなど、厳しい要件の下で最小限に施行されなければならない」と指摘された。特に報告書は「歴史否定行為を処罰することは、国家が歴史的事実に対する判断を独占することになる結果を招くという根本的な問題提起と共に、表現の自由と学問の自由などを侵害し、違憲的要素がある」と指摘している。
尹錫悦政権の歴史観に同意しない専門家たちも、民主党の立法の動きに対しては懸念を示している。革新的スタンスの憲法学者である建国大法学専門大学院のハン・サンヒ教授は、ハンギョレとの電話インタビューで「歴史歪曲の問題は時代精神と憲法精神の問題であるため、社会的・学術的討論を通じて乗り越えるべき問題であり、法で規制する事案ではない。表現の自由を侵害するため、(違憲法律審判で)違憲判断が出る可能性が高く、私が意見書を書くとしても違憲意見を出すだろう」と語った。
このため、民主党が推進する今回の法案も、尹錫悦政権の親日的歴史認識に対する批判世論に便乗した一回性の立法案で終わる公算が高い。しかし、民主党がこれを「党方針」として採択し、圧倒的議席数に物を言わせ本会議可決まで進めた場合、尹錫悦大統領も再議要求権(拒否権)を行使することが明らかで、それにともなう政治・社会的コストは大きくならざるをえない。「議題と戦略グループ:ザ・モア」のユン・テゴン政治分析室長は、「民主党の議席が多く、とんでもない法案も現実化する可能性があるだけに、(民主党は)これからはその責任意識を明確に持つべきだ」と語った。
オム・ジウォン、コ・ギョンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-08-2020:47
「The Hankyoreh」 2024-08-20 08:43
■尹大統領「暗躍する反国家勢力に抗戦」…民主党「アカ掃討作戦か」
【写真】尹錫悦大統領が19日、ソウル龍山の大統領室庁舎で開かれた乙支及び第36回国務会議で発言している/聯合ニュース
尹錫悦大統領が19日の国務会議で、「社会内部で暗躍する反国家勢力」に対する「国民的抗戦意志」を強調した。15日、光復節の祝辞で「反自由・反統一の黒い扇動勢力」に立ち向かわなければならないと強調してから4日後に、強力な「内部思想戦」を呼びかけたのだ。野党は「北風攻勢(北朝鮮の脅威を過度に強調し社会の緊張を高めることで、反対勢力を抑え込み主導権を握ろうとする一連の試み)」だと反発した。
尹大統領は韓米合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムシールド」初日の同日、龍山(ヨンサン)の大統領室で国務会議を開き、「北朝鮮は開戦初期から彼ら(=内部反国家勢力)を動員し、暴力と世論操作、そして宣伝、扇動で国民に混乱をもたらし、国論分裂を図るだろう」とし、「混乱と分裂を遮断し、全国民の抗戦意志を高める方策を積極的に講じなければならない」と述べた。北朝鮮との軍事的緊張が高まった最近の状況を念頭に置いた発言だが、取り締まりと撲滅の対象が内部の批判勢力であることから、「公安ムード」作りを目指しているのではないかという疑念の目も向けられている。
尹大統領が内部批判勢力に対して激しい警戒心と敵対感を示したのは今回が初めてではない。昨年光復節の祝辞でも「共産全体主義を盲従し、操作扇動で世論を歪曲し、社会を撹乱する反国家勢力」に触れ、「内部闘争」を強調しており、同年8月21日の乙支国務会議では「フェイクニュースと偽装攻勢、宣伝・扇動を徹底的に粉砕し国論を結集することが何より重要だ」と力説した。
政界内外では尹大統領のこの日の発言について、「乙支演習(に際した)国務会議」で通常考えられる「安全保障意識を鼓吹する発言」のレベルを超えたという声もあがっている。4月10日の総選挙で与党が惨敗して以来、「理念問題」と関連して言及を控えて来た尹大統領が、ここのところ「反国家勢力との対決」をしきりに強調している背景には、「支持層の結集」と「野党など批判勢力に対する警告と牽制」を同時に狙う思惑があるということだ。
