ルネ・クレマン監督「居酒屋」を観る。骨太の映画で、満足度が高かった。映画はこうであるべきというお手本のような作品。原作はエミール・ゾラ。
あらすじは次のようです。
1800年代後半。パリの裏町。洗濯女のジェルヴェーズ(マリア・シェル)は14歳で、ランチェ(アルマン・メストラル)と一緒に生活するようになる。これが失敗のはじまりであった。怠け者で好色家のランチェは、彼女が貯えた金を使い果し、働く気はまるでない。8歳と5歳の子供がいるのに、結婚して籍をいれるふうでもない。
そのランチェは、突然、真向いの家の女と家出する。洗濯場でその女の妹ヴィルジニイの態度が気に入らず、ジェルヴェーズは彼女と大喧嘩になる。このシーンが凄い。女の喧嘩はこうもなるのかと思うほど、である。
ジェルヴェーズはやがて屋根職人のクポー(フランソワ・ペリエ)と正式に結婚する。口うるさい姉夫婦はいたが、彼女は幸せだった。二人は一生懸命に働き、ナナも生れた。600フランの貯えが出来、彼女の長年の夢だった洗濯屋を開けるまでになった。しかし、夢が泡と消える。クポーが屋根から落下し、治療のために貯えは使い果した。
ところが彼女に好意を寄せる鍛治工のグジェ(ジャック・アルダン)は、洗濯屋の店のためのお金を用立ててくれた。洗濯屋は繁昌した。しかしクポーは仕事をする気力を失い、近くの居酒屋へ入りびたりになる。グジェに返すはずの金まで使って、飲んでしまう始末。
ジェルヴェーズは、自分の誕生会を思いつく。客の中にはあのヴィルジニイもまぎれこんできた。ヴィルジニイは、仲直りを装い復讐を企てていたのだ。宴会の半ば、昔の男ランチェが入りこんできたが、それはヴィルジニイの企てだった。ジェルヴェーズは彼の姿に驚くが、クポーは彼を招き入れ、こともあろうか自分達の隣室を彼に提供する。
唯一人彼女が信頼するグジェは、ストライキ運動にくわわったかどで一年の刑を受ける。支柱を失った彼女は仕事もおろそかになってくる。何もかも投げやりだった。ある夜ランチェに夜の営みに誘い込まれても、抵抗する気力すらなかった。
グジェが出獄してきた。彼女は自らの醜い有様を隠そうとするが、心の片隅に残る純真さが嘘をつくことを許さなかった。絶望したグジェは彼女の上の男の子を連れて旅立つ。ランチェがヴィルジニイと関係のある事を知ると、それでも彼女は最後の気力をふるってがんばった。彼等の思惑にはまって、店を手放したくなかった。だがアルコール中毒にかかっていたクポーは発作で、店を滅茶滅茶に壊してしまった。この大立ち回りがまたすごい。
やがて彼女の店の跡に、ヴィルジニイは菓子屋を開いた。お人好しの巡査の夫と、彼女にまとわりつくランチェ。落ちぶれたジェルヴェーズは、かつての居酒屋で、酒に酔った頭でグジェを思い起すのでした。健気で働き者のジェルヴェーズの姿はそこにはありませんでした。
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