三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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日本政府に2015年12月28日の「日韓合意」の撤回を求める

2018年02月03日 | 海南島近現代史研究会
 今日(2018年2月3日)、海南島近現代史研究会は、21回目の定例研究会を開きました。主題は、「日本の侵略犯罪・アジア太平洋民衆の抗日反日闘争」でした(このブログの2018年1月8日の「海南島近現代史研究会第21回定例研究会」と1月17日の「海南岛近现代史研究会第21次定期研究会」をみてください)。
 主題報告のあと、集会参加者全員が、「国民国家の侵略犯罪と抗日反日闘争」について討論し、その中で、「2015年12月28日の「日韓合意」」についても議論を深め、「日本政府に2015年12月28日の「日韓合意」の撤回を求める」という声明を発表することを決定しました。
 以下は、その全文です。


■日本政府に2015年12月28日の「日韓合意」の撤回を求める■ 
 2015年12月28日に、日本の岸田文雄外務大臣と韓国の尹炳世外交部長官が会談し、「日韓間の慰安婦問題」・「韓日間の日本軍慰安婦被害者問題」について合意し、その合意内容を共同記者会見で発表し、公式文書を交わすことなく、「日韓合意」がなされた。
 この「12・28日韓合意」は、条約ではなく、署名のある文書でもない。日本国と韓国間で公式文書は交わされていない。
 この記者会見で、日本外務大臣は、
    「今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」
と述べ、韓国外交部長官は、
    「今回の発表により、日本政府と共に、この問題が最終的かつ不可逆的に解決される
    ことを確認する」
と述べている。
 しかし、日本国家の侵略犯罪にかかわる「問題」が「最終的かつ不可逆的に解決される」などということは、ありえないことであり、「不可逆的」というコトバの意味も曖昧である。
  「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」という「確認」を含む「日韓合意」は、日本国家の国家犯罪をコトバで消し去ろうとする悪質な日本の外務大臣と韓国の外交部長官の無署名の「政治的合意」である。
 このような「合意」は、かつて国家間の「約束」として成立したことはなかった。
 日本のマスメディアは、「日韓合意」がそもそも国家間のとりきめとして成り立たないものであることを、過去・現在の諸国家間のとりきめを分析して報道すべきであった。
 日本の首相は「合意は国と国との約束で、これを守ることは国際的かつ普遍的な原則だ。韓国側が一方的にさらなる措置を求めることは、全く受け入れることはできない」といい、日本のマスメディアは異口同音に同様のことを述べている。
 しかし、条約ではなく、署名もない外務大臣と外交部長官の「口約束」は、その約束が社会正義に反するものであるならば、ただちに解消するのは当然のことである。
 2017年5月12日に、国連の人権条約に基づく国際人権条約機関である拷問禁止委員会は、「日韓合意」の再検討を勧告する報告書をだしている。

■「日韓合意」で述べられている「この問題」の歴史性
 「この問題」は、国民国家日本の他地域他国侵略の全歴史にかかわる問題である。
 いまは亡き林亜金さんら八人の被害者を原告とする海南島戦時性暴力被害裁判は敗訴したが、事実にかんして被告の日本国はまったく反証できず、日本の裁判所は事実を認定した。
 「日韓合意」では、事実認定も明確におこなわれていない。
 国民国家日本の侵略犯罪にかかわる諸問題(「慰安婦問題」、「強制連行問題」、「住民虐殺問題」、「資源略奪問題」、「土地略奪問題」……)が、「最終的かつ不可逆的に解決されること」は、ありえないことである。
 「この問題」は、根本的には国家間の問題ではなく社会正義の問題であり、とくに歴史的責任を有する国家とその国民はナショナリズムを克服することが問われている問題である。