建国大学のイ・グァンフ常虚教養学部教授は、「総選挙後、野党代表と会談を行うなど野党との協力を図ったが、国政支持率は上がらなかった」とし、「最近の行動とメッセージは、保守結集が必要だという判断から出たものと思われる。『統合』より『対決』を下半期の国政基調に据えたものとみられる」と語った。
大統領室はこのような指摘を一蹴した。大統領室関係者は「最近の戦争はフェイクニュースとサイバー扇動が同時に行われるハイブリッド戦の様相を呈しているが、今日の発言は北朝鮮の威嚇に関して言及したもの」だとし、「内部取り締まり用」という一部の見方を否定した。戦時状況を仮定した予防レベルの呼びかけに過ぎず、政治的目的のある発言ではないという話だ。
しかし、野党は尹大統領の同日の発言に対し、「アカ掃討作戦を行うという意味なのか」と強く反発した。野党「共に民主党」のノ・ジョンミョン報道担当はこの日、書面ブリーフィングを通じて「光復節を期して植民史観に染まった親日政権であることが明らかになると、今度は北風攻勢のカードを取り出した」とし、「国務会議を極右支持層結集のための政争の場として活用する尹錫悦大統領の危険な行動を強く糾弾する」と述べた。
一方、尹大統領は国務会議の最後の発言で「絶対に軍事的な侵略など平和を破る方式の統一はしない」と述べたと、大統領室関係者が伝えた。光復節の祝辞で尹大統領が言及した「自由統一」について、「尹錫悦式吸収統一」という批判が高まったことに対し反論したものとみられる。
イ・スンジュン、クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-08-19 23:34
「The Hankyoreh」 2024-08-15 08:46
■「圧倒的な力」と騒ぐ尹政権はニュルンベルク裁判を記憶せよ【寄稿】
イ・ビョンホ|南北教育研究所長・教育学博士
【写真】「歴史と文化がある平和紀行」2024ドイツ歴史紀行の参加者たちが、ニュルンベルク国際軍事裁判所前で記念撮影している。後列左から4人目が筆者=チェ・ウヘン|BKツアー//ハンギョレ新聞社
7月16日から10日間、筆者はハンギョレ統一文化財団が主管した「自由と平和の象徴、ドイツ歴史紀行」に参加した。分断の痛みと平和統一の喜びを実感できるベルリン探訪の時間が短いのがやや残念だったが、非常に意味のある旅だった。
特に、第2次世界大戦の終戦直前に米国、ソ連、英国が集い、ドイツと日本の敗戦後の朝鮮半島などをどのように管理するかについて議論したポツダムのツェツィーリエンホーフ宮殿▽ソウルの1.5倍にのぼる面積を誇るが、東西に分断され、1961年から1989年までぶ厚く高いセメントの壁が建っていた、 統一と自由のブランデンブルク門の建つベルリン市内▽1981年から毎週月曜日午後5時に「抑圧されるものすべて」をテーマに行われた自由討論会の経験をもとに、1989年9月4日に1200人が集って東ドイツ政権に国境の開放と人権保障を求めた旧東ドイツ・ライプツィヒの聖ニコラス教会▽最初は細い小川を中心に分離されたが、次第に二重の壁と軍の警戒所が建てられ、「第2のベルリン」と呼ばれた小さな村、メドラロイトなどは忘れられない大切な思い出だ。
しかし上記の場所よりも筆者に強い印象を残したのは、1945年11月20日から1946年10月1日までの10カ月間にわたり、ナチスの24人の最高戦犯に対する裁判が行われたニュルンベルクの裁判所を訪ねたことだ。特に絞首刑にされたり服毒自殺したりした11人の遺体を撮影した写真の中の彼らは、裁判を受けている時の堂々とした様子とは非常に対照的で、筆者に強い印象を残した。ヒトラーの参謀や部下として忠誠を尽くした軍の将官たちは、勲章がすべてはずされ、銃殺ではなく絞首刑に処された。絞首刑が執行される過程で頭が足下の木にぶつかって血が流れ、それが固まっているという凄惨な遺体もあった。
