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藤岡光夫「人口動態統計」『統計学』第49・50合併号、1986年【その1】

2018-05-22 21:34:54 | 社会統計学・社会科学方法論アーカイブズ
 本稿は人口動態統計に関する経済統計学会会員の業績を次の3つの領域にしぼって、サーヴェイしたものである。(1)人口動態統計の作成とその問題点に関する研究、(2)人口動態統計の批判的利用に関する研究、(3)批判的デモグラフィー研究。対象とする論文は、1970年代後半から80年代前半までに執筆されたものとの限定があるが、必要に応じて1975年以前のものもとりあげられている。

 「(1)人口動態統計の作成とその問題点に関する研究」では、①人口動態調査、②生命表、③疾病統計の節立てになっている。人口動態統計の問題点としては、この統計と国勢調査との集計対象が異なっていることが指摘されている。前者は日本人のみであるが、後者は外国人を含めた常住人口であり、両者の相互利用が困難である。また人口動態統計の内部では、胎児死亡統計は「人口動態統計」の死産統計と「優生保護統計報告」(後の母体保護統計調査、平成14年から「衛生行政報告例」に統合)の人工妊娠中絶統計があり、両者の定義が異なるという問題がある(当時)。前者は妊娠4ヶ月以後、後者はほぼ8カ月未満の胎児死亡が対象となっている。さらに、死因統計に関しては、死因は医師の判断にゆだねられて作成される死亡診断書にもとづくため、死因が直接的医学的因果関係を示すものに限定されるているので、「社会的自然的環境と臨床医学的視点の両面」から死因原因をもとめる必要性がある。他に、表章上の問題点として、社会経済的性格の異なる地域が都道府県及び大都市レベルで平均化されているが、このような平均化は社会階層別の統計がないままに人口一般で表章されているのも問題とされなければならない。
 生命表の問題点としては、厚生省の「完全生命表」及び「簡易生命表」が生命表作成時点の年齢別死亡率水準が以後も変わらないものと仮定して作成されているため、そこから算出される平均余命が事実を反映した現実的指標でないことがあげられる。コーホート分析を組み込んだ生命表の作成がもとめられる。疾病統計としては「国民健康調査」があるが、疾病の判定方法が「患者の主訴」によっている点、サンプル調査にもとづいている点などの調査方法上の問題点、傷病の定義が狭いことが指摘されている。疾病統計の課題としては、病因別のみでなく、環境(社会階層、職業、居住地域、家族構成など)の分類が可能な統計が必要であると指摘されている。

 「(2)人口動態統計の批判的利用に関する研究」は、①社会階層差別出生力の研究、②死亡統計の批判的利用、③人口過程把握における人口動態統計の利用、④階級・階層別人口移動、に分けて叙述されている。①では次の研究者の成果が紹介されている。上杉正一郎(出生率低下の階級性)、本田達雄(社会階層別差別出生力、差別出生力指標)、小川和憲(イギリス、ドイツの社会階層別差別出生力)、藤岡光夫(出生力の地域差)。②では、丸山博(デルタ曲線、アルファ・インデックス)、朝倉新太郎(中年期死亡の地域差、階層間格差)、藤岡光夫(階層間の死亡率格差[大阪])、青盛和雄(原爆被害者の推計)が紹介されている。③では青盛和雄(動態統計と静態統計の綜合的利用)、広嶋清志(世帯単位の人口分析)、豊田尚(コーホート分析による世代別の産業別、従業上の地位別、職業別構成の変化)、藤岡光夫(年齢別階級構成表)がとりあげられている。④では、岩井浩・藤岡光夫による地域別階層別人口ピラミッドなどの分析を利用した男女別・年齢別・階層別の地域移動分析の方法が成果としてあげられている。(続く)
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