■「日韓合意」の問題点
(1)基本問題:事実認定とそれに基づく国家謝罪・国家賠償。
   日本政府は、「従軍慰安婦」(日本軍隊性奴隷)についての歴史事実を十分に正確に認
  識しようとしておらず、関係資料を積極的に探索公開しようとしておらず、逆に歴史事実を
  否定し隠蔽しつづけてきた。「日韓合意」においても日本政府のこの非倫理的な姿勢は変
  わっていない。客観的かつ詳細な事実認定、それに基づく真の謝罪、賠償なしには、問題
  は解決されない。
   日本政府は、事実を認定し、「日韓合意」を無効とし、公式に真の謝罪を行い、法的賠償
  を実行し、歴史事実を正確に伝達する教育を進めなければならない。
(2)個別問題:
1、「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」という「確認」。
  この「確認」に、「日韓合意」の非人道性が鮮明に示されている。
  被害者が容認しない「解決」は、解決ではない。
2、10億円。
   「12・28日韓合意」時に日本外務大臣は、
      「日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。
      具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これ
      に日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦
      の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする」
   という文章を朗読した。その後、日本政府がそのために支払ったのは、日本円で10億円で
   あった。
    わずか10億円の現金で、日本政府は「全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、
   心の傷の癒やし」をしようとしたのである。真摯で心の籠った謝罪もなく、事実をまともに
   認識しようとせず、事実を示す文書を開示することもないまま、日本政府は被害者の「名
   誉と尊厳」が回復されることにしていた。
3、非公開。
  韓国の政府機関、日韓日本軍慰安婦被害者問題合意検討Task Force(TF、特殊任務班)が2017年12月27日に公表した「日韓日本軍慰安婦被害者問題合意(2015.12.28.)検討結果報告書」によれば、2015年12月28日の「日韓合意」時に非公開とされた部分は、次の通りである。
    日本側は、「今回の発表により、慰安婦問題は、最終的及び不可逆的に解決されるもの
   であるから、挺対協等各種団体等が不満を表明する場合にも、韓国政府としては、これに
   同調せず説得してくれることを望む。駐韓日本大使館前の少女像をどのように移転するの
   か、具体的な韓国政府の計画を問いたい」と言及した。
    これに対し、韓国側は、「韓国政府は、日本政府が表明した措置の着実な実施がなされ
   たということを前提として、今回の発表を通じて、日本軍慰安婦被害者問題は、最終的及
   び不可逆的に解決されるものであることを確認し、関連団体等の異見表明のある場合、韓
   国政府としては、説得のため努める。韓国政府は、日本政府が駐韓日本大使館前の少女
   像に対し、公館の安寧・威厳の維持という観点から憂慮している点を認知し、韓国政府と
   しても、可能な対応方向に関して関連団体との協議等を通じ適切に解決されるよう努める」
   とした。

 わたしたちは、このような無恥の要望と問いを非公開で提出しつつ「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」とした日本政府を弾劾する。
 非公開文書に、日本政府は、「挺対協等各種団体等が不満を表明する場合にも、韓国政府としては、これに同調せず説得してくれることを望む」と明記している。これは、「日韓合意」を「挺対協等各種団体等」が承認しないことを日本政府が認識していたことを示している。

■日本政府と日本のマスメディアに対して
 「日本の侵略犯罪・アジア太平洋民衆の抗日反日闘争」を主題とする海南島近現代史研究会第21回定例研究会の参加者全員は、「日韓合意」を根本的に批判し、否定する。
 日本に住むおおくの民衆とともに、わたしたちは、「日韓合意」についての日本政府や日本のマスメディアの非歴史的・非人道的な主張を承認しない。
 わたしたちは、日本政府に「日韓合意」の撤回と公式謝罪を求めるとともに、日本のマスメディアに対し、国民国家日本の他地域他国侵略犯罪にかかわる歴史事実を事実に基づいて徹底的に詳細に解明し、事実と真実を報道することを求める。

■国民国家日本の他地域他国侵略責任
 国民国家日本は、アイヌモシリ植民地化、琉球王国植民地化、台湾侵略、朝鮮侵略の過程で、軍備を増強し、経済基礎構造を建設・強化していった。
 日本の国家権力者は、「軍人勅諭」や「教育勅語」などを使って侵略犯罪を実行する「臣民」を形成していった。日本は、他地域・他国侵略の過程で、「富国強兵」、「殖産興業」を実現していった。
 国民国家日本は、形成期から現在にいたるまで侵略国家であり続けている。日本国家の政治的・経済的・社会的・文化的侵略構造は、19世紀後半から現在まで変わっていない。
 いま日本政府は、国民国家日本の他地域他国侵略責任をとろうとすることなく、「明治の精神に学び、日本の強みを再認識する」などと称して「明治150年(2018年)」記念行事の準備をすすめている。
 2015年12月28日の「日韓合意」で日本政府がおこなおうとしたことは、国民国家日本の侵略犯罪の隠蔽であった。
 「日韓合意」問題は、国家間の外交問題ではなく、日本の国家犯罪と人道にかかわるインターナショナルな問題である。

     2018年2月3日

        「日本の侵略犯罪・アジア太平洋民衆の抗日反日闘争」を主題とする海南島
        近現代史研究会第21回定例研究会参加者一同
コメント
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