ドイツでの日程の慌ただしさのせいで韓国のニュースに接しにくい中にあっても、筆者の関心を引くニュースがあった。一つは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が非武装地帯(DMZ)の軍事境界線に接する地域の全域で北朝鮮に向けた拡声器放送を開始したこと。もう一つは複数の市民社会団体の激しい反政府デモや集会で、特に「このままでは戦争が起きる、尹錫悦弾劾」というプラカードのスローガンが注目された。朝鮮戦争停戦71周年を迎えた7月27日には、世界最大規模の米軍基地である京畿道平沢(ピョンテク)のキャンプ・ハンフリーズで、複数の市民団体と多くの民主市民が「反米反帝自主」のスローガンを叫んだ。幸い、政府や米軍とはこれといった摩擦もなく、参加した市民たちのおかげで集会やデモは無事に終わったようだった。
ニュルンベルク戦犯裁判の公式名称は「ニュルンベルク国際軍事裁判」。この裁判に先立ち、アドルフ・ヒトラー、ハインリヒ・ヒムラー、ヴィルヘルム・ブルクドルフ、ハンス・クレープス、ヨーゼフ・ゲッベルス、ヨーゼフ・テルボーフェンは逮捕直前、または逮捕直後に自殺してしまったため起訴されなかった。第2次世界大戦のもう一つの戦犯国である日本の戦犯に対する裁判は、東京で行われた。28人が起訴され、25人が実刑判決を受けた。このうち、首相であり大将だった東條英機を含む7人が絞首刑に処された。
朝鮮半島で戦争が起こったら、尹錫悦大統領やシン・ウォンシク前国防部長官の言うように、果たして軍事同盟国である米国と合同作戦を展開し、圧倒的な力で早期に戦争を勝利で終わらせられるだろうか。韓国に同盟国の米国があるなら、北朝鮮にはロシアがある。また、韓国に軍事協力国である日本があるなら、北朝鮮には中国がある。韓国に米国の核による支援の約束があるなら、北朝鮮には最小数十発から最大で100発以上の自国の核爆弾がある。尹錫悦政権はいかなる理由と根拠をもって、圧倒的な力で北朝鮮との戦争に勝てると大口をたたくのか。非常に理解し難い。
勝利する戦いより、戦わないことの方がよい。再び南北の戦争が起これば、その被害は130万人以上が死んだ70年あまり前の朝鮮戦争とは比べものにならないほど大きくなるだろう。古代ローマで将軍が凱旋(がいせん)式をおこなった際、部下がそばで「メメント・モリ(死を記憶せよ)」という言葉を繰り返し叫んだという。勝利を満喫してばかりいないで、いつかは死ぬということを意識して謙遜、自重せよという意味だ。今度は参謀や秘書が大統領に「ニュルンベルクと東京の裁判を記憶せよ!」と叫ぶ番だ。
イ・ビョンホ|南北教育研究所長・教育学博士 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-08-14 19:07
「The Hankyoreh」 2024-08-12 08:11
■「核基盤同盟」を結んだ尹錫悦式安全保障…米国が韓国軍を掌握していく可能性も
[ハンギョレS] ムン・ジャンリョルの安保多焦点
従属深まる軍事主権
軍事従属を規定した2件の文書
韓米核指針、韓米日協力覚書
米核資産の展開がもたらすリスク
核の仮面を脱いで、新冷戦から抜け出すべき
【写真】2023年11月16日、米サンフランシスコで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議で、尹錫悦大統領と米国のジョー・バイデン大統領、日本の岸田文雄首相が会談に先立ち、記念撮影を行っている/AP・聯合ニュース
