フェデリコ・フェリーニ監督「カビリアの夜」(伊,1957年)105分
この映画は、男に何度も何度も騙され, 無垢な魂をもった主人公が気高く生きていくのですが,それをまた利用する男がいて,彼女を傷つけます。彼女はそれを自らの慈悲で許し,蘇っていくという話しです。
見方によっては,男女関係のありかたとして絶対にあってはならない関係がそこには描かれています。しかし,そうした見方は誤解です。
フェリーニが描いたのは,社会的地位があるわけでもなく,金持ちでもなく,人生をあるがままに受け入れて生きている女性がいて,彼女の魂は無垢であり、強く,尊いということです。
カビリア(ジュリエッタ・マシーナ)は夜の女。純真無垢の彼女は何度も男にだまされますが,人を信じて疑わない心を失いません。あるときは有名な映画スターに拾われ,夢のような一夜を彼の家で過ごせそうになったとたん,彼の恋人があらわれて,破局。
そうこうしているうちに,ある日,彼女の前にオスカルという青年があらわれます。
カビリアはオスカルに夢中になり,彼女から結婚を申し込まれ込まれると家を売り払って全てをお金にかえてしまいます。しかし、オスカルもそれまでの男と同じで,彼女はまたしてもお金をとられ,河へ突き落とされます。泣き崩れるカリビア。
それでもその泣き顔にいつしか笑みが戻ってきます。生き生きと歩く買う彼女,有名俳優とのデート,巡礼での祈り,催眠術をかけられてのデートなどカビリアの純粋さが積み重ねられ,ラストでは「もう生きていくのは嫌,殺して」と泣き崩れます。
傷つけられたカビリアは,人間(お祭り騒ぎをする若者)によって励まされ,蘇生します。「カーニバルによって人生を肯定する」というフェリーニのモチーフが明確にうちだされた作品です。無垢な魂の遍歴を優しく描いたペーソス溢れる名作です。