三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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「自制力を失った公権力がもたらす悲劇 =韓国」

2023年06月06日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-06-06 10:29
■[コラム]自制力を失った公権力がもたらす悲劇 =韓国
 自由な選挙で選ばれた政権が必ずしも民主的とは限らないことは、2000年代以降、世界各地で立証されている。なぜ保守政権が発足する度に民主主義退行の懸念が高まっているのか、尹大統領は振り返ってほしい。度を越した警察の対応が来年の総選挙を狙った保守票の結集という政治的目的に沿ったものだとしても、『自由論』に心酔した大統領ならば少なくとも守るべき線は保つべきではなかろうか。
 
【写真】5月31日、全羅南道のポスコ光陽製鉄所前で高空籠城を行っていた韓国労総金属労連のキム・ジュンヨン事務処長を警察が制圧している。警察は抵抗するキム事務処長を長さ1メートルのプラスチック鎮圧棒で約1分間殴り続けた=韓国労働組合総連盟の動画よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 ポスコ光陽製鉄所前で高空籠城(煙突や広告塔など高い所に立てこもって要求や訴えを叫ぶデモの一種)を行っていた韓国労総の幹部を、警察がこん棒で殴りながら鎮圧する場面は衝撃的だ。全羅南道警察庁は「同幹部が鉄パイプを振り回して抵抗し、やむを得ず警察棒で制圧するしかなかった」と説明した。座り込みを解散させる妥当性はさておき、すでに抵抗能力を失った個人を複数の武装警察官が集団暴行する行為は正当化できない。自制力を失った警察力の行使が過去にどんな悲劇をもたらしたかを我々は覚えている。
 大統領の発言を受け、さらに踏み込んだ対応をする警察首脳部の態度からすると、今後似たような事件が起きてもおかしくはない。1991年4月、明知大学の学生のカン・ギョンデさんが死亡した事件は、内務部治安本部が「不法・暴力デモは国家保衛のレベルで強力に対応せよ」と第一線の警察に指示した後に発生した。建物の屋上で座り込みをしていた撤去民を早朝に無理に鎮圧し6人が亡くなった「龍山(ヨンサン)惨事」が起きたのは14年前のことだ。権威主義政権の最も目立った特徴の一つがまさに「(抵抗する個人や集団の)暴力」を理由にした公権力の無分別な暴力の行使だ。さまざまな法律や規定、慣行を見直しながら、これを統制してきたのが韓国社会の民主主義の発展過程だった。ところが今、その統制を尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が再び緩めている。
 現政権が集会・デモに強硬対応する根拠として挙げているのは、「市民の不便」と「不法性及び暴力性」だ。ユン・ヒグン警察庁長は「市民の自由を人質にして慣行的に行われた不法行為に対し、警察として果たすべき役割を堂々と果たす」と述べた。「市民の自由」を掲げて市民の最も重要な権利である集会とデモを締め付けるのは詭弁に過ぎない。韓国の憲法は集会とデモを「許可を受ける必要のない基本的な権利」だと明確に規定している。集会とデモにたやすく「不法」のレッテルを貼るのは、思想の自由があるにもかかわらず「不穏な思想」は処罰するという反自由主義的発想のまた別の事例だ。
 誰かのデモは、他の誰かにとっては不便を強いられることにもなりうる。にもかかわらず、現代国家で集会とデモの自由を基本権として保障しているのは、他人に直接危害を加えない限り、単なる「不便」を理由に(集会とデモの自由を)規制してはならないという趣旨からだ。誰でも誰かに多少の不便をかけながら公に意思表明を行うことができる。これこそが多元化された社会でマイノリティが声をあげる重要な手段であるからだ。

【写真】尹錫悦大統領が5月23日、ソウル龍山の大統領室庁舎で国務会議を主宰している。尹大統領は「警察は不法集会・デモに対して厳正な法執行をすべき」と指示した/聯合ニュース

 警察の過剰対応の後ろには尹錫悦大統領がいる。尹大統領に最も大きな影響を与えた本はジョン・スチュアート・ミルの『自由論』だという。学生時代に『自由論』を読んで感銘を受け、経済学科から法学科に志望を変えたという話もあり、「尹大統領は19世紀の偉大な政治思想家であるミルの『自由論』に心酔したため、指導者として素養がある」というチョン・ジンソク議員(国民の力)の賛辞もあった。就任演説で「自由」を35回も言及し、機会あるごとに「自由民主主義」を強調する背景には『自由論』があると、マスコミは分析してきた。しかし、あらゆる自由の中でも「意見表明の自由」がその核心である理由を詳しく説明した『自由論』を、なぜ尹大統領は徹底的に無視しているのだろうか。
 ミルは集会とデモのような意見表明がマイノリティや弱者にとって非常に重要であることを明確に認識していた。マジョリティはあえてそのようなやり方を選ぶ必要がない。ミルはたとえ少数の意見表明であっても耳を傾けなければならない理由を、次の4点で説明した。
 「第一に、沈黙を強いられるすべての意見は、たとえ私たちが正確に知らなくても真理である可能性がある。第二に、沈黙を強いられる意見が間違っていたとしても、ある程度真理を含んでいる可能性がある。したがって、対立する意見をそのまま対立させることだけが、残りの真理を見つける唯一の方法だ。第三に、たとえ一般的な通念が全面的に正しいとしても、討論を通じて活発で真剣に争わなければ、それを受け入れる人々が合理的根拠を全く理解できないまま偏見に陥ってしまう恐れがある。第四に、そのような主張の意味が失われ衰退すると、人々の性格や行動に大きな影響を及ぼすことができず、心からの確信が育まれることを妨げる」
 自由な選挙で選ばれた政権が必ずしも民主的とは限らないことは、2000年代以降、世界各地で立証されている。なぜ保守政権が発足するたびに民主主義退行の懸念が高まっているのか、尹大統領は振り返ってほしい。度を越した警察の対応が来年の総選挙を狙った保守票の結集という政治的目的に沿ったものだとしても、少なくとも『自由論』に心酔した大統領ならば守るべき線は保つべきではなかろうか。
パク・チャンス大記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-06 02:40


「The Hankyoreh」 2023-05-30 07:33
■「自由」叫びつつ集会の自由たたく尹大統領、「朴正熙集会抑制法」へ回帰?