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は歴代のどの政権よりも強く、一貫して韓米同盟と韓米日協力の強化を進めて来た。7月に採択された二つの文書は、そのような「努力」が実を結んだ結果と言える。問題はそれらが韓国の軍事政策の自律性を大きく損ない、さらには大国に対する「従属」を制度化していることにある。
一つ目の文書は「韓米朝鮮半島核抑止・核作戦指針」(以下「韓米核指針」)だ。韓米国防省は昨年4月の首脳会談とワシントン宣言に基づき、次官補級核協議グループ(NCG)を設け、今年6月までの間に3回にわたる協議で「韓米核指針」を完成した。同文書は両国の国防省間の署名を経て、7月11日にワシントンで開かれた韓米首脳会談(共同声明)で「承認」を受けた。
「韓米核指針」の主な内容は「韓米一体型拡大抑止」協力の強化であり、米国の(朝鮮半島での)核作戦を韓国の通常戦力で支援するというものだ。ここでの「支援」(support)は、「核兵器と通常兵器の統合」(CNI:Conventional Nuclear Integration)を通じて行われるという面で、大きな意味がある。大統領室の説明によると、核と通常兵器の統合による北朝鮮の核への対応は「朝鮮半島における核の運用において、韓国の組織・人材・資産が米国と共にする拡大抑止へと進化」したものだ。尹錫悦大統領も7月16日の国務会議で、「韓米同盟は名実ともに『核を基盤とする同盟』へと確実に格上げされた」と評し、「米国の核資産に朝鮮半島での任務が特別に配分された」ことを明らかにした。
◆戦域レベルの核訓練が定例化する恐れも
「韓米核指針」どおり核および通常兵器の戦略企画を韓米が「きちんと」遂行するためには、従来の核協議グループの拡大は言うまでもなく、韓国の国防全体および軍事体系を見直す必要がある。国防の中心である軍事力の建設を核抑止および核作戦の遂行に合うよう進めなければならず、これは重要な兵器体系の獲得において新たに考慮すべき要素になるだろう。先端兵器の導入は当然、米国のものに限定される。「一体型」を掲げていることから、韓米同盟体制は米国中心性と主導性がより一層強まるだろう。また、「核を基盤とする同盟」を掲げていることから、合同作戦計画も核作戦を含む核戦争計画への変更を余儀なくされるだろう。
一方、米国にとって、「韓米核指針」はリップサービス以上の実質的な「負担」がほとんどない。核協議グループは、米国の戦術核兵器が配備された一部のNATO国家の「核計画グループ」(NPG)とは質的に異なる。いくら「核企画」という単語を使っても、米軍の資産が韓国地域に配置された核兵器を装着して作戦を開始しない限り、韓国軍の先端通常兵器は、外部から武装して朝鮮半島に展開してくる米軍の戦略資産に対し、円滑な作戦遂行を保障し防護を提供する任務しか果たせないからだ。
米軍の核資産の一部を朝鮮半島の任務のために排他的に割り当てることも、軍事的観点からすると、不合理であり不要だ。米国本土から発射された大陸間弾道ミサイル(ICBM)が平壌(ピョンヤン)に飛んでくる時、飛行経路の大半は中国北京を目標にするのと変わらない。戦略爆撃機と潜水艦発射弾道ミサイルに装着する核弾頭に「朝鮮半島用」とラベルを付けることも愚かなことだ。要するに、米国は義務を追加することなく、戦略的利益だけを手に入れたわけだ。
「名実共に核を基盤とする同盟」を実現するためには「核戦争演習」が欠かせない。これまでの韓米合同訓練も核戦争演習だという批判はあったが、今後の合同作戦計画に核作戦が具体的に含まれれば、世界で類例のない「戦域(theater)レベルの核作戦演習」が例年施行されるだろう。米国は、この演習で思う存分、自身の核戦略資産を運用しながら、韓国に対するコミットメントを誇示すると同時に、韓国軍に対する掌握力を強化していくだろう。
◆朝鮮半島に再び自衛隊の軍靴の音が?
