渋谷のシアター・コクーンで、シス・カンパニーの「2人の夫とわたしの事情」の好演が行われています。原作はサモセット・モーム。1919年の作品("Home and Beauty")です。演出・上演台本はケラリーノ・サンドロヴィッチ(翻訳:徐賀世子)
配役は、主演のヴィクトリアに松たか子さんです。彼女は妻役なのですが、夫のウィリアム・カーデュー少佐[愛称はビル]は戦死して未亡人。しかし、一年の喪をへて、ビルの友人、フレデリック・ラウンズ少佐[愛称はフレディ]と再婚しました。
ところが戦死したとばかり思っていたビルが奇跡的に帰還したのです。ビルは家に戻ってくるなり、そこに居たヴィクトリア、フレディと感激の対面をします。ビルは最初、何も疑っていませんが、再婚を隠しおおせるものではありません。
ふつうならここで元夫と現夫とはいがみあったり、嫉妬したりで、この三角関係は破局するのですが、この舞台ではそうならないで、なんとふたりはヴィクトリアを押し付け合うのです。予想外の方向にストーリーは進んでいきます。あの美貌と容姿端麗な松たか子さんから二人は逃げたくてしかたないというのですから、ここは目が離せません。
そこから発展して、舞台は大騒ぎになります。他にもヴィクトリアに心を寄せているレスター・ペイトンという怪しげな男が出てきます。ビルともフレディとも離婚して、このレスターとの再度の再婚になりそうになり、そこに弁護士が出てくるのですが、この男の会話と演技が傑作で、後半の舞台をぎゅっとひき締めました。
松たか子さんは、おちゃめで、わがままで、おきゃんな女性を魅力たっぷりに演じています。ますます舞台女優としてみがきがかかった演技です。
ビルを演じたのは段田安則さん。中年の男の味をだしています。再婚相手のフレディには渡辺徹さん、とぼけた演技、ユーモアたっぷりの演技です。新橋耐子さんはシャトワール夫人役で、あいかわらずの渋く、諧謔的です。
久々に仕事を忘れて、愉快ないい時間をもてました。
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