【写真】尹錫悦大統領が27日、ソウル鍾路区の曹渓寺で開催された仏紀2567年灌仏会の奉祝法要式で祝辞を述べている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足以降、憲法に保障されている「集会の自由」が脅かされている。政府与党が「集会および示威に関する法律(集示法)」の改悪を推進しているためだ。集示法そのものが「朴正煕(パク・チョンヒ)軍部」時代に集会を抑制することを目的として制定された法律であるため、正当性が疑われているうえ、最近では「集会資格制」の導入が狙われているため「反憲法的」だとの批判にさらされている。

◆尹大統領の一言で…変化した集会対応
 「いかなる違法行為も放置・無視せず、容認しない」。
 尹錫悦大統領の23日の国務会議での発言以降、警察の集会・デモ対応が変化した。民主労総全国建設労働組合(建設労組)の1泊2日ソウル都心上京集会を契機として、政府与党は違法集会の前歴がある団体の集会を制限・禁止するとの方針を明らかにした。建設労組の集会に「暴力行使や器物破損などの法違反事項はなかった」としていた警察も態度を変え、建設労組の1泊2日集会は違法集会だとして執行部に対する捜査に乗り出した。
 集会への対応も変わった。「違法集会の素地がある」という恣意的判断にもとづき、25日のソウル瑞草区(ソチョグ)の最高裁前での非正規労働者の闘争文化祭を完全封鎖し、これを防ごうとした参加者たちを公務執行妨害容疑で逮捕した。暴力性のない集会を強制解散させるのは不当だとした司法判断は気にも留めず、警察はこの日午後9時ごろから労働者を強制解散させた。
 さらに国民の力のキム・ギヒョン代表は28日、自身のSNSに書き込み、国民を「強と弱」に分けて分裂させはじめた。キム代表は民主労総が31日に大規模な都心集会を予告したことについて「巨大貴族労組はもはや韓国社会の弱者ではなく『スーパー強者』だ。集会とデモの自由を誤用・乱用し、善良な他人の自由を侵害しても許される特権は誰にも与えられていない」とし、「本当の弱者はスーパー強者のために巨大な被害を受けながらも言い出せずに悩んでいる小商工人たちと庶民たちだ。(集会・デモ)改革には抵抗が伴うものだが、それでも改革は中断できない」と述べた。

◆国家再建最高会議で制定された集示法…再び退行か
 申告制である集会・デモを「許可制」のように扱う政府に対して、「権威主義政権への退行」だとする批判の声があがっている。そもそも集示法は誕生そのものが集会の自由の保障ではなく、むしろその抑制・統制のために作られたものだ。その後は国会での改正によって民主的正当性を回復してきたが、恣意的な解釈によって再び憲法上の基本権である集会・結社の自由を制約しようとしているというわけだ。
 実際に集示法の制定過程を見れば、最初の集示法を制定したのは朴正煕軍部の作った最高統治機関である国家再建最高会議で、1962年12月のことだ。公の制定目的は「国民の自由と権利の本質的な内容を侵害しない範囲での最小限の制限」だ。
 しかし学界は「憲法上の基本権である集会の自由を具体的に規定するというより、無秩序な状況の中で実効的に集会を抑制する」ことを目的として制定されたと分析する。当時の集示法には「裁判に影響を及ぼす恐れがあるか、民主的基本秩序に違反する集会の絶対禁止」条項もあった。国会議事堂や裁判所、大統領官邸に加え、駅周辺200メートル以内の集会も禁止した。
 学界の一部では、国家再建最高会議の性格をあげて集示法そのものの正当性を否定してもいる。国家再建最高会議は「非常立法機関」に過ぎないからだ。国家再建最高会議は国会を解散した後、独自の立法権を行使して集示法などを制定した。釜山大学法学専門大学院のキム・ヘウォン教授は「(集示法は)制定後、国会で数回改正されたが、そもそも国会とはいえないところで法律という名前がつけられて誕生しているため、憲法第40条(立法権は国会に属する)に違反しているのではないかという疑いがある。国会で現行の集示法を廃止し、新たに制定することが望ましい」と述べた。

◆憲法裁「集会禁止は最終的手段」
 集示法の正当性とは別に、政府与党の集示法改正の主張の内容が反憲法的だとの指摘も相次いでいる。特に「違法集会の前歴がある団体の集会は不許可」という内容は、申告制である集会を「許可」とすることを禁止した憲法に真っ向から反する。慶煕大学法学専門大学院のチョン・テホ教授は「そもそも違法集会に対する責任は団体ではなく個人が負うもの。違法集会の前歴があるからといって集会を禁止するのは一種の許可制であり、『集会資格制』導入であるため、違憲の素地が非常に大きい」と指摘した。
 夜間集会の禁止に関して憲法裁判所は、2014年に憲法違反と判断している。2003年には「集会の自由は民主的共同体が機能するための不可欠な根本要素」であるため、「集会の禁止は、条件を付けて集会を許容する可能性がすべてなくなった後に初めて考慮しうる最終的手段」だと述べている。

チョン・グァンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-05-29 10:00
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