問題となる(または尹錫悦政権が成果として掲げる)もう一つの文書は、7月28日に東京で署名された「韓米日3カ国安全保障協力枠組み覚書」(TSCF、以下韓米日枠組み)だ。国防部の報道資料によると、韓米日枠組みは「ハイレベル政策協議や情報共有、3カ国訓練、国防交流協力など朝鮮半島およびインド太平洋地域とその向こうの平和と安定に寄与する韓米日防衛当局間の安保協力を制度化するもの」だ。これは6月2日のシンガポール韓米日防衛相会談で採択された共同声明と、それ以前のプノンペン(2022年11月)およびキャンプデービッド(2023年8月)3カ国首脳会談などでの合意に基づいた実行文書だ。「協力覚書」に法的拘束力があるかどうかはそれほど重要ではない。弱小国が強大国に「公式的に」縛られることは、どんな形であれ「文書」一つで十分だからだ。
枠組みの原文は公開されなかったが、3カ国防衛相の共同声明を見る限り、「インド太平洋地域とその向こう」に重点が置かれていることがわかる。北朝鮮の(核)による脅威は儀礼的レベルで言及されただけで、「米日」のインド太平洋戦略の核心目標である、台湾を含む東シナ海と南シナ海における航行の自由の確保がすなわち平和と安定であるという認識が明確に示されている。したがって韓米日枠組みは「3カ国協力の新たな時代」を開き、「地域の挑戦と挑発と脅威に効果的に対応するための3カ国協力をさらに発展させていく」ということだ。すでにかなりのレベルに「進化」した中国に対する新冷戦的対決体制に韓国が「制度的に」組み込まれ、最前線で対峙する構図が描かれている。
シン・ウォンシク国防部長官は、韓米日枠組みが尹錫悦政権の性格によって生まれたものではなく、「3カ国がそれぞれウィンウィンの状況なので、(韓国であれ米国であれ、政権が変わっても)揺らぐことなく引き続き進められるだろう」とし、「3カ国は標準作戦手続きの合意にもほとんど達した状態」だと明らかにした。「標準作戦手続き」(SOP)とは、特定の軍事状況で軍隊が「ひとまず無条件で」取るべき行動を定めたものだ。
標準作戦手続きは、韓米間よりは韓日にとってより重要な意味を持つ。韓日軍事協力は、日本にとっては確かな利益だが、韓国にとっては懸念と警戒の対象だ。しかしこれは、尹錫悦政権が発足してからは、徐々に迫ってくるものではなくブレーキのない疾走と言っても過言ではないほどだ。韓日軍事情報保護協定(GSOMIA)が復元され、韓米日ミサイル警戒情報の伝達体系が確立され、「多領域」にわたる合同軍事演習が定例化され、韓米日枠組みが始まった。残っているのはいわゆる「韓日軍需支援協定(ACSA)」だけだ。その名称をそのまま使用しなくても、同じレベルの標準作戦手続きを樹立することも考えられる。近いうちに自衛隊または「日本軍」の軍靴の音が朝鮮半島で鳴る可能性もあるということだ。
米国および日本の企画と尹錫悦政権の同調で、韓米日3カ国はいつの間にか同盟体制に進入している。これを制度化する「韓米核指針」と韓米日枠組みは3つの「統合」を通じて進んでいる。韓米の核・通常兵器の統合(CNI)、来年発足する自衛隊の「統合作戦司令部」、それに合わせて新設される在日米軍の「統合軍司令部」だ。韓国は北朝鮮に対する核抑止と核作戦という仮面を脱ぎ捨て、新冷戦と従属の泥沼から抜け出さなければならない。
ムン・ジャンリョル|元国防大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-08-11 09:53
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